彗星について
 彗星は、古来より人々を惑わし魅了してきた天体です。突然現われ、長い尾をたなびかせる彗星の姿は、しばしば災いの使者として恐れられてきました。彗星の正体がわからなかった時代の人達にとって、光のシミのかたまりのようにボウッとした頭部と、それに続く長い尾、そして星空を移動していく彗星の姿は、人心を惑わす不思議な存在としてうつっていたのでしょうね。

 そんな彗星の本体は、直径は数km〜数十km程度の氷(凍ったメタンやアンモニア)やダスト(ちり)の粒子が混じり合ってできた固体で、『汚れた雪だるま』にたとえられます。これを“核(カク)”といいます。
 彗星の核は太陽系ができた46億年前の成分がそのまま凍り付いてしまった“化石”で、チリや水、有機物など生命誕生の源となった様々な成分が凝縮されています。

 彗星が太陽に近づくと、太陽の熱で核表面の氷かガスが吹き出して、核のまわりに“コマ”を形成します。コマの直径は、10万km以上にもなり地球よりも大きくなります。

 コマが成長してくると、太陽から吹き付ける“太陽風(たいようふう)”によって太陽の反対側に流され、彗星の最大の特徴である『尾』を形成していきます。
 彗星の尾には2つの種類があります。ひとつは、一酸化炭素、水蒸気および窒素など荷電粒子のガスからなる青っぽいガスの尾(イオンテイル)です。もう一つは、核から出たダスト(ちり)からなるダストの尾(ダストテイル)。彗星より放出されたダスト(ちり)は、彗星の軌道付近に集まり“ダストトレイル”を形成し太陽を周回するようになります。このダストトレイルに地球が突入すると、ダスト(ちり)が地球の大気によって発光し、流星群として私たちを楽しませてくれます。このダストトレイルを形成するダスト(ちり)を放出した彗星を“母彗星(ボスイセイ)”といいます。

彗星は太陽系の一員で、太陽の周囲を楕円軌道を公転しています。その公転周期は様々で、有名な“ハレー彗星(P1/1982 U1)”は76年、上に写真にある“ヘール・ボップ彗星(C/1995 O1)”は数千年もの周期になります。

 

 では、突如として現れては去っていく彗星は、どこからやってくるのでしょうか?。

 彗星の多くは、“オールト雲”という太陽系のはるか外縁を取り巻く領域からやってくるといわれています。

 オールト雲とは、1950年にオランダの天文学者オールト(Jan Hendrik Oort)が、多くの彗星軌道の統計的研究から推定したもので、太陽から0.5光年〜1光年程度に広がる球殻状の領域で『彗星の巣』と呼ばれています。

 オールト雲には、太陽系生成期の物質が存在すると考えられています。オールト雲に存在する小天体(彗星の核になる天体)が、何らかのキッカケでその領域を離れ、太陽の引力によって太陽に向かうようになります。その後、太陽や木星などの引力の影響をうけ周期彗星として太陽系内を公転するようになります。