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桑
岡 孝 全 |
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相似たるよわい羞(やさ)しく重源は狭山池改修の折八十二
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小主観を言うなく対す千四百年をたもちたもちし堤の断面
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| 平野郷までを潤す狭山池の水をパノラマに見て声を呑む |
| 記起の代の大溜池の堤より秋天下(しゅうてんか)なるハルカスを見る |
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高 槻 集
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| 長谷川 令子 西宮 |
| 鉦叩きの声を楽しみし遠き日よこの庭隅の暗きに出でて |
| ネットにて再生試むる鉦叩きかの可憐なる声にはあらず |
| 大型のプランター覆う草の上オンブバッタの枯葉色せる |
| 残されし三輪車の上に散り積もる桜紅葉に夕光早し |
| 旅ゆくも叶わずなりて手をあわせ告ぐるは今日も一人居の愚痴 |
| 老い知らぬ夫には解らぬこの鬱を抑えて庭の小菊を供う |
| わが町にみ子らの住まぬ空き家増ゆ時に庭師の鋏音して |
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| 春名 久子 枚方 |
| 夏の日を遮りくれてようやくに末枯(すが)るる蔓に零余子(むかご)実らず |
| 米余りと聞く秋にして農を継げる髪白き甥に思いは及ぶ |
| 病室は四人部屋にて皺ふかき面して眠るいずれの人も |
| 時ながく会わざるいとこ枕もとの名札確かめ声をかけたり |
| ヘルパーさん掃除したまう家の内人の気配に心のゆるぶ |
| 採決する看護士さんの手の震い血管細きわれは危ぶむ |
| ゆっくりと歩を進めつつ自ずから腰に手のゆくこの日頃なる |
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| 山内 郁子 池田 |
| 秋の日の翳れる中をワレモコウ倒れて咲きぬ色深めつつ |
| 偶さかに外出(そとで)をせんと思うまに今日という日の暮れてしまいぬ |
| わが仕種なべてもたつくこの日頃老々の身となれば詮無し |
| 庭中に置き忘れたる花鋏夜に入りて降る雨におもえり |
| 暖かき日のつづくなりツワブキの黄なる花群早々と褪す |
| 朝毎を本堂にわが読経する時刻このごろ定まりてきぬ |
| 腰板のやわらぐ今日は境内の無縁の塚に花供えゆく |
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■ 推奨問題作 (12月号から)
編集部選 |
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現実主義短歌の可能性拡大をめざして |
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| 何もかも打ち捨て怠りいたき心現(うつつ)には楽しきこと無くなりぬ |
| 安藤 治子 |
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| 曇る日を人にあいたく苑にきてブランコを漕ぐ少女みている |
| 春名 久子 |
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| 積年を一度だに父とよばれざりき垣より家を覗きて去りぬ |
| 遠田 寛 |
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| 今を撮る家族写真十二人みんないい顔夫は横向き |
| 川口 郁子 |
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| 芽の出でし大根一列土竜奴に土を盛られて今日が始まる |
| 川中 徳昭 |
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| 飛行機雲一生恐れて仰ぎにし祖母にてありき戦の後も |
| 黒川 理子 |
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| 百歳吾に首相が祝状下されしと百二十粁を子の来て知らす |
| 坂本 登希夫 |
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| 秋空にぼんやりと雲の日和よし孫は今年もかけっこべべたん |
| 坂本 芳子 |
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| 病院のベッドにすわり母の言う何処が悪いのいつ帰れるの |
| 中原 澄子 |
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| 病室を見失いしより詰所過ぐるひとり歩きを義母は躊躇す |
| 中道 英美子 |
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| 水害より連続無休の三週間女性職員の面輪やつれぬ |
| 西川 和子 |
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| ごんぎつねの終り哀しく音読の宿題今日はなしと孫言う |
| 松内 喜代子 |