|
|
|
桑
岡 孝 全 |
|
|
新卒新任は六十年前その日々をしのばしめつつ桜のにおう
|
|
ウイスキー奨むる中吊り広告にひとひねりあり春はあげもの
|
| 菜園にブロッコリーはもうすぐ花努めて食えと妻が指示する |
| 北米産セロリにながきはざかい期厨房に入る男子わが知る |
|
連休さなかなる病棟に遠田寛野球中継を見て臥(こや)り居き
|
|
|
|
高 槻 集
|
|
| 山内 郁子 池田 |
| 暮れがたの庭に丈なす雪柳亡者の如く立ちて真白し |
| 野よりくる風自ずから匂いつつ朝洗いしわが髪を吹く |
| おおいなる牡丹ひらくを庭に見るわが嘆かいは嘆かいとして |
| 子の法衣畳みつついる己が影半跏思惟像(はんかしいぞう)に似たるを思う |
| 夜を通しせわしなく散る楠の葉よこの穏やかな春の幾日を |
| 学業に励むなかりしそのかみを悔ゆる日々なり老いたる今に |
| 気紛れに買い求めにし豹柄のコートを今年の冬も纏わず |
|
| 鶴野 佳子 大阪 |
| 右半身麻痺となりたるわが身にて立てず歩けぬ身障者となる |
| 右半身麻痺のわが身の重度にて重障者なる手帳戴く |
| 歩けない身となりたれば重障者用のタクシー券給付さる |
| 車椅子ごと乗車可能のタクシーにて買物にゆけると感謝感激 |
| 杭全神社の池畔に生うる半夏生半ば白き葉を美しと見し |
| ブラウスは殆ど娘の贈物お洒落なるものばかりで楽し |
| 深夜には配送のトラックの列大阪は昼夜を問はず交通渋滞 |
|
| 伊藤 千恵子 茨城 |
| 夫の忌の一日のすぎて広ごれる桜の若葉に雨降りやまず |
| 九輪草の終り紫蘭の咲き出でつ花茎長く風に揺れ合う |
| 紫蘭のはな咲けば偲ばゆ庭隅に植えて愛しみしわが亡き母を |
| 衰うる脚いたわりて上る駅の階の手すりのけさは冷たし |
| 路地にあそぶ子らの声絶えて穏やかに春の休日の夕べとなりぬ |
| 何方へゆきしか今日は門庭に撒くパン屑に雀来らず |
| 窓の外を集団登校の児童すぐ去年の春より少なくなりて |
|
|
|
■ 推奨問題作 (5月号から)
編集部選 |
|
現実主義短歌の可能性拡大をめざして |
|
| 我が小指の第一関節に障りがくる百舌鳥渡りきて高鳴く季節 |
| 安井 忠子 |
|
| コーリャンの重湯に育ちし妹の60キロでフラ踊るいま |
| 芦北 紀子 |
|
| 幼き日六つき住まいし花の寺六十年を経るもかやぶき |
| 天ヶ瀬 倭文子 |
|
| キッチンに小さき立雛飾りたり一人居吾の多くいる場所 |
| 安西 廣子 |
|
| キッズ用恵方巻きにて昼餉とす夫に付き添う検査室の前 |
| 岩谷 眞理子 |
|
| 空腹で足のもつるる午後の作業かにかくに耐えき英軍の使役 |
| 坂本 登希夫 |
|
| 二人して朝の散歩を日課とす五十年過ぐる背中見ながら |
| 坂本 芳子 |
|
| 西日さす舗道の影は左手に杖持ち右にカートひく我 |
| 澤田 睦子 |
|
| 舞う雪を孫らと共に眺めいて元日の夕べやむまで長居 |
| 篠木 和子 |
|
| 御者台に日本の十銭貨叩きつけ音を聞き真贋見る馬車夫は |
| 竹中 青吉 |
|
| 何時にても穏しき面の夫ありて病みたる人と思わざりけり |
| 鶴亀 佐知子 |
|
| 膝元に犬はべらせて一人する昼餉おいしい気楽がええなあ |
| 戸田 栄子 |