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| 選 者 の 歌 |
| 桑 岡 孝 全 大阪 |
| こんな程度と思ってはいたが口舌(こうぜつ)の人口舌によりてつまづく |
| 単独行登頂達成を送信せるあと消息の絶えて経る年 |
| 莢割きて豌豆を食うねずみありと朝の厨に妻の怒れる |
| 重複投稿に気づきて詫ぶる電話二つかかる律儀に歌誌支えらる |
| 大和川にごり膨るる昼を来て見るみずどりは鵜の一羽のみ |
| 高 槻 集 |
| 坂本 登希夫 高知 |
| ながらえて九十九の命に花あかり庭のしだれ梅ま盛りなり |
| 戦前なれば百と二ケ月の齢なり衰えし体で梅を見ており |
| 五夜不眠で来し病院の院長は心電図の表見せ心房細動と言う |
| 百二十キロを子の車で病院に来即入院と院長は言う |
| タオルちり紙など日常品のみの携行にパジャマなど借り入院なり |
| 車椅子で運ばれこしシャワー場頭洗いくれる体洗いくれるヘルパー三名が |
| 二ケ月で治ると院長言うを信じ日々の注射耐えおる |
| 竹中 青吉 白浜 |
| 円安に喜ぶ側に泣く側にいずれでもなき側にやすらう |
| 何故に憲法改正必要か外濠埋めるあやうさに似て |
| 九十六条改正すれば九条が丸裸になるもってのほかだ |
| 三分の二を二分の一としたり顔算数不得手ときき及べるに |
| 参議院にて否決されるも予算案成立参議院など無駄の骨頂 |
| 靖国慰安婦持ち出しまたも無心卑しくみえる新大統領 |
| 一衣帯水時に忘れて思い出づ民族の間柄こそ大切なれや |
| 安藤 治子 堺 |
| まんだらげ今年蒔き得ぬを憐れむかこぼれ種ひとつ鉢に芽生えぬ |
| 暮れ方より降る気配あり塼に置くアジサイの鉢土におろしぬ |
| 宵闇にアジサイの藍紛れつつ夕べは長し梅雨に入りたり |
| 庭藪に塒となすは何の鳥短く啼きて静もりゆきぬ |
| ブラウスを薄物に替えいくばくか心引き立つ六月朔日 |
| 白虎隊をきいたようなと言う嫁に話続かず箸を動かす |
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学び来し大方は戦争史と思うとき空しとも現実の姿なりとも
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| ■ 推奨問題作 (6月号から ) 編集部選 |
| 現実主義短歌の可能性拡大をめざして |
| 乳房なるものを知るなきひな鳥の肩に乗り来て耳たぶを吸う |
| 天ヶ瀬 倭文子 |
| 今年の桜見られるだろうかと言いにしを逝きし後聞く吾には言わず |
| 石村 節子 |
| 預かりし猫と暮せる一月余小さき息吹のまだ残る部屋 |
| 小倉 美沙子 |
| 少量を詰めし弁当の白飯は母の着物の変りにしもの |
| 奥村 道子 |
| 長かりし闘病の末逝きし兄今も病院にある思いする |
| 佐藤 千惠子 |
| 引汐の入江をめぐる車に酔いいそぐ妻の面会日今日 |
| 竹中 青吉 |
| 遠き町のビル陰に蹲りいしという介護のみ子のまどろめる間に |
| 土本 綾子 |
| 職退きて十五年過ぐ日溜りに干す制服と帽子の古りて |
| 春名 重信 |
| 恃みとする甥の訃を聞く九十のその母はいま施設にありぬ |
| 春名 久子 |
| 石炭の灰を捨てんと出づる間に戸は凍てつきて頑と開かず |
| 堀 康子 |
| 椿咲く下の石碑は若者の嘉介がここに雪に倒れし |
| 森本 順子 |