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桑
岡 孝 全 |
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老いづける体いとえと書き添えて賜る賀状とみにふえたる
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八十に一歳くわえてつくづくと桑岡孝全性能劣化
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| 歌会席上奥嶋和子ひとりのみとおき東の地震を覚りし |
| 奇禍大小あいつぐ国にのどやかに身のめぐりのみうたう一団 |
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愛煙家にてありき定年退職直後肺の障りに呆気なく死す
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高 槻 集
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| 安西
廣子 大阪 |
| 秋の日の傾く早く外壁のラセン階段長く影ひく |
| 幾度か夫と行きにしプールあるスポーツ施設車窓に見ゆる |
| わが庭の北山杉の花枝を急ぎ切りたり飛散の前に |
| 孫や子にチョコを渡すという人の意外に多し吾のめぐりに |
| 晴るる日に蒲団干し得ず今日をとぶ花粉非常に多しと聞きて |
| 切り泥む一つ南瓜固しとも力弱りしかとも思いて |
| キッチンに小さき立雛飾りたり一人居吾の多くいる場所 |
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| 伊藤 千恵子
茨木 |
| 咲き出ずる九輪草のしろき花に日の照りかげりする二月尽 |
| 九輪草咲けば思ほゆ榛名山の旅にはじめてわが知りし花 |
| あたたかき如月の末の一日なりことしはじめて黄沙の降りて |
| 大正生れ少なくなる世に存えてこの秋迎うるわが九十歳 |
| 亡き母の倍の齢を生きるとは思いみざりき今夜寝んとして |
| マンサクの咲きいん頃か夫ありて暮らしし村のかの広き庭に |
| 路地出でて歩むことなき二日三日今日ポストまでの百米ほど |
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| 竹中
青吉 和歌山 |
| 「闇市大吉萬事予通」の赤き連小さな店に大きなのぞみ 春節回顧など |
| 御車台に日本の十銭貨叩きつけ音を聞き真贋見る馬車夫は |
| 日本人は焼餃子(やきぎょうざ)好み彼らは蒸し餃子むし餃子よばるる旧正月待つ |
| 千山(せんざん)は仏と道との道場隣接鉄鉱山の発破(はっぱ)坐禅にひびく |
| 世間しらず遼東の豕(いのこ)毛並黒くよく肥えて食欲さそう |
| タイピスト鄭允中はリンゴ農家の子青きすっぱきを海水浴に |
| 娘々(ニャンニャン)祭娘々は女性の神大地は萌えて人はにぎわう |
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■ 推奨問題作 (3月号から)
編集部選 |
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現実主義短歌の可能性拡大をめざして |
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| 傷痍軍人になりたる父の歳末の工面を幼くおろおろ見ていき |
| 鶴亀 佐知子 |
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| 穏やかに母の命日終りたり晴れたる道に僧を見送る |
| 戸田
栄子 |
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| 冬の日は早く暮れゆく何用なき後期高齢者選挙に行こうか |
| 南部
敏子 |
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| 高く尖る石塔を兵士の墓と知らず若くもあらぬ運転手さん |
| 長谷川 令子 |
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| 八十歳過ぎたる友と我ながら旅に来たりて紅筆を買う |
| 森口
文子 |
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| 笑顔をばつくり普通の暮らしするこれを終えるが我が命終 |
| 安井
忠子 |
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| スーパーに求めし食材日々背負う鎖骨たくまし鏡の裸身 |
| 吉田 美智子 |
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| スタッフやホームの仲間に祝われて夫は七十七歳となる |
| 安西
廣子 |
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| 戦争の狭間生き来しわが少女期防空頭巾の火を叩き消し |
| 上野 美代子 |
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| カーテンの仕切るベッドに仰臥せり覚むる朝の来るを恃みて |
| 遠田 寛 |
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| 百一の正月迎うと散髪せり両耳かぶさる髪切り清々 |
| 坂本 登希夫 |
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| 帰るねまたくるからと手を振りて幼子に言う如く別れし |
| 坂本
芳子 |