平成15年9月号より

原  華恵 赤穂
朝市に並ぶキャベツは露もちて持てばきしきし音の立ちたり
奥野 昭広 神戸
春となり乗車カードの残額の減り行く早しまだまだ元気
春名 久子 枚方
デイケアの車行き交いわがまちに鯉のぼり見ることのなき夏
木元 淑子 赤穂
来年の春には父とならん子の手紙の書体少し変わり来
辻  宏子 大阪
経営者は孤独なものとボーナスを査定する子が唐突に言う
松本 安子 岡山
体勢を整え担ぐ水一荷日照りつづきの菜園へ行く
矢持 春水  大阪
声高く携帯電話に争いて涙する少女子足早にゆく
村松 艶子 茨木
半夏生生うるを見れば亡き友の庭を埋めて茂りいん頃
森田 八千代 篠山
今宵果つる命もあらん籾井川にかげ映しつつ蛍飛び交う
佐藤 嗣二 高槻
垣山の若葉輝き日に映えて滝さながらにかかる藤波
後藤 蘭子
駅のホームにさりげなく声かけ着崩れを直せば眩し少女の笑顔
横山 季由 奈良
峠の上に静かに住みなす村親し飛び越え石の古道守りて
高島 康貴 徳島
うろ覚えの記憶幼く吾が寺に駝鳥小屋ありき由来しらねど
野崎 啓一
葉桜の陰濃き下を我は行く叶わぬ旅の心にありて
木山 正規 赤穂
黄の蝶の流さるるごと白樺の夏の落ち葉が吹かれつつゆく
        選者の歌
土本 綾子 西宮
本とじてはや眠るべしかにかくに明日は明日の仕事が待てり
井戸 四郎 大阪
町工場裏の運河の防潮堤今日の夕日の赤々照りぬ
桑岡 孝全 大阪
思いなしほどの暑気ある朝ぐもり風は早苗をしなわせてふく
木 善胤 大阪
今年こそ阪神優勝を希う時マジックナンバー29となる

 

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