辺学中文、辺知中国     
中国語を学びながら知る中国考現学

    
   月刊・私の見た中国 

『地書 ディ・スゥ』消えゆく書の芸術
 九月九日、これが旧暦であればこの日は重陽節、
チョン・ヤン・ジェと呼ぶ。中国語で九は、ジョウと発音。
更に偶数を中国語では陰数イン・スゥ、奇数を陽数
ヤン・スゥといい、陰陽イン・ヤンで分ける。
 その陽数の10までの最大数9が二つ重なる日で
重陽節となるわけだ。“ちょうよう”の節句は、古い方
(失礼)ならご存知のはず。
 この季節盛りの菊の花を観賞し、“登高ドン・ガォ”
といって厄よけの為、に山や高いところに登る日。
 因みに、旧暦九月九日は、太陽暦では今年は
十月五日。秋晴れの好い天気がつづく頃だ。

 暑かった夏を漸くやり過ごし、秋の空気を感ずる頃。
「北京的秋天ベェィ・ジン・ダ・チュゥ・ティェン」は好い
天候も続き、気持ちよい。
 日本では見かけないが、こうした気持ちよい天候の
日に中国で公園をブラブラしていると、見かけるのが
この「地書ディ・スゥ」。
 「地ディ」は地面、「書スゥ」は書道(書法スゥ・ファ)。
百聞不如一見バィ・ウェン・ブ・ル・イ・ジェン
 ホラ!見てください。書いてるでしょ。地面に直接。
 朝の公園なんかでよく目にします、冬だって見かけます。
私の感じではどうも北の地方ではよく見かけた。
南の街では余り見かけなかったのは何故でしょう。
 偏見かなぁ。上海では見てないが北京では度々見かけた
ように思える。もっと南じゃなお見なかった。
 北京のあの乾燥する空気が、地面、この場合は石だったり
舗装されたアスファルトの上に、書かれた字が乾燥と共に
書く先から、ホァ〜ンと消えてゆく様がまたその景色とよく
合っていた。その消えゆく様が儚くていい。
 書き手は特別な人たちではないのでしょう。
 書道の先生たちというわけではないのでしょうが、これが
また私の見た限りでは、字が上手い。地面に書かれた字は
墨よりもなお墨痕鮮やかに見えて、その字にうっとりさせられ
ることしばしばで、ついつい見入ってしまう。
 多分上手いからこそ書くんでしょうが・・・。
 朝の公園が多かったように思うが、日中の日盛りの中でも
見かけたし、冬の寒い時も見た。冬は書かれた字がそのまま
凍ってしまいそうで、それはそれで芸術品に見えた。

 男性のお年寄りの方が多かったように思う。女性書家?も
いたと思うのだがまるで記憶の中にはない。
 これまた何故だろう。女性は人前で字を書いたりしない、
という約束事でもあるのだろうか。

字が上手いのは一目見て分かる。惚れ惚れ
 するくらいだ。だが、書いてある内容が分からない。
私にだってこれは何かの“詩”だろうことは判る。それくらいは
推察できるが、何せ“学”のないこちらには、何の“詩”かは
分からないし、その出典どころか、作者もまた分からない。
 恐らく、「あの〜・・恐れ入りますがこちらの“詩”は誰の何と
作でしょうか?」とお伺いを立てれば、教えてはくれるだろう。
 それもかなり過度に教えて貰えそうで、こちらが何気なく
軽い気持ちで訊いたのは無視され、相当熱弁を振るって、
その出典が何処にあり、作者の如何に偉大か、その“詩”が
示す意味までも教えてくれるだろうし、それを楽しみにして
いるふしもある。
 迂闊には訊かれない。訊いたが最後長くなりそうだ。
横で黙って見ているのでさえ、暗に「お前分かるのか、どれ位
分かって見てるんだ?」とその背中が語りかけてきている。
  おぉ怖〜!そんなところは恐れ入りますが・・・は、飛んで
火に入るナンとやら、だ。

もう一つ、これが好きなのは書いた先から消えてゆく
 その儚さがいい。それも一度には消えず、ある“字”のそれも
端の方からジワジワと消えてやがては何と言う“字”か読み取れ
なくなってゆくその過程がまたせつない。
 紙に書くのとは違いどんなに大きな字も書ける。これもいい。
水の含ませ具合によって墨の濃淡をちゃんと加減して書いてる
らしいのだが、これがまたなかなかニクイ。
 
一度だけだが書いてる人に話しかけたことがあります。
 
 それは、書かれた文字、文言についてではなく、その筆に興味
があった。地面に書く筆はそれ専用の筆が売られているわけではなく
それぞれご自分で工夫されてお作りになるらしい。
 箒のお化けのようなのもあれば、モップのようなのもあり、
その人の筆はなかなか良く出来ていた。それでついつい、
「これはどうやってお作りになりますか?」と・・・尋ねた。
 その後は想像通り長い長い講釈があり、こちらが日本人と分かり、
暫し無駄話をしたあと、やおら「何か書いてみるか?」と筆を渡され
てしまった。
 だから話しかけるのは止した方がいいと・・・反省。
 渡された筆を手に、さて、何を書こう。字も上手くはないし。
事此処に到ってはしょうがない。書きましたよ。必死で。
 何て書いたかって?それは秘密ですが、どうやっても漢字では
敵いませんので、わざと ひらがな で書いてみました。
  ひらがな、を見たことがない彼は、暫しう〜んと腕組みして
眺めたあと、一応「不錯ブ・ツォ」(素晴らしい!)と言ってくれました。
 めでたし、めでたし。


2011年9月9日


      
   発行年月          月刊 『私の見た中国』 一覧
2010年1月
  『圧歳銭ヤースィチェン』 中国お年玉の相場
   2月    『春 運 ツゥン・ユン』 帰省する人達をどう運ぶか
              3月     『 飯 店 ファン・ディェン』 泊まれば分かる中国ホテル 
               4月     『 清明節 チン・ミィン・ジェ 』 お祭り騒ぎのお墓参り
            5月     『 手 机 ショウ・ジー 』  中国携帯事情
            6月     『 交通標識ジャォ・トン・ビァォ・ヂィ』道路標識が何よ!
           7月     『 請挙手!チン・ジュゥ・ショゥ』老師!シュワッチの挙手
             8月     『888ファファファ』 中国人は何故8が好き?
             9月     『角色扮演 ジェ・スゥ・バン・イェン』 中国コスプレ術?
      10月    『喫月餅 チィ・ユェ・ビン』月餅を食す、今年の月餅は・・・
     11月   『 堵車  ドゥ・チュゥ 』渋滞だよ、渋滞。どうする・・
          12月    『 下雪了! シィァ・シュェ・ラ 』  アッ!雪だ!!
 2011年 1月    『乗坐和諧号チェン・ズゥォ・フゥ・シェ・ハォ』中国の新幹線
           2月     『 討飯的 タォ・ファン・ダ 』 中国・乞食目撃情報    
         3月     『放鞭炮 ファン・ビェン・パォ』 爆竹は派手でなくちゃ
             4月    『虚擬掃墓シュゥ・ニィ・サォ・ムゥ』なんでバーチァルなの・・・
           5月    『超過装載量!』それって積みすぎでしょ!危ないし
              6月    『光膀子 グァン・バン・ズ』これぞ、中国式クールビズ
            7月     『 裸 婚 ルゥォ・フン 』  婚姻届だけの結婚
              8月     『可笑的T恤クー・シャォ・ダ・ティ・シュ』 笑えるティーシャツ
     9月    『地 書 ディ・スゥ 』 消えゆく“書”の芸術
       10月   『火 鍋 フォ・グォ 』 お勧め!中国寄せ鍋事情
       11月   『在澡堂洗澡ザィ・ザォ・タン・シィ・ザォ」 いざ、銭湯へ
       12月   『聖誕節的肯徳基』 クリスマスの日のケンタッキー
2012年 1月     『中国的蛋米羔ダン・ガォ』 中国製ケーキは今、
       2月      『乱途乱画ルァン・トゥ・ルァン・ファ』 落書き
       3月     『帥哥送貨!スヮィ・グゥ・ソン・フォ』イケメン届けます!
       4月      『 五体投地 ウーティトゥディ 』 本物を見てよ・・・・
        5月     『 帯盒飯 ダィ・フゥ・ファン 』お弁当を持って・・・
        6月      『 名片 ミィン・ピェン 』 中国・名刺活用法
        7月      『高 考 ガォ・カォ』大学受験の季節がやってきた!
       8月     『奥林匹克アォ・リン・ピ・ク』 オリンピックの年です
       9月      『做作業 ズゥォ・ズゥォ・イェ』 宿題やらなくちゃ
      10月     『 包装 バォ・ズァン 』 過剰包装かも・・・
       11月     『討價還價タォ・ジィァ・ホアン・ジィァ』 買い物指南
       12月     『白衣悪魔 バァィ・イー・ウェ・モォ』 白衣の悪魔って・・!
2013年 1月     『農貿市場ノン・マォ・シー・チャン』市場がなくなるかも
       2月     『団圓飯トゥァン・ユァン・ファン』一家団欒での食事
       3月     『三八婦女節サン・バァ・フゥ・ニュゥ・ジェ』天の半分を支える
       4月     『錦旗 ジン・チィ』 褒められも、感謝もされず
       5月    『黒板報ヘィ・バン・バォ』粉筆で描く芸術
        6月    『山寨文化サン・ザィ・ウェン・ファ』って何よ!
        7月   『××書城 ×・×・スゥ・チャン』中国大型書店では、
       8月     『相親 シャン・チン』 お見合いですよ〜!
       9月    『教師節ジャォ・シィ・ジェ』教師に感謝の日です
       10月     『洗脚 シィ・ジャォ』 足湯は如何ですか。
       11月   『大熊猫ダァ・ション・マォ』パンダ・ぱんだ・Panda!
       12月   『旅遊車導游リュゥ・ヨゥ・チュゥ・ダォ・ヨゥ』バスガイドさん
2014年 1月   『握手 ウォ・ショゥ』 あぁ・・・、あくしゅ?・・ですね
       2月   『小公シャォ・ゴン』小さな乗り合いバス、日本にこれがあれば
       3月     『透明門簾トゥ・ミン・モン・リェン』ビニールのカーテン
       4月   『打車 ダァ・チュゥ』 ハラハラドキドキの中国タクシー
      5月   『賞花シャン・ファ』 中国で花を愛でる
       6月   『超市ツァォ・シィ』 中国のスーバーへ行ってみれば
       7月   『煎餅ヂェン・ビン』 これぞ中国式B級グルメ
       8月   『中国的焔火イェン・フォ』 夏だ!花火だ!!
       9月     『晒服 サィガンイー』 はためくのよう
       10月    『去博物館 チゥ・ボゥ・ウ・グァン」 博物館へ!
       11月   『光棍節 グァン・グン・ジェ」 11・11狂乱
       12月    『站着吃 ヂァン・ヂャ・チィ』 立ち食いについて考える
2015年 1月   『賀年片 フゥ・ネェン・ピェン』  中国の年賀状
       2月   『校服 シャォ・フゥ』学生服って・・・ジャージじゃないですか
       3月   『校花 シャォ・ファ 』 我が校のマドンは・・
        4月   『学校食堂シュェ・シャォ・シィ・タン』 ガクショクだよ
       5月   『街頭売貨ジェ・トゥ・マィ・フォ』 立ち売りの人達
        6月    『ロ少架 ツァォ・ジャァ 』 中国式ケンカの仕方
       7月   『小秘 シャォ・ミィ 』 秘書であって秘書でなし
       8月   『街道樹ジェ・ダォ・スゥ』 中国の街路樹や如何に
       9月   『假幣 ジャァ・ビィ 』 コレッ、ニセ札ジャン!
       10月   『空中小姐コン・ヂォン・シャォ・ジェ』は、飛んでます。
       11月   『素菜 スゥ・ツァィ 』 本場、精進料理のお味は?
      12月   『方便面ファン・ビェン・ミェン』 インスタントラーメンかよ。
2016年 1月   『抱嬰ルバォ・イン・アール』 おんぶ に だっこ
       2月   『算命先生スァン・ミン』 占ってさしあげましょう
        3月     『中国的麻将マージャン』 麻将と麻雀は別もん
       4月   『減速帯ジェン・スゥ・ダィ?』蒲鉾型の突起物
        5月      『 嘆息 タン・チィ 』 溜息なんかついたりして
        6月   『文明大一歩ウェン・ミン・イー・ブゥ』 偉大なる一歩!
        7月     『三色旗袋サン・スゥ・チィ・ダィ』 トリコロール袋の時代
              8月     『田径型卓子ティン・ジンサィ・シン・ズォ・ズ』競技場型会議机
       9月   『低頭族 ディ・トゥ・ズゥ』 スマホが中国人を黙らせる!
       10月    『 辣椒 ラー・ジャォ 』 トウガラシ・辛いのはお好きですか
         11月   『 中国的郵局 ヨゥ・ジュゥ 』 中国郵便局事情
      12月    『機場ジィ・チャン』巨大な飛行場が続々
2107年 1月    『快子 クゥァィ・ズ』 お箸の文化
       2月    『拉拉手 ラ・ラ・ショウ』 お手て繋いで
       3月    『公交車 ゴン・ジャォ・チュー』 路線バスの旅
       4月    『穿鞋 ツァン・シェ』 鞋と靴
       5月    『寵物 チョン・ウー』 ペットを飼う
       6月    『按喇叭アン・ラー・バァ』 鳴りやまぬクラクション
       7月    『午睡ウー・スィ』 お昼寝の時間です
       8月    『喝口卑酒フゥ・ピィ・ジュゥ』夏だ!ビールだ!!
     9月    『液晶壁板イェ・ジン・ビィ・バン』 液晶だらけ
      10月    『碗装蕎麦麺式吃飯ワン・ズァン・チャォ・マィ・ミェン・チィ・ファン』
     11月    『確認座位チュェ・レン・ズォ・ウェィ』 リコンファームは面倒
        
            
              『私の見た中国』は毎月一回それぞれ
                其の月の数と同じ日に更新となります。
          これとは別に隔月で発行の
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