◇ めざすぞ、団体戦初勝利!

          ヤッター、Rスポ少に大会の初招待

あれは、平成10年7月下旬でした。郡市剣道連盟から児童生徒から指導者を対象に、地元出身の国際武道大学の先生を招き「剣道講習会」を開催するので必ず参加するようにとの通知がありました。日程は2日間です。R剣道スポ少も参加することにしました。もちろんT指導員と初段のわたくしも防具をもっての参加です。団員は小学3年生以上の6人です。当日の朝、会場のS町民体育館には小、中学生はもちろん高校生や一般の剣士が集まっていました。ああ、イヤだなあ、どんなことするんだろう。団員たちにあんまり不恰好なとこ見せられないよなあ・・とわたくしの心がつぶやいています。

講習会は、最初から最後まで竹刀の振り方や踏み込みなどの基本を中心に、昼休みを挟んで約5時間の実技でありました。あれっ、ウチの子どもたちに教えているのとだいぶ違うなあ・・と途中でやや落ち込みましたが、わたくしも必死です。講習会が終わったとき、わたくしの右手(左手ではなく、右手です)のマメがつぶれて大いに痛んだことを憶えています。

さて、ここで知り合ったのがKARI剣道スポ少の指導をされているSASさんです。R町と同様にKARIスポ少があるNISISEN町には小、中学校に剣道部がなく、地元の剣友会が仕事の傍ら指導しているとのことでした。そして毎年11月初めには剣友会と父兄が協力して招待大会を開催しているとのことです。SASさん「R剣道スポ少は団体を組めるんスか?」、わたくし「は、はい!一応5人はいます」、SASさん「なんだじゃあ、ウチの大会に来ればいい。来れるスか?」、わたくし「あっ、招待してもらえれば・・弱いッスけど」、SASさん「関係ないよ、スポ少の事務局に言っておくから!」、わたくし「お願いします!」。

そして10月の初旬、わたくしのところにNISISEN町教育委員会から待望の大会の招待状が届いたのでありました。


          感謝の気持ちで大会に臨む

この年は、毎年9月15日に開催され、R剣道スポ少が目標としてきた郡市少年剣道大会とR小学校の学習発表会が重なってしまい、残念ながら出場できない年でした。そのため、NISISEN町教育委員会からいただいたこの大会への招待は本当にうれしく思いました。なによりR剣道スポ少の団員たちを、同じ剣道を頑張る少年として、また技量の優劣を問うことなく招待してくれたことへの感謝の気持ちでいっぱいだったのです。

このNISISEN町の招待大会は、この町の教育委員会とKARI剣道スポ少の指導者の方々、父兄のみなさんの手で運営されている大会です。審判員の先生方については郡市の剣道連盟から協力を得ているようですが、そのほかはすべて手作りの大会といった感じがします。4チームの予選リーグが組まれていることも大きな魅力でした。なんといっても必ず(負けても・・)3試合は経験できるのですから。

さらに、このKARI剣道スポ少も小、中学校に剣道部がなく、町内の有志の方々が週3、4回程度夜間に指導して活動しているとのことでした。しかも郡市の中ではなかなかの実力を持ったチームです。この招待は今でもいただいており、1年を締めくくる大会として参加させていただいています。そして、この大会終了後に団員たちの慰労会が行われるようにもなっているところです。

・・さて、いよいよ大会の当日です。


          まだまだ厚い団体戦の壁、でも・・

いよいよ試合開始です。この大会に個人戦はなく団体のみの戦いです。そしていよいよ、あの4年生の2人のサムライ剣士たちのデビュー戦でもあります。オーダーは、先鋒SOUくん(4年生)、次鋒YUM(5年生)、中堅NORクン(4年生)、副将SIKIさん(5年生)、大将HIROさん(6年生)、補員GENくん(3年生)という布陣です。試合は4チームの予選リーグです。

第1試合が始まりました。相手は地元NISISEN町のKARI剣道スポ少です。先鋒SOUくん、期待がかかります・・がナント極度の緊張からか本来の動きにはほど遠く、出ゴテと抜きメンをとられ完敗でした(よほど悔しかったのかこの試合が終わるまで面をとりませんでした)。続いてYUN、相手も女子選手です。なかなかの好選手です(この相手選手とはのちにYUMのよきライバルとなり、郡市選抜チームのチームメイトとして札幌大会に出場しました)。・・これは引き分け。中堅のNORクンも副将のSIKIさんも善戦しましたがそれぞれ1本負け。大将のHIROさんも堂々とした戦いでしたが惜しくも引き分け。結局、新チームの初戦は0−3の完敗でありました

次の試合も善戦。そして最終の試合です。相手は6年生主体の強豪KAKUNISIスポ少です。2回目の試合から本来の動きを取り戻した先鋒4年生のSOUクンが1本先取された後に見事な出ゴテを取り返し引き分け。先鋒の5年生YUMも押し込みながらの引き分け。中堅4年生のNORクンも善戦むなしく1本負けです。そのとき相手チームに動きがありました。ナント、監督が副将の選手を呼んで指示を与えているのです。このときわたくしが背中がゾクゾクしたのを今でも憶えています。明らかに興奮していました。R剣道スポ少相手に強豪チームが動いた!しかし・・結局このあと、副将の5年生SIKIさんが積極的に攻めながらの2本負けで勝負あり。このあとの大将6年生のHIROさんは引き分けで0−2という結果でした。 団体戦初勝利は翌年度に持ち越しとなりましたが、確かな手応えを感じた大会であったことを今でも鮮明に憶えているのであります。


          新チーム結成!個性たっぷりの少年剣士たち

さて翌春。これまでチームを支えてくれていた6年生のHIROさんが卒業し、R剣道スポ少も4年生1人、5年生2人、6年生2人という団体戦の新チームを結成しました。新チームのオーダーは次のとおりです。

先鋒SOUくん・・5年生の男子です。運動能力は抜群で、他に陸上とサッカーのスポ少にも入団しています。

次鋒NORくん・・同じく5年生の男子です。運動能力はそれほどでもないのですが、試合の駆け引きに対しては抜群のセンスを持っています。

中堅SIKIさん・・6年生の女子です。体力的にかなり厳しいものがありますが、精神的な強さはチーム一番です。

副将GENくん・・4年生の男子です。まだまだ甘えん坊で不安ですが、元気があります。

大将YUM・・6年生の女子で我が娘であります。技量にはなかなかのものがあり、勝負への執着心もある剣士です。

補員MITIくん・・SIKIさんの弟で3年生の男子です。1年生から防具を着けて頑張っていますがまだまだです。

このチームのポイントゲッターは大将のYUMと先鋒のSOUくんです。この2人が勝てないと、チームに勝利はありません。そして3人目の選手・・これが問題です。次鋒から副将までの誰かが勝てば勝利は大きく近づきます。引き分けでもOKです。まあいいさ!先のことを考えていても仕方がない・・こう開き直っての新チームのスタートです。それぞれ個性派ぞろいの少年剣士たちですが、何か魅力があるチームでもありました。


          思わぬ弱点がそれぞれの剣士たちに・・・

個性的で、なんとなく何かを起こしてくれそうなR剣道スポ少の剣士たちでしたが、結果を出すまでにはなかなかたいへんでありました。まず、6月の郡市学年別小学生剣道大会やそれ前後の練習から、思わぬ弱点がそれぞれの剣士たちにあったことがわかったのです。まず、5年生の2人です。この2人は無類の練習嫌い。特に基本稽古なんていうのはまっぴら御免という子どもたちでした。次に6年生の女子2人。学年別大会でベスト8となり敢闘賞をいただいたYUMは自分の技量に対する自信を通り越してすっかり天狗になってしまい、SIKIさんは相変わらずの体力不足です。また、4年生のGENくんは夏恒例の剣道講習会に参加してあえなくダウンし「お母さんのところへ帰る!」。

ふう〜、これじゃあ団体戦はきついなあ・・。ライオンズクラブ主催の郡市少年剣道大会まであと1カ月という8月の上旬、さすがのわたくしたち指導陣も、やっぱり週2日くらいの今の練習じゃ限界があるのかなあと思い始めておりました。しかし、だからといってこれ以上の練習日をもうけることは指導者の都合からも、子どもたちの塾や習い事の日程からもとても無理な状態でした。そして、なにより子どもたちが「団体戦」ということに対して、わたくしたちが思うほど特別な思いを抱いておらず、自分の試合だけにしか興味を抱いていないという状況も解決できずにいたこともチームとしての弱点なのでありました。


          9月の熱い戦い・・郡市少年剣道大会へ

さて9月15日、いよいよライオンズクラブ主催の郡市小学生剣道大会(通称ライオンズ大会です)の日を迎えました。会場はいつもどおりO小学校体育館です。幸い補員を含めた6人の選手は、体調を崩すことなく試合に臨むことができました。子どもたちはなんといっても前日まですこぶる元気でいても、翌日には風邪をひいたり、お腹をこわしたり・・と思わぬことが起こります。集合場所のR町民体育館にやや眠そうにしながらも全員集合した子どもたちの姿を見てホッとひと息。

この日の大会の午前は個人戦です。春の学年別大会6年生の部でベスト8に入り、敢闘賞をいただいたYUMも5、6年生の部で頑張りましたが、2回戦で5年生のKAK道場KUROくんに完敗しました。他の選手たちも3回戦まで進めず個人戦の終了です。わたくしは子どもたちを集めて「いいか!個人戦はみんな頑張ったけどしょうがない。午後からの団体戦でがんばろう、いいか!!」、みんな「ウン!」。会場ではまだ個人戦の準決勝が行われていました。いつもは勉強だから強い人の試合をよく見ているように言っているのですが、この日は「みんな、控え所に行って軽くご飯を食べて!」。

そして団体戦予選リーグが始まりました。R剣道はKAKNISスポ少とKAK道場Bチームと同じリーグです。お願いしまあすー!!


          本数1本差で団体戦初勝利!!

いよいよ団体戦、相手はKAK道場Bチーム。5年生主体ですが来年のレギュラーチームと言える好チーム、強敵です。先鋒にSOくんが試合場に入りました。初戦に弱いSOくんではありますがこの日は午前中に個人戦を戦っているのでリラックスしています。よしっ、いける!直感的にそう思いました。SOくんはなんといってもスピードが抜群です。5年生ながら100メートルを13秒台で走る力を持ち、郡内では少年サッカーの好選手として有名な子で、わたくしはいつも「SOくん、キミはおそらく郡内で一番足が速く、サッカーの上手い少年剣士だ!」と笑って言っておりました。試合開始。数秒後、すばらしいSOくんの飛び込みコテが決まりました。そしてその十数秒後、またしても飛び込んでのコテで一本です。

そして次鋒はSOくんと同じ5年生のNORくんです。運動能力は普通ですが、試合運びにセンスを見せる剣士で、ある意味SOくんよりも安定した力を出せると言ってもいいくらいです。出がしらのメンが得意で惜しい場面が数回ありましたが引き分けとなりました。SOくん、NORくんともにワンパク剣士ここに在りといった序盤戦です。

続いて中堅、6年生のSIKIさんです。腕力の強化が不十分でしたが頑張りました。早々にメンを決められましたが、その後追いメンを中心に攻撃的な剣道を展開、1本負けという結果でした。しかし、5年生とはいえ中堅の好選手相手にすばらしい善戦です

副将は甘えん坊のGENくん、4年生です。GENくんはチームみんなの「逃げずに戦え!」、「GEN!前に出ろ!自分から攻めろお!!」という声援も空しく残念ながら2本負けを屈しました。1勝2敗1引き分けとなりました。

そして大将戦、6年生のYUMが試合場に入りました。「はじめ!!」という主審の声で試合開始です。相手は6年生男子の剣士です。レギュラーチームから漏れた選手とはいえ実力はあります。そこに「メーン!」というYUMの気合とともに1本を先取。数秒後、またしてもつばぜり合いから相手が引きゴテで下がったところに強い追いメン・・1本!

結局、勝者数は2対2であったものの、本数の4本対3本で団体戦初勝利をもぎとった瞬間でありました。それを真っ先に教えてくれたのがSIKIさんのお父さんでありました。負けなくてよかったー・・くらいにしか思っていたわたくしにSIKIさんのお父さんが「センセイ!やった!!勝ちましたよ!」、わたくし「ええっ?」、「この団体戦勝ちました、ウチのSIKIが1本しかとられていませんから本数勝ちです!」。

残念ながら次のKAKNISスポ少には完敗しましたが、この団体戦1勝は本当にみんなの力を合わせた結果であり、わたくしにとっても忘れられない思い出になったのでありました。


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