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| 選 者 の 歌 |
| 桑 岡 孝 全 |
| ここに住むは四十ねんかひつじ田のみどりの失せて歳晩となる |
| 日曜日の今朝地下鉄に乗り合わす竹村翁は礼拝にゆく |
| 首いだすままのつくりの鳩時計小公園の冬日に見いづ |
| お前たちはどうしてこんなにへたなんだ土屋文明怒号の逸話 |
| マアミンナヘタヤナア合田八良(はちろう)が長嘆息せし歌会もありき |
| 高 槻 集 |
| 竹中 青吉 白浜 |
| 朝夕に仰ぐ里山いま世界遺産我が懐かしさに変りなけれど |
| 筆まめの人までが年賀は機械文字終りなき世の果てに来れば |
| たぎる湯に牛(ぎゅう)の一片くぐらせては遊ぶが如き夕餉なりけり |
| 母不在なれど吾が家に帰省して眠るよろこびこの上なしと |
| お元気そうと声かけくれしは元看護婦(ナース)気付きし時はそこらに見えず |
| 朝鳶の声して湯の如き雨が降る離れ暮しには何が善(よ)けんか |
| 元旦と月齢一重なりめでたけれ月読の尊(みこと)も忘れないでね |
| 土本 綾子 西宮 |
| 子ら去りて二人に広きこの家の寒さかこちて冬を迎うる |
| 暖房の部屋にこもりて日もすがら読むこと縫うことなべて足らいて |
| 朝と夜欠かすことなく記したる血圧手帳十冊となる |
| 窓先に一日つづける人の波厄神さんの祭り日今日は |
| わが町に屋台のならび焼き栗の匂いただよう寒のいち日 |
| ビニールの袋に綿菓子を入れて持つ孫たちならず自らのため |
| 拡大鏡措きてしばらく眼閉ずかかる動作を日にいくたびか |
| 安藤 治子 堺 |
| 明日(あした)にも開くかと見ゆる庭の梅に心残してカーテンを閉す |
| かつがつに庭を覆える粉雪のとくるは早し夕べを待たず |
| この庭に雪だるま作ることなかりけり堺に幾度か冬を越え来て |
| 全校を紅白に分くる雪合戦朝の授業は心そぞろに |
| 北摂の池田は寒さ厳しかりきすすぎもの氷る朝のしばしば |
| 雪深き関金の湯に携いし幼な友どちもこの冬逝きぬ |
| 昆陽(こや)の池に渡る冬鳥を共に見ん宿りに来よと言いし友はも |
| ■ 推奨問題作 (2月号から) 編集部選 |
| 現実主義短歌の可能性拡大をめざして |
| 尺取虫のいとくず紛いが二の腕を走りて渡る運動量は |
| 山口 克昭 |
| 丸刈りの野球少年車内にてリップクリームをおもむろに塗る |
| 脇本 ちよみ |
| 鳩笛を奏でて立てる女あり人波に小さき揺蕩生みて |
| 黒川 理子 |
| 猿の皮剥ぎあか子のごとければ食うを止め埋めきビルマ戦場 |
| 坂本 登希夫 |
| 夫と孫八月生れを祝う夜にフレンチのコースペロリと小六 |
| 篠木 和子 |
| 一人なることは心の安けくて正倉院展の列につらなる |
| 白杉 みすき |
| 家事育児妻に任せきりで来しかたの罪滅ぼしにわれは働く |
| 高間 宏治 |
| 刺繍してブックカバーをプレゼント漫画以外の本も読めよと |
| 武田 壽美 |
| 介護認定支援2の我かつがれきて大根洗うがに風呂の湯を浴ぶ |
| 竹中 青吉 |
| 握手せる誰よりも手の冷たきを知りたり今宵うたげのあとに |
| 土本 綾子 |
| 私同様左脳傷めし弟としどろもどろの会話をしたり |
| 鶴野 佳子 |
| みつ蜂の一生かけての蓄えを家居をしつつ一匙に食ぶ |
| 森田 八千代 |