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桑岡 孝全 |
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白内障術後見えわたるかなたより着膨れてわがふり妻きたる
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捨つるべきくさぐさの中その昔勤務せし西成の区分地図あり
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雪降れり大阪平野にふるさとの雪の摧(くだ)けし散りぼうほどに
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花崗岩を模する壁紙綻ぶるカルチャーセンターにまた出勤す
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幇間めくカルチャー講座受講生ガムを噛むとも怺(こら)えて怺えて
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たらちねの膝の記憶はひとつのみ田舎芝居を見し夏の夜
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登校途次見知らぬ少女に西はるか時雨のつくる虹えお教えつ
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高 槻 集 |
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安西
広子
大阪 |
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| かりそめの占いながら病む夫の今年の運勢よしとありたり |
| 水の変化教えるチャンスと氷張る朝よろこびき教職のころ |
| 気象通報読み違えたるアナウンサーに訂正指摘の低き声あり |
| 前線の今通るらし灰色の雲の動きは東へはげし |
| 半島を南へ下る冬の旅照葉樹林の緑は暗し |
| 濯ぎ物干して見上ぐる黒竹の背後に冬の青空高し |
| 年末に買いたる食材おおかたを工夫しながら使い終えたり |
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岩谷
眞理子
高知 |
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| この年の給料出でしか銀行にインドネシアの漁夫ら送金す |
| 病室に手術より帰る母を待つベッドは電気毛布に暖めて |
| 吾が癒えて母の手術に立合いの叶うはまことありがたきかな |
| ありがとうと一人ひとりの名を呼びて再び母の眠りに入りぬ |
| 手術後の母見届けて県境の町へ帰り行く満月に向かい |
| 長きこの一日漸く終りたり母おきて帰る三時間の道 |
| 家に戻り無事到着とメール打つ長き運転を案ずる弟に |
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小倉
美沙子
堺 |
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| 八ヶ月近き介助に疲労して時とし夫に意地悪している |
| 席立ちて機嫌そこねて去る夫にかけねばならぬ一語ある筈 |
| さまざまな思いに沈む夜のありてテレビは意味のなき音をたつ |
| 遠く住む子らの恋おしき折ふしに携帯持ちて思いとどまる |
| しつけまだ取らざる夫の紗の着物姑の持たせしそのままにあり |
| 無縁社会なる放映に見入りつつ遠く住むとも子の二人あり |
| やわらかくなれる光の窓にさしきっとこの春を夫は越ゆべし |
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■ 推奨問題作(23年2月号)
編集部選 |
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現実主義短歌の可能性拡大をめざして |
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上松 菊子 |
| 揃えるを自慢にしたる歯を抜きて帰れる家に一人座りぬ |
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奥嶋 和子 |
| 鐃鉢の大いなる音響かえり朝の御堂に数えて二十五 |
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奥野 昭広 |
| その方はもう亡くなったのよこの春に古希を迎えるママの答えぬ |
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小倉 美沙子 |
| とりあえず検査結果はパスしたと院内レストランで乾杯 |
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川田 篤子 |
| 幾百人か集える軍の演習の写真のいずこに父のおりしや |
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神原 伸子 |
| 子や孫の何時戻れるか知らず過ぐ我は階下に子等は二階に |
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佐藤 千惠子 |
| 足をひき発車まぎわを急ぐ吾にtyっくりでいいと車掌の声す |
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長谷川 令子 |
| 声低く熱中症もどきと訴うる友とひとときを電話に過ごす |
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松内 喜代子 |
| 兄逝きて経るひと月かみ山にて拝む仏のみなありがたき |
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山口 克昭 |
| 辛抱のシャッターチャンスが極め手なりと入江先生構えて動かず |
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