私は高校時代、雑誌の「ハムになれば外国の人と友だちになれ、みんなの人気者になれる」という言葉を鵜呑みにし、１９７７年に電話級をゲット。翌７８年に開局。そのころの定番、トリオＴＳ−５２０とトラップバーチカル（ＧＰ）というよくあるパターンで、それなりに７，２１ＭＨｚ帯を中心に国内、国外ＤＸを楽しんだ。しかし、受験とＴＶＩ、カラオケＩ、アンテナ倒壊と不運が続き、やむを得ずＱＲＴに。それからは、興味が他のものに移り、ロック（特にニューウエーブ・・死語）とかに傾倒していったり、車にのめり込み、夜な夜なＡＥ８６やＥＰ７１ターボで走りを追求したり、無線のことはすっかりわすれていました。
就職もし、仕事に没頭する毎日。９４年の夏のある日、休暇でふらっと木曽の御嶽山に車で行った。宿も取っていない無謀な旅。山の上で車中宿泊を余儀なくされたが、暇でしかたがない。連絡用に付けてあったFM機を何気なくつけてみた。すると驚いたことに「・・CQ CQ こちらは茨城県筑波山移動 Ｊ○１△■○・・・」とかすかに１エリアの声が聞こえるではないか！。私は、４３０ＭＨｚでは、近距離で電話ごっこ（失礼）しかできないと思っていたのに、何百ｋｍも離れた所の信号がかすかに聞こえる。私は、夢中でマイクを握り、コールした。５１−５１で交信成立。久しぶりにアマチュア無線で手に汗を握る。「これはおもしろい！」と調子にのってCQを出す。２エリアを中心に結構遠くから声がかかるもんだ。１枚あったレポート用紙が一杯になるまで交信をした。「今までの最長距離です」と感謝する局もいた。大阪に帰り、長らく切れていたＪＡＲＬにすぐ再入会したのはいうまでもない。
それからしばらくは、おんぼろのＦＭ機とホイップで移動運用もどきのようなことをしていた。それなりにパイルは受けるし３エリアは全域飛ぶ。しかし、もっと飛ばしたい。私は八木アンテナを初めて導入する事にした。１５エレシングル・・・その当時は「たかが無線でこんなに大きな本格的なアンテナ（笑）を使わなあかんか」と抵抗があったのだが、これがよく飛ぶんだよな。当時ＤＸと思っていた２エリアともいとも簡単にできる。おもしろい。移動運用にのめり込んでいったのはいうまでもない。しかし、ＦＭには大敵がいた。そう、チャンネル争い。気持ちようCQを出しているのに、「どこそこのクラブで使ってるで」とジャミングが入る。これには参った。なんとか気持ちよく交信できないのか・・・答えはＳＳＢであった。
４３０ＭＨｚのＳＳＢ機ＴＭ−４５５を９４年の暮れに買う。しかし折しもシーズンオフ。聞いてみても雑音ばかり。がっかりする。しかし、よく聞くと、１エリアと交信している人がいる。「何で１エリアがきこえんねん」と素直に思った。９５年１月のある日。３エリアの局が１エリアと交信している。「高いところからだったら聞こえるかも」と、車を走らせる。凍結した道に注意しながらホイップでワッチすると何となくキャリアを感じる。なんと、山道の真ん中に車を止め１５エレシングルを急いであげると何とちゃんと東京の信号が聞こえる。コールするが１０Ｗの悲しさ。とってもらえない。あきらめずに、１０回以上のやりとりの後、交信成立。万歳をする。当面は１エリアと交信する事がテーマになった。その後、アンテナのスタック化プリアンプの導入、移動地探し、パワーアップ、多エレメント化・・・。と、泥沼に入っていったのはいうまでもない。
４３０ＭＨｚはＵＨＦである。ＵＨＦは飛ばない。電離層反射もない。そんな飛ばないバンドで飛ばすことが４３０ＭＨｚの醍醐味でしょうか。特に移動運用は釣りに似て、「攻撃」的姿勢が必要である。天気図を見てコンディションを占う。地図を見て「このポイントは飛ぶかな？」とか、アンテナなどの設備はどうしようかなと考えを巡らせる。当日は朝早くからセッティング。まさに釣りと同じ感覚がある。
４３０ＭＨｚでたくさんの仲間ができた。いつも山の上で元気な声を聞く移動仲間。陽気な大阪ローカル各局。１７０ＮＥＴメンバー。ＮＩＦＴＹ−ｓｅｒｖｅのハムのフォーラム ＦＨＡＭで知り合った仲間。最近では、インターネットでの７Ｍ２ＰＤＴ梅沢さん主催の４３０ＳＳＢメーリングリストのメンバー。無線だけでなく、いろんな媒体を通じて全国の多くの仲間と知り合えることができた。たかが無線、されど無線。偶然からのめり込んでいった４３０ＭＨｚＳＳＢであるが、これからも多くの出会いを大切にしていきたい。
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