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| 選者の歌 |
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桑岡 孝全 大阪
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いとまあり今日見舞わんとまた思う友身罷りて日を重ぬるに
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| 晩年のわが母こころ受傷すれば昼より夜具を述べて臥(こや)りき |
| 大戦と天皇とえにしは浅からず今上の言動ときに涼しげ |
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花坂村大工杢市わが祖父の写真一葉いまいずこなる
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払底品パイナップル缶を欲りて得て祖母みまかりき敗戦前年
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550号記念合同歌集の場合
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| (続 関西アララギ作品回顧) 2 |
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| 山口 志麻 大阪 |
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| 罵倒に耐うる夜のありカウンターに気違い水を売る吾なれば |
| 吾が店の常連となりて十年か髪うすくまた白き誰彼 |
| 雨風の音しるき夜は客のなくカウンターに吾の読書三味 |
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| 70周年記念30首競泳 |
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心支度 山内 郁子 |
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| 戦争の終りし頃を嫁ぎきてわれはこの街の人となりたり |
| 智慧知識乏しき身にて父母に習いこの集落に寺家守りきぬ |
| 入相(いりあい)の鐘撞くわざも実につきて心しずかにその刻待ちぬ |
| 境内にかかわる小さき荒仕事に励みきたりし日は遥かなり |
| 宵々を境内の樟に渡り来し青葉梟の声久しく聞かず |
| ホーホーと二声啼ける青葉梟の冴えたる声に癒されたりき |
| いさかいは心の奥の痛む故安心(あんじん)に身をゆだねんと決む |
| 意気地なき吾を励ましくだされし友思いつつ樟落葉寄す |
| 青深きカリブ海にて憩いにし旅は汝との一会となりき |
| 七十年住みたる寺の大樟の下に涙せしことのいくたび |
| 香合を傍らに置き時折に目を瞑りつつこころ鎮むる |
| 何変るものなき今日を立つ庭に真白き蓮の二輪ひらきぬ |
| 出過ぐるを好むなかりし夫なりき閑かにわれと余生送りて |
| 残る世を生きつぎてゆくほかはなし心明るき日も暗き日も |
| 面影を追いて立つ庭ラグビーに鍛えし夫は逞しきまま |
| 木の葉散る如くにわが歯抜けてゆく年取ることは鬱を伴う |
| 何も見えず何も聞こえぬ昼暗き庫裏にながまる日の多くなる |
| 悔い多き一世と思う朝の御勤め終えてはつかに心落ちつく |
| 軽やかな白南風(しらはえ)の下面あげて夫の墓碑の供華買いに行く |
| 木の眠り虫の眠りを妨げぬように読経す未明の墓所に |
| 定命(じょうみょう)の中惑いつつ生くる日にナツツバキ庭に紛うなく咲く |
| 老い込めば気を使うこと遠ざけて恙無き日をしみじみと居る |
| 成りゆくはなべて任せて暮らす日にコブシは小さき莟を掲ぐ |
| 起きがけによき事一つ身にありて水色の空暮るるまで澄む |
| 今上(こんじょう)の喜びとせんブッダガヤに拾いし菩提樹の種の発芽を |
| 釈尊の褥(しとね)とされし吉祥草(きちじょうそう)の手入れは吾の役目となりぬ |
| 現生(うつしよ)の旅はトルコに終りたり彼の岸向きて行くこれよりは |
| み仏はしずかに手を延べ給うなり夜の眠りは常にやすらか |
| 見返りを願うことなく過ごしきてこの天地(あめつち)に老いを養う |
| 焦るなく心支度を整えて夫待つ浄土へゆく日を待たん |
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| 推奨問題作 (12月号から) 編集部選 |
| 現実主義短歌の可能性拡大をめざして |
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| はらからはなべて臥れり電話にて声を聞くなく秋深まりぬ |
| 春名 久子 |
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| みささぎの塒に帰る鴉数多涼しくなれる九月の空に |
| 松内 喜代子 |
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| 商品にならぬ小さき故里の蛸がとどきて蛸飯かしぐ |
| 森口 文子 |
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| 水漬きにし舅御骨を拾い得ず戦士証明に戸籍を消除 |
| 安井 忠子 |
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| 胡桃に見ゆる石つぶて投弾(とうだん)と記されありて石鏃に並ぶ |
| 山口 克昭 |
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| 戦終え七十年を心病み病室にのみ暮らす兵のこと |
| 脇本 ちよみ |
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| 百三十に余るを掲ぐる二科百年展女性の作品二点まじえて |
| 安西 廣子 |
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| 久し振りに誘われたる繁昌亭たのしみながら居眠りもする |
| 上野 美代子 |
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| 同窓会案内状の届かずと夢に告げ来し友世を隔つ |
| 金田 一夫 |
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| 鳥の声繁きあしたの公園に主逝きたる二階を仰ぐ |
| 黒川 理子 |
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| 一万の兵溺死せしシッタン河眠れぬ夜半に思いいでたり |
| 坂本 登希夫 |
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| 日をたがえ欠席をせしクラス会の写真とどきて心複雑 |
| 沢田 睦子 |
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