◇ Rスポ少中学生男子団体チーム誕生!

          R中学校に7人の男子剣士が・・

娘のYUMがR中学校の3年生になったときですから平成14年の春・・Rスポ少の団員募集をしたところ、ちょっとした異変が起きました。それは、R中学校の男子7人が入団の申込みをしてきてくれたのであります。実はその前年、早くから入団していたGENTくん、ARATくんの2人に加え、KOTAくん、KOHEくん、ABEくん、AKIHIRくんの6年生4人が入団してくれていたのでありますが、その6人とも中学校でも剣道を続けてくれるというのです。これに、2年生になったKENGくんを合わせて7人の男子中学生剣士が生まれたのであります。そして中学生女子剣士はYUMとSIKIさんの2人です。わーっ!9人も中学生剣士がいるーっ、すげー!!

ご承知のとおり、剣道部がないR中学校では、学校の方針で現行の部活のいずれかに必ず所属することになっています。ですから、この9人の少年剣士たちは中学校でそれぞれ放課後、なんらかの部活動をしながらの剣道・・ということになるわけであります。その内訳を紹介しますと茶道部3人、科学部5人、テニス部1人という具合であります。いやーたいへんだなあ・・と思いつつも、なんか嬉しくも思ったわたくしでありました。


          頭脳は優秀!剣道の技量は・・2年半の幕が開く

この7人の中学生の練習が始まりました・・とはいえ、全員がそろうことはほとんどなく、4、5人での練習が続きました。それでも、7人ともなかなか飲み込みがよく、週2日の活動だけでしたが上達するのが早いように思えました。特に小学生の早い時期から始めていたGENTくんとARATくんはなかなかのものでしたし、加えて体格のよいKOTAくんも目を見張る成長ぶりを見せてくれました。それでも、3年生女子のYUMやSIKIさんにはまだまだかなわないくらいの剣道でしたから、レベルとしては知れたもの?であったかもしれません。

練習日を増やしてみようかな・・などとも思ったのですが、5人が所属する科学部の活動は、「これが文化部?」と思うくらい活発であり、聞けば、郡市や全県の発表会でも常に好成績を挙げているとのこと・・これでは仕方ありません。しかし、限られた練習に来る団員たちはみんな明るくて、しかもちょっとシャイであり、剣道に対してもとても熱心な少年たちでありました。これより2年半、少年剣道を通じたこの中学生たちとの深い関わりがここに始まったのであります。なお、この中学生たち、学校の勉強ではみんなトップクラスの頭脳の持ち主であったことを聞いたのは、彼らと付き合ってからしばらくしてのことでありました。


          多くは脱野球、脱ミニバス組・・団員たちはそれぞれ個性派

さて中学生男子チームの団員からよくよく話しを聞いてみると、どうも小学校時代にさまざまなスポーツ少年団に所属していることを知りました。どの団員たちも実に個性的な子どもたちであります。

KENGくん⇒2年生で茶道部です。小学校では4年生頃からずうっと野球部に所属していたとのこと。ただ公式戦では内野安打1安打のみ・・お父さんがわたくしにいつかそう言って苦笑しておりました。少し身体が硬く、打ちはやたらと痛い。抜き胴の打ちはまるっきり野球・・。

GENTくん⇒1年生で科学部。小学校2年生の冬からの団員です。4年生ごろ一時野球のスポ少にも所属していましたが、5年生からは剣道のみで頑張っています。5年生頃から勝てるようになり、ナ、ナント高学年の2年間は国体の強化選手に指定されました。

ARATくん⇒1年生で科学部。非常に無口な子ですが1本へのこだわりはチームで1番かもしれません。小学校低学年の頃にロクボクで足を骨折したときがあるそうです。小学校の公式戦ではほとんど勝てず、6年生の最後の試合のとき1回戦負けしたときは1人涙・・中学校でも1本とられると天を仰いで悔しがります。

KOTAくん⇒1年生で科学部。小学校時代は音楽部です。やや体力がないのが残念ですが、体格もよく、日に日に成長していくのが見える剣士です。兄さんは娘のYUMと同級生で、遠いO市の海洋学校でたった1人で未経験の相撲部を起こしたというつわものです。KOTAくんもそんな強い自立心を持ち合わせた子です。

KOHEくん⇒1年生で科学部。小学校の頃はミニバスのスポ少でプレーヤー兼マネージャーのようなことをしていたみたいです。ところが、いかんせん腕力が驚くくらいないため、しばらくは3尺6寸の小学校の竹刀を使わせていたほどです。しかも、やんちゃでほとんど指導者の言うことを聞かない甘えん坊であります。

 ABEくん⇒1年生でテニス部。小学校の6年生頃R小学校に転校してきて剣道を始め、運動能力もあってとても筋のいい子なのですが、運動部との両立はどうだろう?という心配があります。

AKIHIRくん⇒1年生で科学部。小学校の頃はミニバスのスポ少です。ご両親ともに公務員という家庭環境からではないと思うのですが、真面目!であります。わたくしたちに言われたことは真っ先に実行しようとします。自宅でも竹刀振りの自主練習をしていると、マメだらけの手を見せてくれます。

これに女子組3年生のYUM、SIKIさんが入ってRスポ少中学生のてんやわんやの活動が始まりました。平成14年の春のことであります。


          「中体連の新人大会、団体戦に出ませんか?」・・ええっ、マジっすか!!

その年の6月、中体連主催の郡市大会が終わりました。男女ともそれぞれ個人戦の出場であります。3年生になったYUMとSIKIさんの女子組2人も全県大会出場をめざして頑張ったのですが力及ばず、決勝リーグ進出を目の前にして中学校時代の選手生活に幕を閉じたのでありました。そして、1、2年生の男子たちもそれぞれ頑張りました。しかし、初段のわたくしの指導のもと週2回の稽古で出場しているR剣道スポ少選手と高段者の先生の指導で毎日稽古し鍛えられ、しのぎあっている部活選手との差は、男子の場合、女子の比ではありません。

大会が終わった日の夕方、ろくに汗もかかずに試合を終えた男子選手たちと目標に達することができなかった女子選手を連れて、わたくしはR町民体育館へ行き、選手全員でリーグ戦を行いました。みんな最初はきょとんとしていましたが「さあ、やるぞ!みんなアップして!!今日わかったとおり、女子2人はけっこう郡市のレベルに近づいた。でも、残念ながら男子選手は他校の足元にも及ばない。とりあえず、このリーグ戦で負けたヤツがこの郡市で一番弱い剣士だってことだからな!行くぞ!!(笑い)」と言うと、「よっしゃ、やるかあー!!」とGENくん、他のみんなも次々に準備を始めました。熱のこもったリーグ戦の後は近くの食堂で慰労会です。さすが中学生、よく食べ、よく飲み、よく笑います。しかし、わたくしの心の中では・・いやあ、思ったより差があるようなあ。男子で部活の選手にひとつ勝つなんてことできるのかなあ。今まで経験した"不安"とは異なった感情が自分の中で大きくなっていくのをぬぐいきれずにいるわたくしでありました。

そして夏、R中学校のTAKA教頭先生から職場に電話がありました。「ああ、IKEさんですか?実は今度の9月の郡市新人戦から団体戦も出れることになったんですよ」、わたくし「はあ・・ハアッ?!」、教頭先生「5人いるんでしょ、R剣道スポ少。出たらどうですか?」、わたくし「○△□¥◇G×▼b・・」、教頭先生「ただ、個人戦とは違って代理監督じゃダメなんです。まあ、そこは当日だけわたくしも監督として行かしてもらうということで大丈夫でしょう」・・マジッすかあ、教頭先生?!


          自分たちができる範囲で全力を尽くそう・・娘に教えられた子どもたちの想い

強くなりたくないのか?勝ちたくないのか?強くなりたかったらやるしかないだろう!勝ちたかったらやるしかないんだ!・・数年前までわたくしが娘との稽古中や家で剣道の話しに夢中になったとき、決まって使っていた言葉です。そしてこんな父親の言葉にうつむきながら娘はうなずくしかないのでありました。しかし、R中学校3年生の春・・昨秋の郡市新人大会で個人戦3位に入った娘に大きな期待をかけていたわたくしは、なかなか調子の上がらない娘に家に帰ってからも「もっと真剣にやらなきゃダメだろ。強くなりたいんだろ?勝ちたいんだろ?」、続けてたたみかけるように「ただでさえスポ少の個人稽古っていうハンディがあるんだ。そんなだらけた気持ちでどうするんだ?!」。すると突然娘のYUMが立ち上がりました。そして「お父さんに・・」、わたくし「エエッ、なんだ」、うつむきながらYUM「お父さんに言われなくたって・・」、わたくし、カミさん、弟のTAK、ばあちゃん「・・(し〜ん)」。な、なんだ?とわたくしはドキドキ。YUM「お父さんなんかに言われなくても、わたしは強くなりたいし、試合で勝ちたい!スポ少だから・・なんて思ったこともない!スポ少だけど部活(の選手)に負けたくないって思ってる!走るのも、跳ぶのも全然ダメなわたしだけど・・郡市で勝って全県に・・わたしだって全県に出れるんだってことみんなに見せてやりたいって・・そう思ってるんだ!父さんの何倍も、何倍も!!」(号泣)。わたくし「・・悪かった、そ、そんなつもりじゃ・・ゴメン」。

結局、娘は頑張ったものの個人戦の全県大会出場を手にすることはできませんでした。しかし、娘が初めてわたくしに見せたこのときの訴えを忘れることはできません。そして、このときからスポ少の団員たちに"強くなりたくないのか?"とか"勝ちたくないのか?"といった言い方は極力控えるようにしています。なぜなら子どもたちは強くなりたくないはずがないし、勝ちたくないはずがないのです。強くなりたくないのか?などという言葉を口にするとき、それは指導者としてのわたくし自身が思うように指導の結果を子どもたちに出してやれず焦っているときの言葉にほかならないと気づいたからであります。

ですから、R剣道スポ少中学校男子の郡市団体戦出場が決まったとき、わたくしは団員たちにこう言いました。「団体戦だからといってそんなに特別な練習はしない。基本的に今までのスポ少での稽古、つまり週2日の稽古で大会に備えよう。いいな!」、続けて「だから、それぞれの科学部や茶道部の部活はしっかりやって、部活の先生に注意などされることのないようにな。オマエたちのそんな今までの剣道が認められての団体戦出場なんだから。自分たちができることを全力でやって大会に臨もう!」。団員たちは、意気込んでしゃべったわたくしの言葉に少し戸惑いながらも、しっかりとうなずいてくれたのでありました。


          中学生剣士の団体戦初挑戦!強豪校が炎のごとく襲いかかる・・

いよいよ大会の日がやってきました。開会式では大会委員長の先生が「今大会には、新たにR中学校チームが団体戦に参加します。頑張ってください!」という有難いお言葉。その後初日の個人戦に入りました。個人戦の方は、各中学校とも入学してから剣道を始めた選手もいるため、R剣道スポ少の中学生たちも大いに善戦。1回戦を突破した選手も出たほどでした。個人戦を終えた選手たちに「いよいよ明日は団体戦だな。実力的には全くといっていいほど違うと思う。それはオマエたちもわかっているだろう?」−選手たちも納得顔で"うん、うん"−、続けて「だけど、その実力の違いがいったいどれほどのものなのか指導者の自分にもよくわからない。それでも強い気持ちを持って、決して逃げるような戦いだけはしないぞ、いいな!そして、今回はスポ少としてではなく、R中学校として出場しているのだから言動には気をつけてな!」と熱く問いかけるわたくしに、子どもたちは「はい!」という明るい返事。しかし、わたくしは心の中で・・ああ、神さま〜、お願い!この子たちを守ってください!

そして団体戦・・オーダーは先鋒がARATくん、次鋒にAKIHIRくん、中堅に主将のKENGくん、副将にKOTAくん、大将にGENTくんです。KOHEくんは補員として登録しました。残念ながらABEくんはテニスがあるため欠場です。団体戦は個人戦と違い、試合場内に選手と監督も座ることになっています。これは県中体連の申し合わせにより監督は中学校の先生が座らなければいけません。R中学校で監督を務めていただいたのは、もちろんTAKA教頭先生です。(スポ少指導者のわたくしは、試合場の外で一般の観客として見守るのが約束です。)試合場で教頭先生は笑顔で、そして大声で選手たちとわたくしに「おはようございます!今日は頑張りましょうね!!」、そして「他校との差は仕方がないです。0−5で、しかも0本−10本で敗れても不思議ではありません。でも一人でも戦って引き分けたり、1本取ったり、勝ったりしたら、それは凄いことなんです。でも、キミたちにとってそれは決して夢ではありません。いいですね。頑張ればなんとかなります」。選手たちは強く返事をしていましたが、わたくしだけは何か熱いものが込み上げてきて・・うるうる。

いよいよ対戦・・相手はOMAG中、OMAG南中、SENBK中、KAKU中、OBO中という強豪ぞろいです。これにR中学校を加えた6チームでリーグ戦を行い、上4チームが県大会に出場するというルールなのですが、驚いたことに初戦から各校とも鬼神のごとく、また炎のように激しく我がR中学校チームに襲いかかってきます。1試合目を0−4で完敗した後、わたくしは教頭先生に「力の差は歴然としているのに、けっこう手を抜かず厳しく戦ってきますね」、そう語りかけると教頭先生は半ば呆れたように「そりゃあそうでしょう、考えてもみてください。R中学校以外は実力が伯仲しているんです。そんな中でのリーグ戦ですよ。わかるでしょう?!つまり、R中学校に勝者数にしろ、取得本数にしろ、取りこぼしの多い学校が県大会に行けないことになるんですよ」・・ああっ、そうかあー!気がつかなかった!!


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