平成15年1月号より
木 善胤
年末年始気鋭の歌集あいつぎて関西アララギの力をぞ思う
かがなべて歌集を読めば繭ごもる歌の命の幾つかが見ゆ
文鳥のさえずり繁き朝々を移り住まいてたのしかるべし
桑岡 孝全
降る雨を敢えてあそぶと前の夜を電話交すよ奈良にある君と
山々のまとう霧しろし雨あがるをねがいてつどう九月尽日
井戸 四郎
かぎろひの歌碑ある丘のあらかしの木立の下に団栗拾う
雨はるる阿紀の社に日並皇子の尊のみ狩をば聞く
土本 綾子
比叡やまを借景として苔庭に配せる石のいのちを思う
暗ぐらと湛うる水に夕ひかり及びて怪しきまでのその色
猪股 静彌
文明の歌のいさご地砂白く咲きて乱るるみぞそばの花
古えの宮の狩場かひんがしに聳え寂しき秋高見山