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桑
岡 孝 全 |
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憲法九条をうとむ宰相外遊の途上テロリズムを誘発す
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邦人虜囚殺害の報到る日もかつ歌いかつはわらうメディアぞ
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| 殺人青年に肉親四人それぞれが生涯に負うおもきをおもう |
| 昭和八年出生同期の昭八会八十歳越えて招集のなし |
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編集会議にからくも退院かないたる遠田寛の剃らぬおとがい
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高 槻 集
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| 山内
郁子 池田 |
| ゆとりなき思いに過ごす寒き昼庭のあちこち水仙ひらく |
| 新しき気持になりて街に出づ老い深まるを少し忘れて |
| 救急車去りたるあとは何事もなかりしがごと夜更けしずまる |
| 冷えわたり物の音なき朝の庭寒アヤメ濃き紫に咲く |
| せわしさを楽しみとせし若き日を思いて衿の解れをかがる |
| 七株の牡丹の根もと堀り下げて肥料ほどこす大寒の日に |
| つい愚痴をならぶる我に僧わが子聞く耳なしと言い放ちたり |
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| 伊藤 千恵子
茨木 |
| 疱疹の痛み少しく和らぎてこと多かりし年越えんとす |
| 病める身をいたわり早く帰りなんいまだ明るき街川わたる |
| ターミナルに出で来て歩むはひと月ぶり往来の人の中に疲れて |
| 大寒の日の穏やかに窓に差しわが体調の少しもどり来 |
| 樹の下のパン屑にけさ羽よせて雀十数羽ひたすらに啄む |
| 啄める雀いっせいにとび去りて嘴太鴉の一羽降り立つ |
| 如月のきたらんとして今夜降る雨は廂に音立てて降る |
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| 坂本 登希夫 高知 |
| 元朝に五錠と半分の薬のむ百歳われの療養始めと |
| 敵前上陸のわが歌載せし本棚の歌集を百歳が読み返しおり |
| 歳旦を背広纏えばヘルパーが二十歳程若しと囃す |
| ベランダに硝子ごしの初日拝む人手恃まず過ごさせたまえと |
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餅の無き病院はさびし百歳まで年々雑煮をくいいしものを |
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羊を飼い毛を刈り糸作り子らの服を妻に編ませし戦後を思う |
| 寝て食いて病院の日々献体は申込みしが姨捨の語を思う |
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■ 推奨問題作 (2月号から)
編集部選 |
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現実主義短歌の可能性拡大をめざして |
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| マンションの外壁工事始まりて網のかかれるうす闇に住む |
| 佐藤
千惠子 |
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| 百年使いし頭少しボケるは当然でしょうとヘルパーの言う |
| 坂本 登希夫 |
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| 爺さまは舗装路へ綱引っぱるを犬には犬のおもいあるらし |
| 南部 敏子 |
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| 老い知らぬ夫には解らぬこの鬱を抑えて庭の小菊を供う |
| 長谷川 令子 |
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| 大鉢のゼラニュームの葉の色づきて掃けばかさこそ高層の秋 |
| 林 春子 |
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| ヘルパーさん掃除したまう家の内人の気配に心のゆるぶ |
| 春名 久子 |
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| 名号を称えながらに古の石棺削りてなりし樋という |
| 森口 文子 |
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| 敬老会立冬すぎが習いとなる老人大方農を支えて |
| 森田 八千代 |
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折れ曲がり見ゆる小指は仕事ゆえ言い訳をして人に向かいぬ |
| 芦北 紀子 |
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| 千年を隔つるらしき二つの樋ともに手斧(ちょうな)の跡を残して |
| 安西 廣子 |
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| 秋くれば被る古びしこの帽子亡き妹の選びくれたる |
| 伊藤 千恵子 |
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| 花終えし大文字草の群生あり切りたつ崖の滴りのなかに |
| 岩谷 眞理子 |