作/ななりう
雨のしとしと降る6月。思いっきり外で遊べなくなってもそれはそれ、愉しみ方は三者三様、十人十色。
勝志と真森の最近のブームは、雨の日のお寺探検。
有名無名の神社仏閣の多いところに住んでいるので、1日や2日では回りきれない
から雨が続いても問題無し。
普段の旅行客のにぎわいもこんな日は少し控えめで、建物が見せる表情もまた違っ
て見えるもの。普段では気づかなかった事を探して回るのです。勝志名づけて、雨の
墓情探検隊。勝志と真森、どっちの度胸が上なのか?!って肝試しにはちと早いので
はないのかね、君達。
『いや、そういうつもりなのはこいつだけですから』(心のなかで勝志を指差す真森でした)
「めっあめっあれっふれっふがっんさっあかぁ〜♪」
雨雨降れ降れを逆さ歌詞で歌いながら、勝志が傘をブンブン降りまわす。
「ちょっと勝志!傘まっすぐ持ってよ。肩が濡れるじゃんか、もーっ!!」
勝志が勝手に決めたルールで、探検中は傘は2人で1本、何かあっても逃げ出さないように
するというのが趣旨らしいが、それならそれで相手の事を気遣って欲しいの
だが。ハイテンションの勝志に真森の思いは通じているのかいないのか。
「あははは〜っごめんごめん。まあご愛嬌って事でかんべんして」
とは答えたものの、傘は再び頭上で旋回している。
「僕が持とうか、やっぱり・・・」といっても、
「いいって。箸より重いもの持てないだろ、真森は」と茶化される。
「どこのお姫様だよ、いまどきそんなの。だいたい僕は男だってば。確かに非力だけどさー」
まあどれくらい非力かというと、下り坂以外では自転車2人乗りのこぎ手はできないとか、
林間学校のリュックに標準の荷物を入れて、母の愛情ドリンクを1リットル入れられたら、
よろけた拍子にそのまま後ろに倒れてブリッジポーズで動けなくなったとか、
まあそれくらいであって、
『傘くらいは持てるんだよ!!』
と心の中では強気に思っても、奪い取ろうとはしないのであった。(長時間持ってるとしびれるんだよっ!)
それはさておき、今日のお目当てのお寺に到着。アジサイが名物のお寺の境内に潜入した2人は、
境内の裏の裏、寂しい所へずんずん進む。
「お化けとか、出ないかな♪」
「お化け見たけりゃ遊園地にでも行けばいいじゃん。ほんとにいるとか思ってるの?」
「おう。人間死んだら幽霊になるんだろ?前ならえの姿勢でぴょんぴょん跳んで移動するんだろ?」
「かつ・・・、それはキョンシーじゃ・・・」
「キョンシー???恐竜みてーだな。なんじゃそりゃ」
「ネッシーじゃないって。とにかくそれは日本の話じゃないから、もし、たとえ、
万が一、まかり間違って実在したとしても!ここでは見れないよ」
なーんだつまんねーのと勝志はブチブチ文句をいいながら歩いていると、
2人はアジサイの垣根に行く手を阻まれる。
「あれ、行き止まりになっちゃった。戻って別の道に回らなきゃ」
回れ右をした真森の腕を、勝志がぎゅっとつかんで引きとめる。
「いったたた!なに!」
垣根の間を見つめたままの勝志は、真森の抗議の声も届いていないのか、じっと固まって動かない。
「・・・・?勝志?」
怪訝に思い、声を掛けた真森の方には目を向けず、前方を凝視したままの勝志はゆっくりと指差した。
「・・・キョンシー発見・・・」
「へ?」
何を言ってるんだと勝志の指差すほうに目を向けると、雨の滴る満開のアジサイの中を、
水中を泳ぐようにゆらゆらと空中をさまよう一匹の魚を発見。しばらく固まって見守る
2人の前を泳いでいた魚は、一瞬こちらの方に視線をやると(そう見えたんだよ!)
ぱちんと小さく音をたてて、はじけて消えた。まるで、シャボン玉のように。
しばし絶句をしていた2人だが、沈黙をといたのは感心しきったような勝志の一言だった。
「そうか、キョンシーは恐竜じゃなくて魚のお化けだったのか」
「納得するなーっっ!!!!!」
2人の探検はまだまだ続く。