レーティングの性質

レーティングの一般的な性質 / 将棋倶楽部24の特性


  • USCF のレーティングでは、R点差と実際の勝率に関して、回帰式が求められています。
  • R点差400点での上手の期待勝率が10勝1敗であるのに対して、実際に上手が10勝1敗の勝率を挙げているのは、R点差にして561点となっています。

 R点差と勝率のずれ(2)

 USCF レーティングの解析は、22万対局にも及びます。 これだけのデータが集まると、求められた回帰曲線の上に実勝率がきれいに乗ってきます。

 ここでは Glickman 氏により明らかにされた、 USCF におけるR点差と勝率のずれの定量的評価について紹介します。

  実勝率の回帰曲線

 USCF の実勝率と期待勝率を比較すると、値はずれているけれどもグラフの格好は似ています。 そこで期待勝率の計算式に補正係数 α を導入し、以下の式に回帰させることができます。

    1/ (10 -α (决/400) +1)
     
    :R点差
    α:補正係数

 実勝率と最も合致する α を求めたところ、α=0.713 が得られています。 また、α の代わりに、期待勝率の計算式の中の400を561に置き換えて、以下の形に書き表すことができます。

    1/ (10 - (决/561) +1)

 つまり、USCF のレーティングでは、R点差400点での上手の期待勝率が10勝1敗であるのに対して、実際に上手が10勝1敗の勝率を挙げられるのは、R点差にして561点である ことになります。 この回帰式は、実際の勝率とよく一致していることがグラフからわかります。

  階級毎の α

 チェスの実力レベルと α の大きさには何らかの関係があるのでしょうか? 対戦を行った2者のRの平均を9階級に区分し、階級毎に求められた α が以下の表です。 αが1に近いほど期待勝率と実勝率回帰式の乖離が小さく、αが1から離れているほど期待勝率と実勝率回帰式の乖離が広がっていることになります。

R点と回帰式のα
平均Rのレンジ試合数α
1-50013830.946
500+-800143660.919
800+-1200411480.805
1200+-1400256490.634
1400+-1600365070.590
1600+-1800400590.653
1800+-2000339820.733
2000+-2200212610.829
2200+-2700112520.950
Glickman, M. and Jones, A.
"Rating the Chess Rating System" (1999)より転載

 表から以下のことが読み取とれます。

  • 期待勝率と実勝率の回帰式との乖離が最も大きい階級は、R点1401〜1600までの階級であり、α=0.59 である。
  • 上記階級よりもR点が大きい階級ほど、また、上記階級よりR点が小さい階級ほど、期待勝率と実勝率の回帰式との乖離が小さい傾向にある。
  • 例えば、R点2201〜2700までの階級では α=0.95、R点1〜500までの階級では α=0.946 である。

 この結果をもとに、最も期待勝率に合致している階級(R点2201〜2700)と最も期待勝率から乖離している階級(R点1401〜1600)について、緑石がプロットしたものが以下のグラフです。

Glickman, M. and Jones, A. "Rating the Chess Rating System" (1999)記載の回帰式に基づきデータプロット

 グラフ上では、R点のトップグループ(R点2201〜2700)の回帰式は期待勝率とよく一致してみえます。 一方で、レーティング集団の中核を構成していると考えられるR点1401〜1600までのグループの回帰式は、期待勝率とかなりずれているようにみえます。

 R点差200点の場合について比較してみると、R点のトップグループが勝率74.9%であるのに対して、R点1401〜1600のグループでは勝率66.4%となっており、両者には7ポイント以上の差があります。



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