将棋倶楽部24のレーティング

日本最大の将棋レーティングについて考える


  • 倶楽部24のレーティングは、機械的な計算だけに基づいて、R点の変動が発生します。
  • レーティング制度の中には、R点の全体的な変動を補正するため、ボーナスポイント制など、R点を人為的に修正管理しているものもあります。
  • 倶楽部24のレーティングでは、R点の全体的な変動に対して人為的な管理・介入がないのですが、それでもレーティングは安定的に機能するのでしょうか。

 全体のR点の推移

 レーティングの運用が長期にわたると、参加者のR点が全体的に上昇したり(Rのインフレ)、あるいは低下したり(Rのデフレ)することがあるそうです。 倶楽部24ではどうなのでしょう。 レーティングは安定しているのでしょうか?

 倶楽部24のレーティングは、人為的な管理がなく、システムそのものが自己完結・自立していると緑石は考えています。 そういう意味では、自由放任の市場原理が支配している、いわば、R点市場に例えることができるかもしれません。 市場原理に委ねるだけで大丈夫なのでしょうか?

 ここでは、倶楽部24のR点が全体的にはどのように推移しているのか 見てゆきます。

  レーティングの安定度を知る方法

 やり方は「活動的な会員のR点分布を知る方法」とほとんど同じです。

 調査時点の異なる複数のデータセットを準備して、適当な抽出条件を設定し、サンプル全体の平均点や中央値を時系列で並べて検討するというものです。

 具体的には以下の条件で抽出した、[sample-A:人数不定]、[sample-B:8,209人]、[sample-C:5,923人]、3種類のサンプルを準備しました。

sample-A
  • 2002年11月9日 2002年11月30日 2003年5月8日 2003年6月21日 2003年11月8日のそれぞれ時点で、総対局数501局以上
sample-B
  • 2002年11月9日時点で総対局数501局以上 かつ
  • 2002年11月9日〜2003年 5月8日までの期間対局数10局以上 かつ
  • 2003年 5月8日〜2003年11月8日までの期間対局数10局以上
sample-C
  • 2002年11月9日時点で総対局数501局以上 かつ
  • 2002年11月9日〜2003年 5月8日までの期間対局数100局以上 かつ
  • 2003年 5月8日〜2003年11月8日までの期間対局数100局以上

 ここでのポイントは、活動的な会員のレーティングを、同一のサンプル集団同士で比較すること です。 倶楽部24には次々に新しい会員が入ってきますし、逆に足が遠のいている会員もいます。 知りたいのは、倶楽部24で継続的に活動している会員の、過去から現在に至るR点データ ということになります。

 従って、全体のR点の推移をみるためには、sample-Bとsample-C に着目することになります。

  全体のR点の推移
全体のR点の推移
年月日 sample-A sample-B sample-C 備考
2002年11月 9日 1170.3 1152.8 1133.0 1)
2002年11月30日 1166.9 1152.3 1132.1 2)
2003年 5月 8日 1146.2 1150.3 1131.9 3)
2003年 6月21日 1140.6 1149.9 1132.0 4)
2003年11月 8日 1129.9 1148.7 1130.5 5)
平均Rの差 -40.4 -4.1 -2.4 5)-1)

 半年間に10局以上の対局をこなしているグループであるsample-Bにおいては、平均Rが単調減少しており、その減少幅は1年間で4.1点になります。

 半年間に100局以上の対局をこなしているグループであるsample-Cにおいては、単調減少ではないにしても低下傾向を示しており、その減少幅は1年間で2.4点になります。

 sample-Aは、データ採取毎の参加者が異なるのですが、平均Rが単調減少しており、その減少幅は1年間で40.4点になります。

 今回の解析結果、特にsample-B と sample-C に着目すると、24Rは2002年から2003年にかけて徐々にデフレが進行していたことが伺えます。

全体のR点の推移に関するバックデータはこちら

  レーティングは安定しているのか

 ここまで提示したデータにより、倶楽部24の全体的なR点は低下していることが明らかになりました。 今後の課題として、R点は何故低下するのか、低下傾向はいつまで続くのか、倶楽部24のレーティングは安定しているのか がポイントになりそうです。

 1970年代の中頃には、アメリカチェス協会(USCF)のレーティングの平均が低下していることが明らかになり、これに対処するためにボーナスポイントを初めとする様々な対策が考え出されています。 Rのデフレは倶楽部24だけの問題ではなく、レーティングには付き物のようです。

 倶楽部24のデフレ傾向はいつまでも続くものではなく、今後さらに安定化すると緑石は考えていますが、それについては稿を改めたいと思います。


戻る