平成15年4月号より
本村 則子 | 大阪 |
エプロンにてんとう虫を遊ばせて草引く吾に春の風吹く | |
金本 都子 | 高知 |
記入終えて閉ずる家計簿おのずからこの一年の手垢染みたる | |
上松 菊子 | 西宮 |
若松に副えし柳の枝先に新芽出でたり小正月来て | |
村上 小春 | 富田林 |
あなたの言う方が正しいと知りながら我は生得の天の邪鬼にて | |
山口 克昭 | 奈良 |
天平の塔の映れる池水に鴨やすらえり長旅をきて | |
尼子 勝義 | 赤穗 |
学力の概念さえも共通の理解えられず会議の終わる | |
藤井 寛 | 篠山 |
拉致されて子の晴れすがた見ぬ親もよその子祝う成人式今日 | |
伊藤 千恵子 | 愛知 |
暖房のききて明るきこの部屋に冬こゆる夫と思い慰む | |
安藤 治子 | 堺 |
眠り浅くなる暁に思いおりいま中有に在りと云う友 | |
許斐 眞知子 | 徳島 |
通勤の満員電車の感覚なり国に時代にただ揺られいて | |
丸山 梅吉 | 大阪 |
若きよりただ一筋の道歩み九十六歳ひとりのくらし | |
坂本 登希夫 | 高知 |
飯盒に溶かしし雪を回し飲みきわが決死隊出動の宵 | |
選者の歌 | |
桑岡 孝全 | 大阪 |
気を許すとき痛覚にさやるものうつしみの人の世のつねの棘 | |
はたらきし日の早食いの習いなおあらたまるなく七十がくる |