◇ 郡市団体戦・・NIS東中学校戦での悔し涙と嬉し涙

          恩人、教頭先生が転任!新しい監督は・・

明けて平成15年・・R剣道スポ少の中学生はじめ、郡内の剣道部がない中学校で剣道を続ける少年剣士たちを応援してくださっていたR中学校のTAKA教頭先生が、隣の郡の校長先生として転任して行くことが決まりました。TAKA教頭先生は、娘のYUMやSIKIさん、HIROさんたちが中体連の郡市大会個人戦に出場できるよう書類の手続きをしてくださったり、他の中学校へ代理監督を依頼してくださったり、他校の強化練習会に参加できるよう骨を折ってくださったり・・言葉では言い表せないほどの力添えをいただいたのでした。そしてなによりも、R剣道スポ少男子中学生団体チームの監督を引き受けていただき、郡市大会、そしてその秋の全県新人大会(これが全チーム出場できるのでした・・)まで連れて行ってくださった"恩人"のような先生でした。特に団体戦初出場が決まったときには、スポ少の稽古に自ら防具を付け団員たちに稽古をつけてくれたり、オーダー表の選手名を毛筆で力強く書いてくれたりもしました。

離任式も間近に迫ったある日の稽古日・・この日がTAKA教頭先生が最後に稽古を見てくれる日と決まっていました。TAKA教頭先生がいつものニコニコ顔で町民体育館に姿を見せてくれました。「集合!!」と主将のKENGくん。R剣道スポ少の中学生団員が走ってTAKA教頭先生を囲みました。KENGくん「TAKA先生、長い間、稽古してくれたり・・監督もしていただいたり・・」、わたくし「・・(がんばれ、KENGくん)」うるうる・・、KENGくん「・・本当にありがとうございました!」、みんな(もちろんわたくしも・・)「ありがとうございました!!」。そこであらかじめみんなで書いていた感謝の色紙をGENくんがTAKA教頭先生に手渡しました。少しオーバーに驚いた仕草をして色紙を受け取ってくださったTAKA教頭先生・・「みなさん、ありがとう!中学校に剣道部がないという中でよく頑張っていると思います。あまり力にはなれませんでしたが、いつか強い剣士と互角に戦えるように頑張ってください!」。みんな「はいっ!」、わたくし「・・(やばい、泣く・・うるうる)」。「あつ、IKEさん、ちょっと!」とTAKA教頭先生。その言葉に従って出入口の方へ行ってみると、TAKA教頭先生が竹刀の束を抱えて「これ、選手たちに使わしてあげてください!」、わたくし「ええっ?!」・・それは"残心"の名が刻まれた3尺7寸の竹刀10本・・TAKA教頭先生からの贈り物でありました。TAKA教頭先生、ほんとうにお世話になりました!ほんとうにありがとうございました!

恩人であるTAKA教頭先生(今は校長先生です!)が転任され、心配なのはそのあとR剣道スポ少の中学生団員の大会出場を助けてくれるR中学校の先生がいるかどうかです。"R中学校に早めにお願いしに行かなきゃ!"そう思っていた矢先、4月に入ってTAKA教頭先生はじめ転任される先生方と新たに着任される先生方の歓送迎会がPTA主催で行われました。わたくしも娘のYUMが茶道部で3年間お世話になった先生が転任されることもあって参加させていただきました。すると、HOSOY先生というわたくしの中学校時代の同級生で、今はR中学校で教鞭をとっている方が「IKEさん、今年の剣道の担当なんだけど・・」、わたくし「ええっ?!担当の先生を付けてくれるの?」、HOSOY先生「いや、まだ本決まりじゃないんだ。校長にも了解してもらわないといけないしな。それで・・」、わたくし「そ、それで?」、HOSOY先生「あの先生を推薦しようと思うんだ」。


          HARU子監督を迎え、めざせ団体戦初勝利!

R剣道スポ少2代目の監督は、まだ20歳代半ばの独身、身長はおそらく150cmもないほど小柄な、な、なんと女先生なのでありました。HARU子先生という名前のとおりうららかな・・というよりはめちゃくちゃ明るい国語の先生であります。わたくし「はじめまして、わたくしR剣道スポ少を指導しているIKEといいます。みんな頑張っているので、監督の方よろしくお願いします!」と職員室であいさつすると、HARU子先生「いやあ、こちらこそよろしくお願いします!でも、わたし運動なんてぜ〜んぜん出来ないんです!うあはっはっ!!」、わたくし「(な、なんて豪快な笑い方なんだ・・ビックリ!でも、元気がよくていいな)」、HARU子先生「練習はいつやっているんですか?近いうち見に行きますから!」、わたくし「は、はい!お願いします!」。

いかにもR剣道スポ少にぴったり合ったキャラクターの監督を迎え、めざすは6月の郡市中学校剣道大会です。4月、5月は週2回の練習をきっちりとやらせ、6月は少し練習量を増やして大会に臨もうと思っていたのですが、主力選手の4人が科学部で、しかも研究している内容がとても注目されているということもありなかなか思いどおりに練習計画を消化できません。そのため茶道部に所属している主将のKENG君とわたくしの2人で練習を始め、あとから科学部の4人が1人、2人・・と合流するという練習日が続きました。正直なところわたくし自身少し焦る気持ちもありましたが、こればっかりは仕方がありません。

そして、いよいよ本番の6月です。なかなか思うように練習時間を確保できない状況に変わりはありませんでしたが、みんな限りある時間を使って一生懸命に剣道に打ち込みました。ときどきHARU子先生・・いやHARU子監督も練習を見に来てくれます。そんなある日、HARU子先生から職場に電話です。HARU子先生「大会の開催要項が届きました。去年の書類を見ながら手続きをしておきますから!」、わたくし「ありがとうございます!難儀かけます!」、「それから・・」とHARU子先生「今度の大会にスポ少からもう1校、NIS東中学校も団体戦に出場するみたいですよ!」、わたくし「えっ、そうですか!よかった!何カ月か前、そのスポ少を指導している先生にO市の耳鼻科で会って、一緒に出場しましょうよって言ってみたんですよ。そうかあ、よかった!」。

NIS東中学校とは、以前からお世話になっているKARI剣道スポ少の団員たちの通っている中学校で、ここにも剣道部がないためスポ少を通じて少ない日数ながらも頑張って剣道を続けている学校です。わたくし「そうかあ、NIS東中学校も出るのかあ。よかったなあ・・でも、そうなると初の1勝も夢じゃないぞ、こりゃ!」・・とひとり思ってみたりもしたのでありますが!?


          いよいよ郡市総体の当日・・主将の声にも力が

郡市中学校総合大会剣道大会まで、いよいよ10日ほどになりました。いつもどおりのスポ少活動を通じて大会に臨むのが自分たちのやり方・・といっても、さすがにこの頃になると週2日の稽古では足りません。選手全員が揃うのは難しい状況にありましたが、ともあれ週4日間の稽古日を設けました。こうなるとわたくし1人の指導ではとても足りません。高校時代の友人や知人にお願いし基に立って相手をしてもらったり、選手の技術的な面などを指導してもらったりしました。いずれも高段者の方たちでしたから、R剣道スポ少の中学生選手を初めて見たときには、そのレベルの低さにみなさん驚いたに違いありません。それでも、団員たちはみんな一生懸命でしたから、来てくれた友人や知人もとても熱心に教えてくれました。ときには、わたくしが教えた打ち方などが全然間違っていたことが発覚?することも数多くあって、そのたびにヒヤヒヤ、ドキドキ!そして赤面。「ふう〜、もったいないよなあ・・。毎日やればどんなに強くなるか・・」と知人の1人が。そうなんだよなあ、この子たちは決して劣っているんじゃない。ただ、稽古が不足しているから未熟なだけなんだよなあ。

「おおっ!やってますね!!」HARUKO先生の訪問です。「集合!!」というKENGくんの声。練習を中断し、HARUKO監督のもとに集まります。みんな監督よりも頭ひとつ大きく、外から見ると監督の姿が見えません。でも元気のいい声は離れていても聞こえます。「みんな、とにかく元気に声を出してがんばろうね!がんばれば、きっと勝てるって!!」・・ええっ?か、勝つ気なんですね、監督は・・。う、うん、そうだよな。か、勝つ気でいかなきゃあ、勝つ気で!

試合当日です。会場のOMAG中学校体育館ではすでに鋭い気合と竹刀の交わる大きな音が聞こえてきます。選手たちが無口になりました。いつもは元気いっぱいのHARUKO先生も緊張した面持ちです。「よしゃあ、いよいよだ!みんな頑張ろうな!!」というわたくしの檄にもいまいち反応が鈍い選手たちが気になりましたが、しかし頑張るしかないのであります。すると、突然「ああっ!SIMAD先生!!」とHARUKO先生、そしてほとんど同時に「おおっ、KAT(HARUKO先生の苗字)!!」。見るとHARUKO先生と強豪SENBOK中学校の監督、SIMAD先生が笑って話しをしています。戻ってきたHARUKO先生「いやあ、SIMAD先生、私の中学校時代の恩師なんですよお。私がR中学校の監督だって聞いてビックリしてましたよ。ワッハッハッハ・・!!」。おおっ、いつものHARUKO先生になってきたぞ!

わたくし「おい、KENG!ここの控え室で準備運動して、すぐに面を着けて稽古に行け!竹刀振りはいらない」、主将のKENGくん「はいっ!みんな、行くぞ!!」・・よし、気合が入っている。


          初のNIS東中学校戦・・初めての作戦を指示

開会式では、R(中学校)剣道スポ少に加えてNIS東中学校の2校が団体戦に参加することが紹介され、挨拶にたった部会長先生から歓迎のことばをいただきました。両校の選手の横顔を見ると、緊張している中にも"よしっ、がんばる!"というような強い気持ちが伝わってきます。・・・欲目かな?いや、違います!確かにウチの選手たちも、東中の選手たちもそう思っているはずです。でなければ、あんなに胸を張って堂々とした表情で・・・んっ?お、おい、KOHEクン、キョロキョロするな!ARATクンもちゃんと顔を上げてステージの方を見て!NORIMクンも私語はやめろ!ホント大丈夫かなあ、この子たち・・・。

出場7校によるリーグ戦形式の試合が始まりました。さすがに本大会です。昨秋の新人戦とは違い、各校とも選手層は厚く、その技量も見違えるほど向上しています。しかもチームの一戦、一戦が、取得本数の一本、一本が全県大会への出場権を左右するとあって試合場内には鋭い気合が飛び交っています。もちろん、R剣道スポ少も気持ちだけは負けないようみんなで心に誓い合いました。見ると、プログラムではNIS東中学校戦は4試合目です。よし、緊張もとれて調度いい体調での戦いになる・・・。

3試合が終わりました。完敗です。ここまで取得本数もわずかに2本。各試合とも引き分けする選手が一人いるくらいがやっとです。それでも、試合が終わるたびにHARUKO監督を囲んでミーティングをしています。HARUKO監督も選手それぞれの試合の印象を中心に「なんか、向かっていってないように見えるよ!次の試合はもっと前に出ようよ!!」とか、「よかったじゃーん!(〜じゃん!?)わたし、見てて感動したったよ。次もこの調子でやろう!」、「声出てないよねえ。気合でしょ、剣道は!」といった感じで、けっこう的を得た指示や助言をしてくれています。わたくしは、約束どおりチームとは無関係な立場のため、ビニールテープで仕切られた外からの観戦です。

ふと試合場を見ると、NIS東中学校が強豪校を相手に試合をしています。そして驚いたことに、元気いっぱいの試合で勝者を出すなど大善戦しているのです。ええっ!強いな、この子たち・・・。わたくしは、全員を集めました。「いいか、みんなには言っていなかったけど実は東中学校はかなり強いんだ(ウソ!!実はわたくしも今しがたわかったばかりなのですが・・・みんなの士気を高めるための方便です−苦笑−)。さっきの試合も負けたけど1−2だ」、みんな「ざわざわ・・・」、わたくし「聞いて!だけど技術的にはキミたちの方が上だと思う。ただ、東中学校の選手は思い切りがいいし、しつこく面を連続させて追ってくるんだ。だから、ここでオレは初めてキミたちに作戦を指示する。それは、二段技、小手面を中心とした二段技を中心にして打ち込み、当たった直後に胴に入る振りをして面を打つ」、続けて「ここで注意しなければいけないのは、先に間合いに入って、入ったら先に二段打ちに行くこと。絶対に先に打てなきゃダメだぞ。それと、何本か引き胴を打っておくことも忘れるな。いいな!!」、みんな力強く「ハイッ!」。剣道初段で指導者になり、初めて選手に指示した作戦でありました。


          完敗の本数負け・・指導者の力量の違い

第5試合目・・そう、いよいよNIS東中学校との対戦です。たすきは赤です。畳の上にHARUKO先生、いや、監督、続いて先鋒、次鋒、中堅と座りました。向こう側、白の畳には東中学校の監督の先生、そして・・んっ?東中学校の先生、高齢のようだけどずいぶん落ち着いて貫禄があるなあ〜。すると傍らで話し声が・・「東中学校の監督、SHIB先生だものなあ〜。今、東中学校の校長らしいじゃないか」、わたくし「・・(SHIB先生?校長先生?校長先生が監督?!)」、「SHIB先生、KAKUM町出身で高段者のはずだよな〜」、「・・(KAKUM町出身・・あのKAKUM道場の?剣道の高段者?)」わたくしの心の中に少なからず動揺している自分がいることを自覚しながらも、「ぶるぶる!!なにやってんだ、オレ?この土壇場で周囲の話しに気をとらわれていてどうするんだ!行けよ、行けよ!みんな!!」。

審判の先生が入場しました。選手たちが主将のKENGクンの合図で試合場に入り、互いに礼。試合開始です。まずは先鋒のARATくんです。ずいぶんたくましくなり、積極的に打って出て面の1本勝ち。しかし、わたくしの指示・・2段技があまり出ていませんでした。もっと積極的に行けば2本勝ちができているように思いました。続いてNORIMくんです。1年生らしい元気いっぱいの戦いを見せてほしかったのですが、負けちゃいけないという気持ちが強すぎ、頭を下げ、腰を引いての面を単発で打つばかりで決め手がありません。結局、不用意に引いたところを追われての面に屈し2本負けです。しかし、このあとKENGくん、KOTAくん、そして大将のGENTくんと続きます。この3人が普段どおりの力を発揮してくれれば、絶対に勝てるはずです。・・しかし、心配したとおり、中堅からの3人が3人とも相手の積極的な攻めにてこずっています。そこに東中学校の監督が「先に(間合いに)入って、先に打つ!そうだ!」、「相手を逃すな!」。選手たちはこの指示をしっかり守り、どの選手も積極的な剣道をしてきます。 結局、中堅からの3人が引き分け。勝者数1対1ながら、1本対2本の本数負けとなりました。小学生の試合もだいぶ経験しましたが、団体戦でこんなに悔しい思いをしたのはこれが初めてでした。「違うだろ!!もっと勇気を持って勝ちに行かなきゃ!」・・観戦席と試合場を区切ったビニールテープがこのときほど太く、硬く、高く幅広い柵塀のように感じたことはありませんでした。

戻ってきた選手たちがわたくしの周りに集まりました。傍でHARUKO先生が「さっきも話したんだけど、みんな、ちょっと硬くなってたんじゃないかなあ〜」。これに答える余裕をなくしていたわたくしは「何やってんだ!オレが試合前に指示した2段打ちを中心にした、つば競り合いの切れを良くしようっていう試合を誰もしてないじゃないか!!」、続けて「キミたちが小学校のとき、一生懸命やれば勝ち負けは二の次だった。でも、今日の東中学校戦はR剣道スポ少が団体戦で初めて勝ちにいった試合なんだぞ。そして勝てる試合だったんだ」一気にまくし立てるわたくし。「今、東中学校との試合を終えて、ウチの方が弱いと思うか?GENくん!!」、大将のGENクンに厳しい口調で問いかけました。GENクン「・・思わないっス・・」。わたくし「次の試合、勝てる相手じゃあないけど、2段技を中心にした同じ作戦でいく。いいな!」、みんな「(少々力なく)はい!」。選手たちが試合場へ戻っていきました。そこでふっと先ほどの東中学校の監督、SHIB校長先生の選手への指示が思い出されました。「先に間合いに入って先に打つ。そして相手を逃さない」・・そっかあ・・そうだよなあ。やっぱ、指導者のレベルの違いかなあ・・。結局、この大会6戦6敗。団体戦最下位という結果で終えたのでありました。


          無念!まさかの0−3・・NIS東中学校に再び屈する

平成15年6月の郡市大会が終わりました。同時にこれまで主将としてチームをまとめてきてくれた3年生のKENGクンが引退し、高校受験に向けて勉強に専念することとなりました。新しく先鋒にARATクン、次鋒に前大会まで補員だったKOHEクン、中堅には1年生のNORIクン、副将にはKOTAクン、そして大将にはGENクンといった布陣をもって9月の郡市新人大会に臨むことにしました。みんな体格もよくなり、身長も5人中4人が170cmを超えています。「とにかく、今回の反省を踏まえて秋の新人戦では絶対にNIS東中を倒すぞ!!」と気合い十分のわたくし。このわたくしの気合いに押されてか、肝心の選手たちの闘争心にはなかなか火が点かないようです。加えて、この時期は彼らがR中学校で所属している科学部の活動や発表会なども多く、なかなか全員揃って稽古する時間が持てません。それでも、集まると元気いっぱいに声を出し、一生懸命稽古するR剣道スポ少の中学生チームの団員たち・・・なんとか勝たせてあげたいと心から思います。 そしていよいよ郡市新人大会の日を迎えました。大会々場のO中学校の体育館では、各校とも試合前の稽古に余念がありません。もちろんR剣道スポ少の選手たちも、新主将GENクンを中心にまとまったチームとなり、元気いっぱいの稽古をしています。以前は、会場の隅っこで、声も出せず、小さくなっていた彼ら・・・なんと成長したことでしょうか。もちろんHARUKO先生も相変わらず小柄な体に似合わない大きな声で檄をとばしてくれています。「よっしゃー、今回は絶対にいけるぞ!」そんな確信めいた予感がわたくしの中に湧き上がってきます。

試合が始まりました。今大会も7チームのリーグ戦で順位を決定します。宿敵NIS東中学校とは6試合中の最後に対戦します。相変わらず先をとって積極的に攻める剣道を展開するNIS東中学校でしたが、R剣道スポ少の剣士たちも負けじ、劣らず元気な戦いを見せてくれています。1勝を上げる選手もいます。これまでだったらほとんどが0−5や0−4といった完敗ばかりだったのですが今日は違います。・・・そして最終戦のNIS東中学校戦です。この日もたすきは赤です。先鋒ARATクン・・・スピードも出てきてかなりやれるはず・・・ええっ?なんと2本負けです。いつもの力の・・・いや、前の試合までのARATクンとは明らかに違います。そう、緊張してガクガクだったのです。次鋒のKOHEクン・・・まったくと言っていいほど自分からの打ちがありません。小手をとられ1本負けです。そして中堅の1年生NORIクン・・・これも打ちには行くものの勝負をかけた戦い方とはお世辞にも言えません。面を打ちにいっても頭を下げて、腰を曲げ、相手の攻めを怖がっているようにすら見えます。結局NORIクンも1本負け。勝負はつきました。副将のKOTAクンと大将のGENクンが引き分けたものの、先鋒から中堅までで勝負が決まるというストレート負けは、わたくしにとってもショックなことでしたが、子どもたちにはもっと応えたかもしれません。選手たちがうなだれてわたくしの周りに集まりました。「う〜ん、気持ち・・・だと思う」やっとのことで絞り出したわたくしの言葉がすべてだったように思います。みんな力はあるのにそれを本番の戦いに出せない・・・大きな、大きな課題がR剣道スポ少中学生チームの前に立ちはだかったのを感じたわたくしと子どもたちなのでありました。


          先生、次は絶対やってやるから!・・忘れられない全県新人剣道大会 @

(技量的に見劣りするわけじゃあない。いや、一人ひとりの力からすればウチの方が勝っているようにすら見える。なのに0−3…なんでなんだ?)…郡市新人大会でNIS東中学校に完敗した後、わたくしはこんな自問自答を繰り返していました。いやあ、悔しい〜。何でなんだろう? この大会の2ヵ月ほど前に行われた「※注)剣道部活がない中学校に在校している中学生の剣道大会」でも、大将のGENクンは見事に優勝しましたし、出場したそのほかの団員たちもNIS東中学校はじめ他校の選手たちと互角の戦いを見せてくれていたのですから、わたくしの悔しさのボルテージはかなり高かったことを憶えています。もちろん団員たちも…あらっ、ん?けっこうヘラヘラ笑いながら稽古している…オイッ!オマエたち、真面目に稽古しやがれーってんだ!まったく、悔しくねえのかよお!…そんなわたくしの言葉や態度に団員たちは笑いを浮かべ、異口同音に「IKE先生、悔しいっスよー、悔しいけど…。次、次は絶対やってやるから、見ていてくれって!」。はあ〜、オマエたちのその天真爛漫さとポジティブな考え方にはホント驚くわ!ああ〜、どんな戦い方、どんな練習をしたら勝てるんだろう???

このように、郡市中学生新人剣道大会後の団員とわたくしの間には、感情的にも、考え方にも相当の距離を感じ始めた頃の秋、今度は県立体育館での全県中学生新人剣道大会が開催されたのでありました。昨秋初めて参加したこの大会、そのときは恩人TAKA教頭先生に監督となっていただき懸命に頑張ったのですが全県の中学生とのレベルの差は如何ともしがたく、0−5、0−4の完敗でありました。今年も当然かなりの実力差を見せつけられることは覚悟のうえです。監督のHARUKO先生も「IKEさん、スゴイ熱気ですねえ。さすが全県大会ですねえ〜」と驚いています。

予選リーグ、第一試合は同じ県南のOGAT中学校です。試合場の入り口付近で円陣を組み、HARUKO先生が「元気出していこう!気持ちは負けないよ!」、団員たち「はいっ!」。おおっ?けっこう気合が入ってるな。わたくし「わかっているとおり全県大会だ。実力差は歴然としている。でも、ここでビビッてたら、剣道の試合なんて出来っこない。監督が言うとおり、気持ちでいこう!」いつもよりちょっとテンションが高い自分を意識しながら、続けて「ただし、礼法だけはしっかりしろ!オマエたちは、ここではR剣道スポ少の団員じゃない!立派にR中学校の名前を背負って来ている選手たちだ。だから、負けてもいい。礼を尽くして、全力を尽くすんだ!じゃあ、オレは観客席で見ているから!」、みんな「(小さいけれど力強く)はい!」。そして、わたくしは急いで2階へ行き、選手たちのすぐ上に席をとりました。


          歴史が動いた!団体戦初勝利・・忘れられない全県新人剣道大会 A

試合が始まりました。心なしかみんないつになく張り切っているようにも感じます。先鋒のARATクン・・・いい戦いをしましたがメンを取られ惜しくも1本負け。続いて次鋒のKOTAクン…引き分けです。中堅の1年生NORIクン…小学校1年生からR剣道スポ少で剣道を続けています。…立ち上がり、すぐに出がしらのコテを先取。やったー!続いて2本目…ここでも数十秒後に出がしらのコテで2本勝ちです。おおっ?すげえー!そしてこの新人大会から選手となった副将のKOHEクン…残念、試合終了間際にメンを取られて1本負けです。しかし、みんな郡市新人大会に比べると見違えるような戦いを見せてくれ、まさに大善戦といっていい内容です。部活のチーム相手に副将戦を終わってここまで、勝者数で1−2、本数では2−2の同数なのですから。そして、いよいよ大将のGENクン…主審のはじめ!の声と同時に思い切ったメンから飛び込んでいきました。自分の勝負しだいでチームの勝敗が決まるという緊迫した場面…そんなときはいつも緊張のあまり弱気になってしまうGENクンなのですが、今日はそうではありません。素質は十分にあるはずです。なんといっても小学6年生のときは県の強化選手にも指定されたほどの子です。それが、剣道を十分に稽古する環境にないがために、その素質を伸ばせないでいる…本当に残念なことです。しかし、今はそんな感傷に浸っている場合じゃありません。なんといってもGENクンの1本勝ちで引き分け、2本勝ちでチームの公式戦初勝利です。とにかくGENクンには勝つことが求められているのです。勝ちにいけ!不恰好でも何でもいい、GENクン!キミらの先輩たちが成し遂げられなかった熱い想いと一緒に、キミらの歴史の扉を開けろ!勝ちにいくんだ!!

…見事でした。GENクンは本当に見事に相手大将からメン2本をとりました。勝者数で2−2に追いつき、取得本数を4−2としての逆転勝ちでした。R中学校では科学部や茶道部に所属し、限られた時間で剣道を続けてきた子どもたちが勝ち取った中学校での団体戦初勝利は、なんと全県新人大会という大舞台なのでした。わたくしが転げ落ちるように階段を降り試合場の出入口に行くと、嬉しさをかみ殺すような表情で会場に一礼し、子どもたちとHARUKO先生が出てきました。大将のGENクンは面を着けたままです。一番最初にHARUKO先生がはじけるように「スゴイ!スゴイよ!勝った、勝った!!」と手をたたいて喜びを表現すると、子どもたちにも喜色満面の笑みが浮かびました。「ホントにキミたち偉い!スゴイよ!!」と言いながらHARUKO先生の目から涙があふれました。「頑張ったな!おめでとう!!みんな最高の試合を見せてくれた。ありがとう…」とわたくしも言いかけて、「…(ヤバッ、オレも泣く!)」。

次の試合の指示をして観客席に戻ると、同じ郡市の父兄の方に声をかけられました。思わず「今、1回戦勝ちました!公式戦初勝利です!」と勝手に報告したわたくしに、「見ていましたよ。おめでとうございます!」、隣の方も「よかったですね!」。よかった!ホントによかった! 結局、次の試合は1−3で敗れましたが、子どもたちはホントに素晴らしい試合を見せてくれました。よ〜し、次はいよいよNIS東中学校だ!あと7ヵ月!いくぞお〜みんな!


          本番まであと1ヵ月・・合同稽古に参加し、みんなの目が輝きだした

夢にまで見た−といっても過言ではなかった中学校男子団体戦の初勝利を全県新人大会という大きな舞台で成し遂げたR剣道スポ少の男子5人。これでチーム全体の士気は一気に盛り上がりを見せはじめ…んっ、あれっ?なんだい、もう稽古の時間だろう!中学校の2年生、3年生を目前にして小学生と一緒に追いかけっこしてるっていうのはどういうこった…勘弁してくれよ!「おいっ!お前らなにやってんだ!(怒)何時だと思ってる、早く稽古に入れ!!(怒×2)」、団員たち「ワッ先生、もう来てたのか!ワリイ、ワリイ」、わたくし「なに言ってんだ、指導者が来てても、来てなくても時間になったら小学生に稽古を始めさせているのが中学生の役目だろうが…まったく!」といった調子です。

それでも、大会が終わって間もない平日の昼休みに、職場の近くのラーメン屋で顔見知りのR中学校の先生が「IKEさん、1勝したそうですね!HARUKO先生が自慢してましたよ」という嬉しい言葉です。続けて「HARUKO先生、来年の採用試験では高校じゃなく、中学校を受けようかなとか言ったりもしていました…ハハハ」、わたくし「ありがとうございます!」。そうかあ、HARUKO先生そんなこと言ってたのか。それにしてもR中学校の先生からこんなこと言われたのは初めてかもしれないなあ。娘のYUMが郡市新人戦で入賞したときだって、こんなことなかったような…。

さてと、しかしまずは肝心の選手たちだよな。大丈夫かなあ…、この1勝で気が緩んだりしてないだろうなあ。まだNIS東中に雪辱していないんだぞ。そしてその雪辱する機会はあと1回しかないんだ。でも、そんなわたくしのヤキモキもやがては取り越し苦労であることがわかりました。明けて平成16年の5月初旬だったでしょうか。講師だったHARUKO先生がR中学校を去り、新たに教務主任でわたくしの中学校時代の同級生HOSOY先生がR剣道スポ少の面倒をみてくれることになりました。そのHOSOY先生から職場に電話です。「IKEさんですか?R中学校のHOSOYです」、わたくし「おう、今年から難儀をかけるがよろしく頼む!」、HOSOY先生「まあ、やってみるわ。何もわからんぞ!」、わたくし「大丈夫!それにキミ、中学校時代は柔道部だったじゃないか!」、HOSOY先生「柔道と剣道は全然違うべえ。ところで、今連絡が入って、今度の土曜日、隣郡の中学校も交えてSENB中の体育館で試合形式の合同稽古があるんで、R剣道スポ少も来ないかという話しなんだけど…どうだ?でも、引率はキミだぞ!」、わたくし「うわっ、ほんとか!?わかった、返事はいつまで?選手たちに聞いてみる!」…。そしてその夜にすぐにみんなの自宅に電話してみると体調を崩しているKOHEクン以外はみんな出れるとのことです。

今考えてみると、このときの合同稽古がとてもよい経験でした。1日で10試合程度もこなしたでしょうか。そのうえ1人を欠いての参加だったことから1試合で2回試合する選手もいて、本当に貴重な稽古をさせてもらったのでありました。後で考えるとなによりもよかったのは、スポ少で稽古した技や戦い方を実際の試合で使うことを知ったことだったように思います。今まではこんな練習試合の機会がまったくなかったわけですから、稽古で新たに習得した技や戦い方はぶっつけ本番で使うしかありませんでした。それがこの日は勝負のかかった大会でもないわけですから、みんな思い切って試合に臨むことができ、手応えを感じとったり、反省したりすることができたことは本当に幸運であったと思います。みんなの目が変わってきました。いよいよ本番まで1ヵ月です。


          郡市剣道大会NIS東中学校戦・・タスキは白

平成16年6月、郡市中学校総体剣道大会の日がやってきました。当日の早朝、R中学校の前に科学部所属の5人の少年剣士が、ケガや病気をせずに元気に集合してくれたことが本当に嬉しく思いました。「おはよう!みんな集まったな!」というわたくしの声に「おう、遅いぞスポ少指導者!」と監督のHOSOY先生の太い声。「あっ、すまん。先生、今日から2日間よろしくお願いします。じゃあ集合させて、GENクン!」。みんながそろいました。HOSOY「オレは剣道のことなどまるでわからんから、ベンチに…んっ、ベンチってあるのかどうかわからんが座っているだけだ。しかし、気合だけは他校に負けるな!あとはスポ少での練習の成果を全部出すことだ。いいな!」、団員たち「はいっ!」。そして、いよいよ選手全員をわたくしの車に乗せて出発というとき、「みんな、頑張ってね!!」と声をかけながら校舎から急ぎ足で科学部顧問のHORI先生が出てきてくれました。よ〜し、行くか!「よろしくお願いします!」、「後でいくからね!」…保護者の皆さんの声を聞きながら会場のO中学校に向かいました。

開会式…隣にNIS東中学校チームが整列しました。限られた条件の中ではありましたが、十分に稽古をしてきたという自信からか、今までよりもみんな堂々としています。そして大会が始まりました。初日は個人戦です。みんな頑張り、1本をとったり1勝を挙げたりした選手も3、4人出ました。なかなかいい調子です。しかし、他校との実力は歴然としており、男子の個人戦開始後1時間ほどで5人全員が試合を終えました。「個人戦の最後までちゃんと観戦して、初日の終わりの会までいるからね」というわたくしの言葉に"もちろんだ!"と言わんばかりに団員たちが強く頷きました。

そして大会2日目、団体戦の日がやってきました。男子チーム7校のリーグ戦で、うち4校が県大会に進むことになります。残念ながらスポ少チームのR中学校とNIS東中学校は他校よりもかなり実力が劣ります。県大会への出場は強豪5校のうち1校が脱落するといった構図です。しかし、R中学校とNIS東中学校からの取得本数や勝者数が大きく順位に影響するとあって、強豪5校の選手たちも必死です。

ライバルNIS東中学校戦は第2戦目、たすきは白です。


          究極の作戦は、なんとかしろ!!・・NIS東中学校に雪辱を果たす

初戦、OMA南中学校戦はもちろん完敗、やはり緊張していたせいか動きがぎこちなかった選手たちにHOSOY先生が「気持ちが弱いし、声が出ていない!今まで頑張って練習してきたんだろう!?今、それを出せなかったら後悔するぞ!」とゲキをとばしてくれました。「はいっ!」選手たちの真剣な眼差し。次の第3試合がいよいよNIS東中学校戦です。わたくし「いいか、戦う姿勢はHOSOY先生の言うとおりだ、いいな!」、続けて「NORとKOHE、いいかオマエたち先鋒、次鋒が勝ち負けを抜きにして気合いのこもった試合をすれば、チーム全体の力が一つになって、きっと勝利に結びつくはずだ。よし、準備しろ!頑張れ!」、先鋒のNORクンとKOHEクンが控えの畳で面を付け始めました。そして中堅KOTAクン、副将ARATクン、大将GENクンに向かってわたくし「技術的なことはもう頭に入っているよな」、続けて「いいか、3人とも分かっていると思うが先鋒、次鋒が勝利してくる可能性は低い。しかし、あいつらが頑張って1敗1分けできたら・・」ゴクリ・・。「いいか、1敗1分けできたらオマエたち三人がなんとかしろ!絶対に逆転するんだ!!分かったな!!!」・・今から思うとこんなことで勝負に勝てるんだったら苦労はないのですが、このときはホントに考えに考えた末での必死の指示だったのです。・・そして試合が始まりました。

先鋒NORクンは始めの声とともにコテメンで入り、先手、先手と積極的に攻めていきます。しかし、相手先鋒の鋭いメンに屈して1本負けです。

次鋒KOHEクン・・腕力が極端に弱く、いつもは相手の打ちに防戦しながらタイミングを見計らって身体を開いたメンだけで戦ってきた子です。しかし今日は、自分から積極的に前に出ます。普段やらない追いメンも見せてくれます。やった、引き分けた!次鋒まで1敗1分けだ・・。

いよいよ中堅のKOTAクンです。"なんとかしろ、なんとかして追いついてくれ!KOTA!!"。KOTAクンは小学校5年生まで音楽部、6年生から剣道を始めました。その上達ぶりには目を見張るものがありました。"自分から、自分から行け!"・・よお〜し、引き面決まった!1本勝ちだ!追いついた!!

続いて副将ARATクンです。技術もスピードもあるのに、小学校時代は勝てずに天を仰ぎ続けました。団体を組んだときも先鋒だったのですが真面目すぎる性格からか思ったように勝利をつかめずにいたのですが、副将となってから力を出せるようになりました。副将に下げたとき、わたくしは「ARATクン、キミを副将にしたのは降格させたんじゃないから。このチームは副将のところで必ず勝たなきゃいけないからキミにしたんだからな!」と彼に言いました。ARATクンも強くうなずいてくれました。よ〜し、出がしらのコテ決まった!そのままもう1本行け、返されてもいいから行け!・・ああ、惜しい!でも、1本勝ちだ!逆転したぞ!!

そして、大将GENクン・・こうなりゃ行け、行けだ!・・小学校2年生の冬にR剣道スポ少に入団してきたGENクン、身体も大きくなりました。ただ、その頃から少し気持ちが弱く、ここぞ!といったときに守りの剣道になってしまいどうしても積極的な攻めができずにここまできました。「GANクン、キミが大将としてチームの勝利を決めるまでオレはキミを大将から動かさない!」そうわたくしが言い続けてきたのも、間違いなく剣道の技量ではチームで1番だからです。よっしゃーメンありだー!!やったー!・・そして、試合終了の笛・・
勝者数で3−1、ついにR剣道スポ少の団員でつくったR中学校チームがライバルNIS東中学校チームに雪辱を果たす勝利を決めた瞬間でありました。1敗1分けで踏ん張り、中堅からの3人でなんとかして勝つ・・いや、なんとしても勝つんだという選手たちの強い気持ちがこの何にも代えがたい素晴らしい逆転勝利をもたらしてくれたのでした。よくやった、本当によくやった!

・・残りの4試合もみんなで全力を出し切って戦いました。もちろんどんなに頑張っても勝利に結びつくことはありませんでした。最後の試合が終わりました。成績は1勝5敗、郡市内の中学校7校中6位という結果でした。試合場に一礼して5人が引き上げてくると小さな、でもいくつもの拍手が彼らを包みました。見ると保護者の方々です。みんな、選手と同じくらい清々しい笑顔で拍手をしながら我が子を迎えてくれました。そして口々に「頑張ったな!」、「よくやった!」、そしてお母さんたちは涙を浮かべています。ホント、感動させてくれるじゃないか!キミたちは最高だよ!!そして立派な剣士だよ!!そう思いながら彼らの様子をながめていると・・「あれ?IKE先生、泣いてるんスか?」とのぞき込むようにGENクン。バ、バカヤロー、泣くわけねえだろう、泣くわけ・・


          秋の郡市新人大会で心からの感謝・・たった一人のR中学校選手

そして、この年の9月・・中体連の郡市新人剣道大会が6月と同じ隣市のO中学校体育館で行われました。R中学校の団体チームも3年生が引退し、出場選手は、団体戦で先鋒だったNORくん1人だけが残り、個人戦のみの出場となりました。NORクンは、8年ほども前からR剣道スポ少で頑張っている団員です。8年前というと・・そう、わたくしがてんやわんやでR剣道スポ少の指導を始めたときの団員のひとりであり、同時に、その草創期のR剣道スポ少の最後の団員なのであります。

午前7時半ころに2人で会場のO中学校に到着、試合場の体育館でまずは準備運動です。・・するとここから思いがけないことが連続して起こりました。まず、朝一番にO中学校のGTO監督先生がNORくんに「おうっ!おはよう、頑張れよ!」声をかけてくれました。NORクンも笑顔で「はいっ!」。それからNORクンがわたくしの持つ竹刀に打ち込みを始めると、KAKU中学校のNIS監督先生が「Rスポ少さん、ウチのこのSTO選手と練習してください!」とナント練習相手の選手を1人連れてきてくれたのであります。わたくし「えっ?あっ、すみません!!ありがとうございます!!」、そしてきょとんとしているNORクンに「ほ、ほら!キミもお礼を言って!」、促されてNORクン「ありがとうございます!」。思いもかけず試合前の十分な練習ができ、NORクンがメンをはずしていると、今度はあのNIS東中の保護者の方が「あら、SAITクン(NORクンの苗字です)1人?!ウチの東中と練習してくださいよ!!」と心配してくれました。2人「心配いただいで、ありがとうございます!!」。わたくしはNORクンに向かって思わず「な、なんかスゴイなあ・・ありがたいことだなあ・・」、続けて「そうだ、代理監督にあいさつをしておかなきゃ!行こうNORクン!」・・と2人でSEN中学校のSMD監督先生に"代理監督"を引き受けてくれたお礼に行くと、笑顔で「いやあ!がんばってな!!」。そして大会が始まり、運良くNORくんが初戦を突破する打突を決めるとわたくしが立つ試合場の向こう側で大きな拍手が起こりました。「えっ、あらっ?この拍手って、ウチのNORクンに・・?」、それはNIS東中学校の選手と保護者の方たちからの拍手でありました・・。

本当に、本当に感謝の気持ちであふれ出ようとする涙をこらえるのがやっとでした。・・そうでした、R剣道スポ少はいつの間にか団員みんなの一生懸命の剣道で周囲のみなさんから少年剣道を通じた仲間として受け入れてもらい、知らず知らずのうちに多くの方々からの大きな手助けをいただいていたのでありました。本当にありがたいことだと思いました。この感謝の気持ちを決して忘れず、NORクンとはもちろん、またいつかこの体育館でR中学校剣士たちの精一杯の剣道を見てもらうんだと心に誓ったのでありました。


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