作/ななりう
底抜けに青い空に、燦々と太陽が煌めく秋晴れの日曜日、出陣の合図が打ち上げら
れて町内に響き渡った。
学業のなかで、唯一やる気を発揮できる体育のはれ舞台、秋の運動会の幕開けである。
朝からこの人のテンションも、上がりっぱなしである事は言うまでもない、か。
「わははははっ!桂樹先輩っ!今日はライバルっす!手加減しませんからね。
あっ、友理ちゃんは大船に乗った気持ちでどんとまかしちゃってよ!」
やるきまんまんの勝志は、同じ部活の高等部の先輩を見つけると、気合の程を見せ
つけるように、元気バリバリのあいさつ(?)を残して駆け抜けた。
勝志と真森の通う旭海学園は、同じ敷地に中等部と高等部がたっている為、体育祭
や文化祭というような学校行事や、いくつかの部活が合同で行われている。二人が所
属している『マリン部』という海遊び同好会のようなクラブもそのうちの一つである。
そして本日の体育祭は、中・高のA組なら全学年のA組みというように、クラス縦割
りで総合優勝が決まるため、伝統的に体育祭が近づくと、タテの結束が堅くなるのだった。
ちなみに勝志のライバル宣言を受けた三國桂樹は高1(A組)で、この歳で既に身
長が190センチ目前の大物(態度も大物で高校生には見えねえ!バーイ勝志)、
遊城友理は高2(F組)で桂樹とは対象的にまだ150センチ未満のちびっこ(そして
小動物みたいだが男!)である。
「頼もしいな、F組のジュニアは」
「うーん、全種目一人でやってくれたら、間違いなくうちが優勝なんだけどねぇ」
1位を取る者がいれば、当たり前だがビリもいる。
「佐倉もFでしたか」
「そうなのよ。素材を足して2で割るといい感じなんだろうけどね、結果を足して
2で割ってもとんとんでしょ?」
「もったいないですね」
高校組の2人は、人ごみにまぎれてもなお存在感を放つ、勝志の方をむいてしみじ
みと語るのだった。
「僕は今日は、風邪ってことにしてくれていいから」
はりきり勝志とは対象的な真森は、門の前まで来ているにもかかわらず、中に入ろ
うとしない。
「佐倉君、それはずる休みっていうんじゃ・・・」
同じクラスの仲川が困ったように立っている。
「代わりの人に走ってもらった方が、F組みのためになると思うんだよね」
「いや・・・でもそれは、佐倉君のためにはならないと思うんだけど・・・」
「一人の義務より、皆の幸せの方が大事だし・・・」
「それはないと思うよ、佐倉君・・・」
なかなか説得できずに思案しているところに、仲川の救世主が現れた。
「姿が見えないと思ったら、まーた石になってる!ほれ、行くぞ」
「うわっ」
引き返してきた勝志は、強引に真森を担ぐと、そのままグラウンドまで歩いて行った。
「そんな、ワイルドな・・・」
見送る仲川がポツリとつぶやいた。
「おーろーせーっ!もうわかったからー」
肩に担がれた真森は、必死に勝志の背中をぼかぼか叩くが、勝志の方はびくともし
ないどころか笑っていやがる!
「真森が一つや二つビリを取ったって、その倍俺が1位をとれば問題ないさ!」
ようやく地面に下ろされた真森の正面を、勝志はまっすぐに見据える。
「皆は真森の順位に期待してないけど、俺はお前が応援してくれることを期待して
るから、お前は俺が取ってくる景品を期待しとけ!」
どうだ!名案だろう、と言いたげな目をして、勝志は2回真森の肩をバンバン叩く。
「さすが勝志。すっごいベクトル」
何だかよくわからないけど、納得してしまったじゃないか。
「だろ?俺の脳みそは実用的なんだ。ほれ、行くぞ」
難しいおまけが付かない分、確かに実用的かもしれない。という事は、自分の脳み
そは何的なのかな?などと考えつつ、開会式の整列が始まったグラウンドに2人は向
かったのだった。
本日の結果発表。
「さすがは俺様、負け無し!」
の勝志は満面の笑み+首には大量の金メダル+副賞のノートごっそり。
「つ、疲れた。もう帰って寝たい・・・」
の真森は運のよかった借り物競争で、8人中4位の快挙以外は予想通りのビリッケツ。
「さらに、どんっ!」
手のひらサイズのカップ型トロフィーには、VIPの文字。
「F組の優勝は俺様のおかげだもんね、当然でしょう」
「はいはい」
本日の主役は、君に決定。