02年の生き物ニュース

2001年生き物ニュース

 2001,1,23〜12,28

12/28 環境省、重要湿地500カ所選定

 環境省はきょう、先に中間報告をした重要湿地500ヵ所の選定に基づく最終とりまとめを公表した。最終版では秋田・青森県境の十和田湖、秋田・岩手県にまたがる八幡平周辺湿原群(赤川源流域湿原、八幡平湿原、八幡沼、黒谷地、夜沼、蒸ノ湯大谷地、長沼、大沼、大場谷地、熊谷地、前谷地など) 、秋田・岩手県の南八幡平山稜湿原群(大深岳北面雪田、上倉山周辺湿原、丸森周辺湿原、三ツ石湿原、三ツ沼、栗木ケ原、〔岩手〕大白森湿原、八瀬森、〔秋田〕大白森湿原、小白森湿原、乳頭山、田代平湿原、千沼ケ原、笊森山雪田、熊見平、湯森山、秋田駒ヶ岳など) 、秋田・岩手・宮城県の栗駒山湿原群(栗駒山雪田、世界谷地、ゴザコバシリ、須川湖周辺、竜泉ヶ原、田代沼など)、田代岳湿地など秋田県内17地区を含む全国の選定地について、改めて選定理由などを示すとともに、湿地保全について普及啓発に努めることを強調している。

 最終まとめでは湿原や河川、湖沼、干潟、藻場、マングローブ林、サンゴ礁などのうち生物の生息地として規模の大きな湿地や希少種が生息している湿地等として選定した中間報告の500ヵ所について、さらに生物の生息状況などを細部にわたって整理し、重要湿地リスト詳細版として集約。中間報告後の現状確認や生物生息状況の整理などのとりまとめ作業により、若干の追加や統合、分離などを行ったほか、中間報告後の発見など新情報も盛り込んだ。 
 主な湿地タイプごとの重要湿地箇所数は湿原(雪田草原等を含む)110、河川69 、湖沼77、湧水地15、地下水系6、塩性湿地10、マングローブ林26、砂浜13、干潟50、藻場104、サンゴ礁26、その他の浅海域11、ため池・水路など人工的な湿地51。このうち秋田、青森両県が世界に誇る十和田湖は絶滅危惧I類のヒメフラスコモやカタシャジクモが生育しているのが選定の理由。また、田代町の田代岳湿地ではヌマガヤ群落、ムツノガリヤス、キンコウカなどの湿原植生を重視している。
 これらのデータは保全施策の基礎資料となるほか、保全地域の指定などに活用するとともに、重要湿地やその周辺地域での開発計画などに対しては事業者に保全上の配慮を促すことにしている。  

八幡平周辺湿原群(八幡沼、ガマ沼、蓬莱沼、黒谷地、御在所湿原など)の昆虫類

昆虫類 八幡平周辺湿原群(八幡沼、ガマ沼、蓬莱沼、黒谷地、御在所湿原など) チシマミズムシ、モイワサナエ、ルリボシヤンマ、オオルリボシヤンマ、タカネトンボ、カラカネトンボ、エゾトンボ、ハッチョウトンボ、ムツアカネ、カオジロトンボなどの生息地。八幡沼、ガマ沼、蓬莱沼、黒谷地、御在所湿原などの調査により、高標高の池沼にはチシマミズムシ、北方系のGlaenocorisa属の特異なミズムシ、アサヒナコミズムシ、キイロマツモムシが多数みられる。

12/12 マルハナバチ生産増強
 総合健康食品メーカーのアピ(本社岐阜市加納桜田町、野々垣孝社長)は10日、本巣郡穂積町只越に建設を進めていたマルハナバチの生産拠点「ホヅミ ポリネーション テクノセンター」の完成式を行った。
 同社は、国内で初めてマルハナバチの増殖に成功。国内産マルハナバチを各県の経済連などに供給し、現在、岐阜市の本荘工場で生産。年間8200ケースを出荷している。マルハナバチは、環境に優しい無(減)農薬農業などの進展で「花粉媒体昆虫」として需要が伸びている。このため、マルハナバチの生産増強を図り、本荘工場の2倍の生産能力を持つ第2工場を建設した。
 センターは敷地面積1250u、鉄骨2階建てで、延べ床面積は1320u。投資額は、工場・設備合わせて1億8千万円。
 完成式には関係者約20人が出席。神事の後、野々垣社長が「国内では初めての施設となる。ミツバチとともに日本一を目指したい」とあいさつし、完成を祝った。

12/7 梅園で新たな害虫増加

 2年ほど前から和歌山県南部郷の梅園で、タマカタカイガラムシやニホンキクイムシなど、今までそれほど目立たなかった害虫が勢力を伸ばしている。現在のところ、大きな被害は出ていないが、農業関係者や農家などは警戒を強めている。
 タマカタカイガラムシは直径約3−4_の丸い殻を作る。南部川村清川などを中心に南部郷全体に広がりつつある。この虫は木を枯らすことはないが、樹勢を弱らせるという。
 また、幹や枝の下側に殻を作ることから、スプリンクラーによる農薬散布は効きにくい。同村高野の農家は「以前は白いウメシロカイガラムシしかなかったが、ここ数年前から今まで見たことのない丸いカイガラムシが増えてきた。今までの薬が効きにくいようだ」と話していた。
 キクイムシの成虫は体長2.5_ほどの甲虫。基本的に樹勢の弱った木の中に卵を産み付け、幼虫が中心部を食べてしまう。入ってしまうと防除できない。
 農家によると、以前から知られていたが被害はそれほど多くなかった。2年前から南部町の岩代地区などで急激に勢力を伸ばしているという。
 南部川村うめ21研究センターでは、「近年の高温乾燥化が原因の一因になっているのでは」と分析している。平成6年ごろから徐々に雨量が減っており、今年も11月末現在で1490_(同センター調べ)と1年間の平均雨量1945_に届かず、特に夏場の雨量が少なくなっている。
 紀南地方の昆虫に詳しい後藤伸さん(72)田辺市秋津町の話 カイガラムシは農薬をすればするほど増えてくる。キクイムシが増えているのは弱った木が多くなったからだろう。最近の大規模農園が土地を砂漠化させていることが大きな要因。

11/15 トマトハモグリバエ 山梨県内初の発生確認

 キュウリやトマトの葉を食い荒らす害虫「トマトハモグリバエ」が山梨県内で初めて確認され、同県は13日、「病害虫発生予察特殊報」を出した。県内で新たな病害虫の発生が確認されたのは、2年5ヵ月ぶり。従来からいるマメハモグリバエと同様に葉肉を食い荒らす害虫だが、トマトハモグリバエはウリ科の作物で多発する傾向にある。同県は防除の徹底を指導するなどして、農家に注意を呼び掛けている。
 トマトハモグリバエは北米から中米に生息する害虫で、成虫は体長1.3〜2.3_、幼虫は3_で、ウリ科をはじめ、ナス科、マメ科、アブラナ科など多くの植物に寄生する。幼虫が葉肉に入り込んで食い荒らし、葉に線状の食べ跡が残る。被害が軽ければ作物への影響は少ないが、葉全体が白化するような状況だと作柄も悪化する。
 国内では1999年4月に沖縄県のトマト畑で初めて発見され、同8月に山口県と京都府で被害が出た。西日本を中心に被害地が広がり、現在は18府県で発生が確認されている。関東・東海地域では、神奈川県に続いて山梨が2例目。
 山梨県内では10月に、峡中地域のハウス栽培のキュウリ、峡北地域の露地栽培のキュウリで被害があった。県病害虫防除所が幼虫とさなぎを採取して羽化させたところ、従来のマメハモグリバエと異なる特徴が見られたため、農水省横浜植物防疫所に送って調べて確認された。同県内での未発生病害虫の確認は、99年6月のトマトサビダニ以来。
 防除対策として県は(1)ほ場周辺の除草に努める(2)摘葉や収穫後の葉・茎は、ビニールシートなどで覆って虫を死滅させる(3)虫が発生したハウスなどでは、施設を密閉して蒸し込み処理し、土中で羽化した成虫を死滅させる−などを呼び掛けている。薬剤防除では、マメハモグリバエに有効な薬剤などを使うと効果があるという。

11/9 日本カメムシ図鑑第2巻が完成

 園芸農業でナスの害虫の天敵に使われているカメムシなども収録した「日本原色カメムシ図鑑第2巻―陸生カメムシ類―」が出版された。シダカスミカメ亜科のコケカスミカメが世界で初めて記録されるなど学術的評価も高い。同図鑑は平成5年に第1巻を発行。翌年に高知市文化振興事業団の高知出版学術賞を受賞した。
 第2巻は、フタガタカメムシ科、カスミカメムシ科、ハナカメムシ科、トコジラミ科に属する約470種をカラーの生態写真とともに、特徴、分布地域のほか、発見にまつわるユニークなコラムも掲載している。
 北海道教育大札幌校の安永智秀助教授、独立行政法人農業環境技術研究所の中谷至伸さん、高知県農業改良普及協会の川沢哲夫さん、高知県農業技術センターの高井幹夫さんが編、著者として名を連ね、カメムシ採取協力者に高知県関係者も多くいる。
 一般の人には「臭い」といった不快なイメージが強いが、図鑑では「宝石のような美しさ」が鑑賞できる。高知県だけで確認されているクロバズイムシハナカメムシや足摺岬に生息するヒメケブカカスミカメなども掲載している。
 図鑑発刊に言葉を寄せた日本昆虫学会名誉会員の宮本正一さんは「カスミカメムシ科はカオス(混とん)の世界だと言われていたが、日本でも400種以上も知られ、解明されてきた。これを示すのがこの図鑑だ」と絶賛。編者の川沢さんは「学術的に非常に価値の高い海外にも例のない図鑑ができた」と話している。
 全国農村教育協会の出版で、9,500円。

11/5 昆虫の世界体感 ムシテックワールド開館・須賀川

 昆虫を自然科学への窓口とした環境学習施設「ふくしま森の科学体験センター」(愛称ムシテックワールド)が1日、須賀川市大栗のうつくしま未来博会場跡地にオープンした。最大20キロワットの電力が得られる太陽光発電システムや、地上と地下の温度差を利用した地熱利用空調、シックハウスを起こさない貝殻粉末の塗装剤など、至る所に環境への配慮がなされているのも特徴。遊びながら、自然の神秘を体験できる。
 同センターの中心となるのが、昆虫をテーマにした体験展示室。トンボの視線を体験できるシミュレーターや、ミツバチの知恵を紹介するコーナー、巨大なフンコロガシの模型など、子どもならずとも、楽しみながら昆虫を取り巻く自然を理解できる工夫が随所に見られる。
 サイエンスステージや科学実験教室など、参加型学習プログラムが随時組み込まれるのも特徴。11月中はミニ実験ラボと題してマイナス200度という極低温や微生物のミクロの世界を見たり感じたりする特別メニューを用意、11日までは磁石の世界に誘うマグネット展も開催中だ。3、4日はパソコンでプログラミングされた虫型ロボットの競技会も開かれる。
 同センターは、須賀川市が建設し、財団法人ふくしま科学振興協会が運営。総事業費は約21億円。12月中旬には、本格的な飛行機の操縦体験ができる最新型フライトシミュレーターも導入される。
 入場料は大人400円、大学・高校生200円、小・中学生100円。工作費などは実費徴収。月曜日休館。
 問い合わせは、同センター0248(89)1120へ。

10/30 富山県八尾町「ホタルの舘」来春開館前に見学会

 来年4月に開館を予定する「ほたるの里農村公園・ほたるの館」の見学会は28日、八尾町三ツ松の同所で開かれ、大勢の家族連れ約300人が地域資源のホタルを心ゆくまで楽しめる施設を見て回った。
 「ほたるの館」には、ゲンジボタルやヘイケボタルの光跡を光ファイバーや発光ダイオードで再現した全国初の設備「ホタル・イルミネーション・ロボット」があり、来場者の注目を集めた。約2分ごとに周囲の明るさが変化し、ホタルの1日を短時間で楽しめるため、訪れた親子連れは興味深そうに見入っていた。このほか、ホタルの幼虫を常時放しておく水槽、ホタルが発光する仕組みなどを紹介したパネルなども目をひいた。八尾町仁歩地区に自生するカタクリやササユリなどの植物紹介、ホタルグッズの販売のほか、地元の主婦らが作る郷土料理が出されるレストランも設けられるため、関係者は「道の駅」としての役割も期待している。
 園内には、養殖ハウスやホタル水路、ミニ植物園などが備え付けられる予定で、施設全体は2003(平成15)年4月に完成する。

10/25 オオタバコガ、初の注意報 早期の防除呼び掛け

 熊本県病害虫防除所は22日、10月下旬以降から冬春作野菜や花き類に、オオタバコガによる被害が多発する恐れがあるとして、県内全域に注意報を出し早期の発見と防除を呼び掛けた。オオタバコガで注意報を発令するのは初めて。
 同防除所が菊池郡合志町に設置しているフェロモントラップ(におい成分を活用した捕獲器)で例年の3、4倍のオオタバコガを確認。10月中旬の巡回調査では、県内の主要なトマト産地で被害が出始めているという。
 オオタバコガは増殖能力が高く薬剤抵抗性も強いため、効果的な防除法は確立していない。幼虫は野菜や果物、花き類などの新芽やつぼみ、果実などを食い荒らす。1996(平成8)年ごろから発生が目立ち始め、県内でも同年と98年に被害が問題となった。
 同防除所は、今年の気象状況が発生数の多かった98年と似ており、被害の拡大や長期化の可能性もあるとして「畑をよく観察し、幼虫が葉のすき間や茎や果実の中に入り込む前の早期発見に努めてほしい」と注意を呼び掛けている。

10/23 地バチの巣の重さを競い合う 伊那市でコンテスト

 長野県伊那市地蜂愛好会(伊藤覚市会長)主催の地バチの巣コンテストが21日、同市の農業公園みはらしファームで開かれた。
 市内外の25人が計30点を出品。ハチの子の入った巣板の重さを競った。地中から採ってきた巣は大きな缶や植木鉢などに入れて育て、鶏のレバーや糖類を与えるなど、それぞれが大きくするために秘策を持っているという。
 ビニール袋や段ボール箱の中に入れて持ち込んだ巣から親バチをいぶし出し、自慢の作品を取り出すと、観客から「これはいいぞ」などと歓声が。優勝は同市羽広の農業白鳥利美さん(66)の5.1`で、3年連続。「今年はいいぞって、想像するのが面白くて」と白鳥さん。

10/18 西目町・浜舘公園にスズムシが群生

 桜の名所として知られる秋田県由利郡西目町の浜館公園で、地元の「西目町自然に親しむ会」(河本正徳会長)がスズムシの群生を確認した。野生か、あるいは飼育されていた虫が放されて繁殖したかは明らかでないが、県内では群生の確認自体が珍しいという。
 親しむ会のメンバーは先月16日、五城目町「スズムシの会」の一ノ関信伽(のぶか)さん(58=五城目町小池字岡本家ノ下、公務員)と一緒に現地調査を実施。単位面積(約3.3u)当たりで確認した匹数などから、同公園約14fのうち5f程度に総計2000匹が生息しているのではないか―と推測している。
 スズムシに詳しい県農業試験場の佐藤福男・生産環境部長によると、県内では数カ所で群生の情報はあるものの、確認した例は少ないという。スズムシは手入れの行き届いた草原に居着くとされ、「浜館公園が繁殖しやすい環境にあるということではないか。ただし純粋な野生か、人為的に放され繁殖したかの判断は難しい」と話す。
 県自然保護課によると、最近は飼育されていたスズムシが県内の沿岸部で生息範囲を広げつつあるという。
 しかし元中学校の理科教諭で地元に住む河本会長は「4、5年前からスズムシの鳴き声が多いことに気付いていた。仮に飼っていたスズムシが繁殖したとしても、これだけ広範囲に分布するには長い時間がかかる。そんなに以前から飼育する人がいたとは思えず、野生の可能性が高いのではないか」とみている。
 本県では五城目町森山周辺が「北限の群生地」として昭和35年に県の天然記念物に指定された。しかし草地の荒廃や除草剤の散布などにより生息数が激減。スズムシの会が人工ふ化・放虫による増殖活動に取り組んでいる。

10/9 洞くつ性ゴミムシの新種…紀伊丹生川ダム建設予定地付近で

ゴミムシの新種 国土交通省近畿地方整備局紀伊丹生川ダム調査事務所(辻山正甫所長)は1日、和歌山県紀の川の支流・丹生川に建設を計画している「紀伊丹生川ダム」(橋本市、九度山町)流域にある洞くつ調査の中間報告を発表した。報告によると、洞くつ内から、メクラチビゴミムシ属の新種1種が確認されたという。 同事務所は、3月に行った紀伊丹生川流域の環境(文化財)調査で確認された洞くつ(橋本市彦谷)について、9月2日までに計11回、専門家などによる調査を実施した。洞くつの形態・成因や、洞くつ内の生物・生成物の実態の把握が目的。
 今回の中間報告(第4報)では、洞くつ内で見つかった生物約30種のうち、10種が洞くつに依存している種と考えられるとしており、特に、国立科学博物館名誉研究員の上野俊一さんによると、中層部の石の下で見つかったメクラチビゴミムシ属の1種は新種だとしている。
 同調査事務所は「洞くつに依存している種は、保全対象として重要だと考えている」と話している。調査結果は、コウモリ類の冬季利用状況の調査などを継続した後、本年度中にまとめて公表する予定。
 動植物に詳しい田辺市秋津町、後藤伸さん(72)は「洞くつの中や土の中にいるため、詳しい生態などはまだあまり分かっていない。これから研究されていくもので、学術的に貴重な生物だ」と話している。

10/7 珍種ハネビロトンボ 佐世保・烏帽子岳で撮影成功

 長崎県佐世保市船越町の石岳動植物園の飼育係、真崎由夏さん(26=同市相浦町)が先月下旬、同市烏帽子町の烏帽子岳でハネビロトンボを見つけ、写真に撮影した。同市内で確認されたのは珍しいという。
 真崎さんは9月26日昼ごろ、烏帽子岳展望台付近で野鳥を観察中、見たことのない羽をしたトンボを発見。捕まえて写真を撮った。同僚で昆虫などに詳しい佐伯信吾さん(49)に見せたところ、ハネビロトンボ属のハネビロトンボと分かった。
 ハネビロトンボは羽の付け根が幅広く、黄色い模様があるのが特徴。佐伯さんによると、福岡県大牟田市や高知市に定着していることが分かっているが、それ以外の地域ではまれに見つかる程度。佐世保市でも過去に数回確認されているが、どのようなルートで同市に来たのかは分かっていないという。
 真崎さんは「これまでに見たことのないトンボだと思ったが、珍しい種類だと分かり驚いた」と話し、佐伯さんも「佐世保市内での観察記録が少ないだけに、貴重な記録になるかもしれない」と話していた。

10/4 釧路管内でオオアオイトトンボ初確認

 北海道釧路市内のアマチュア昆虫研究家、佐々木誠治さん(52)がこのほど、主に本州以南に生息するオオアオイトトンボを同市内で捕獲した。オオアオイトトンボは道南や道央では確認の公式記録があるが、佐々木さんは「釧路管内では初めてではないか」といい、注目を集めそうだ。オオアオイトトンボは体長4〜5cmで、暖かい気候を好むという。国内では本州、四国、九州地方を中心に生息し、道内でも函館や札幌周辺で確認されている。
 佐々木さんによると、今回の捕獲場所は釧路管内阿寒町の釧路市動物園内にある人工トンボ池周辺。23日、大型のイトトンボが飛んでいるのを見つけ、「珍種だ」と直感。翌24日午前10時から約4時間、捕虫網を持って人工池に張り込み、雄2匹を捕獲した。
 人工池の周囲には、同種のトンボがほかにも5〜6匹飛んでいたといい、佐々木さんは「偶然迷い込んだというより、人工池周辺に住みついている可能性が強い」とみている。
 人工池は1999年11月、釧路湿原の自然を生かした環境教育の場を目指し、同園職員らが手作りで掘った。昨年10月の調査では、トンボ13種が確認されている。
 昆虫研究者の飯島一雄さん(73=同管内標茶町)は「オオアオイトトンボは本州で普通のトンボだが、釧路周辺にはいないと思われていた。温暖化の影響で、南方系のトンボの生息域が広がりつつあるのでは」と話している。

9/27 名寄にシロアリ生息 北限分布図塗り替えか

 国内では北海蔵空知管内上砂川町付近が北限とされているシロアリが25日までに、名寄市内で確認された。屋外で越冬していた可能性が強く、専門家は「世界最北の生息地とみられ、学術的にも貴重」という。
 見つかったのは、同市内の木造住宅。床下の湿気対策調査をした害虫駆除会社が7月下旬に発見し、シロアリに詳しい京大木質科学研究所の吉村剛・助教授、道立林産試験場の森満範研究主任らが調査した。
 浴室付近の床下の土台部分に食べた痕跡を確認しただけで、シロアリ自体は見つからなかったが、住宅から約200b離れた屋外の資材置き場などでシロアリのコロニー(集落)を確認した。種類はヤマトシロアリとみられる。
 吉村助教授は「地球温暖化の影響も考えられるが、雪が断熱材の役割を果たし、越冬が可能になったのではないか」とみている。さらに「コロニーがあることから、名寄に自然分布したと考えていい。分布図は大きく変わる。稚内などにもいる可能性があり、広い地域で早急な調査が必要だ」と話している。
 当サイトは7月28日付けで、旭川市にも生息と既報。

9/21 松食い虫5年で根絶を

 沖縄本島中北部を中心に、松くい虫による松の立ち枯れが深刻化している問題で沖縄県は19日、松くい虫を5年間で根絶する「松林保全条例(仮称)」を制定する意向を明らかにした。骨子を1〜2ヵ月中にまとめ、来年2月の定例県議会に条例案を提出、4月1日の施行を目指す。
 2002年度から06年度までの6年間に約15億円の予算を計上し「松くい虫ゼロ」を実現する考えだ。県農水部によると、都道府県が松くい虫の「根絶」を目指して条例化するのは全国で初めて。
 松林保全条例の概要は(1)補助対象外地域での駆除作業に対する助成(2)松林の移動届け出制による、八重山・久米島などへの被害拡大防止(3)森林所有者の駆除責任の明確化(防除施策への協力義務)―など。
 現在、県内の保安林など高度公益機能森林905fには県が駆除命令を行い、国・県の補助で防除を実施。同森林の約10q以内に位置する地区保全森林2721fは市町村が補助を受けて防除している。
 問題になっているのは「その他松林」の8,652fで、森林所有者が自主的に防除しており、国庫補助対象にはなっていない。
 県は2000年度から「その他松林」被害対策事業を新設。01年度一般会計補正予算案にも防除対策費1億1千万円を盛り込んでいる。条例制定により、来年度以降も市町村が「その他松林」で駆除を実施した場合は助成していく考えだ。
 県によると、2000年度の県内の松食い虫被害は18,301立米、駆除量は9,160立米。防除事業費は3億8千万円だった。

9/17 スズメバチが大量発生

 岩国市にスズメバチの駆除依頼や相談が相次いでいる。13日までに寄せられた相談件数は97件と昨年同期を大幅に上回っている。発生数も多く、駆除業者は「高温少雨の気候が影響しているのでは」とみている。今月から来月にかけハチが過敏に反応する時期のため、市などは注意を呼び掛けている。
 スズメバチは体長3〜4aと大型で、茶褐色の腹部に黒い横しまがあるのが特徴。刺されると死亡するケースもある。
 市環境保全課への相談は、4月は例年並みの8件だったが、5月ごろから増え始め、8月は27件、今月は既に14件に上っている。3年前(47件)の約2倍で、昨年の98件も大幅に超えそう。
 同市南岩国町の無職白浜直美さん(69)は、自宅の軒下にできたスズメバチの巣の撤去を業者に依頼。ヘルメットに、防護服の業者は、直径約30aの巣の入り口から掃除機でハチを吸い取り、10分ほどで手際良く除去した。
 巣の中には約40匹の幼虫やサナギがいた。白浜さんは「大きなハチが飛び交っており不安だった。これで安心して過ごせます」と話していた。
 業者は高温で雨が少なかったため、ハチが大量に発生したとみる。一方で、「近年、宅地開発が進み、山地が切り崩されている。行き場を失ったハチが市の中心部にも巣を作るようになってきた」と言う。今月から来月にかけ、子育てなどでハチの活動が活発化する。市などは刺激しないで、連絡するよう呼びかけている。

9/14 松食い虫の緊急対策本部設置

 岩手県農林水産部は11日、年々拡大している松くい虫被害を防ぐため県松くい虫被害木駆除緊急対策実施本部(本部長・佐藤勝農林水産部長)を設置した。今月中旬から11月中旬を緊急実施期間に設定。市町村や林業関係機関などと連携し、県木南部アカマツを守る。
 盛岡市神明町の県競馬会館で開かれた会議には県や市町村、林業関係者ら約60人が出席。今後、関係する7地方振興局にも地方本部を設置する。
 県内の松くい虫被害は、1979年度に初確認されて以来増加傾向。昨年度は被害区域も23市町村に拡大して過去最悪の約3万6000立方メートルの被害量となった。
 本年度の被害量は6月現在で2万3431立方メートル。このまま推移すれば4万−6万立方メートルに達する恐れがある。
 県は今回の緊急対策を実施するため9月議会に約2億6000万円の補正予算案を提案する予定。2万300立方メートルの駆除を目指す。 この結果、本年度の予算総額は5億8000万円、駆除量は4万5000立方メートルになる見込み。
 被害地域は、程度によって「先端地域」「隣接地域」「高被害地域」に分類。先端地域と隣接地域は完全駆除が目標。高被害地域は拡散源となっている地域で重点的に駆除を行う。

9/12 ヤンバルテナガコガネが開発と密漁で危機

 不法採取の横行により、数の減少が危ぐされている国の天然記念物ヤンバルテナガコガネを守ろうと、行政、研究者、警察など17団体で結成された密猟防止協議会が10日、沖縄県国頭村内の生息地で初の合同パトロールを実施した。約40人が参加、過去に幼虫がかき出された木などを確認した。
 10日に実施されたヤンバルテナガコガネ不法採取の合同パトロールで、のこぎり状のもので切り裂かれたり、くぎが打ちつけられるなどの被害が確認された。
 いずれもイタジイの木で、一本は樹齢50年以上。窪みで生息していた幼虫を取り出すため、チェーンソーのようなのこぎり状のもので1b近く切り裂かれていた。樹齢60年ほどの木には、約3b上の窪みに上がるために打ち付けたとみられる5寸くぎ数本が確認された。
 パトロールの一行を案内した琉球大学の佐々木健志技官は「生息する樹木が伐採される森林開発と密猟が複合して影響し、危険な状態にある」と指摘。「ヤンバルテナガコガネは限られた条件の大木にしか生息せず、繁殖力は強くない。自分たちの財産として守ってもらいたい」と述べた。
 ヤンバルテナガコガネは1984年に新種として記載された、体長6aになる日本一大きなカブトムシ。一部のマニアの間で標本や飼育のため、また業者が売買のために不法で採取するケースがあるという。危機感を抱いた研究者のその防止を求める声を受け、7月に協議会が発足した。 

9/8 コシボソヤンマ採集

 県版レッドリストの絶滅危ぐ種1A類(ごく近い将来絶滅する危険性が高い)に分類されているトンボ目ヤンマ科のコシボソヤンマを、秋田県角館町の父娘が今月初め、同町内で採集した。トンボ研究家の高橋雅彌・秋田北高教諭は「県内では今、ほとんど確認されていないトンボで、全国的にも大変貴重」としている。
 発見し採集したのは角館町岩瀬字中菅沢の樺(かば)細工伝統工芸士・栗栖得三さん(50)と長女江莉加さん(15=角館中3年)。今月2日、同町八割の実家に迷いこんだヤンマが珍しい特徴をしていたため捕まえたという。その後、このトンボを高橋教諭がコシボソヤンマと正式に確認した。
 コシボソヤンマは体長約10a。他のヤンマと異なり腹の部分が細くなっているのが特徴。トンボに詳しく、江莉加さんの日ごろの理科研究活動をサポートしている栗栖さんは「この地域の自然環境がきれいなまま残っていることを、このトンボの存在が示しているのではないか」と話している。

8/25 ハバチの新種発見、白山で採取

 ハバチ類の専門家である石川県ふれあい昆虫館の富樫一次館長は、白山で採取したハバチの一種がヨーロッパでしか確認例のないヒナタラ属の新種であることを確認し、「ハクサンハモグリハバチ」と命名、近く学会誌に発表する。
 このハバチは今年5月中旬、白山山系六万山の標高1200b付近でウリハダカエデに付くアブラムシを採取中に偶然、雌雄の成虫2匹が見つかった。
 海外の文献を調べた結果、ドイツなどヨーロッパだけに知られるヒナタラ属の和名「アシグロハモグリハバチ」の仲間と分かったが、足の色や口部分の形などから新種と確認された。
 ヨーロッパのヒナタラ属の幼虫はカエデ類の葉にもぐりこんで歯肉を食べることから、富樫さんは「白山の新種も幼虫はウリハダカエデに寄生しているのではないか」と話し、今後も調査を続けることにしている。

8/23 配布予定のカブトムシ、羽化不調

 北海道滝川市が管理、運営する丸加高原(江部乙町)で昨年から飼い始めたカブトムシの羽化が、今年夏は極端に遅れている。現在、購入した幼虫2000匹のうち30匹程度しか成虫になっていない上、幼虫のまま死んだ個体も多く、関係者は「冷夏の影響だろう。地元の子供たちも楽しみにしていたのに残念だ」と話している。同市は昨年春、夏の目玉にしようと、カブトムシの幼虫2000匹を福島県の業者から購入し同高原施設内の飼育室で育て始め、約800匹が7月中旬から8月上旬にかけて羽化。夏のイベントで同高原を訪れた子供たちに無料配布するなどして好評を得た。今年春も、幼虫を同じ業者から購入し、同じ条件で育ててきたが、成長が著しく遅れ、羽化は8月中旬にようやく始まった。黒くなって死んだ幼虫が見られるほか、羽化しても、羽がきちんと伸びきっていない生育不全の成虫も目立つ。
 同高原を管理、運営する「市丸加高原健康の郷」の堀田喜久雄総支配人は「もう秋が近づいているので、これ以上の羽化はあまり望めないかも…。例年、最も気温が高くなる7月下旬から8月上旬にかけての低温が響いたようだ」と説明、来年以降は、飼育方法の再検討などを行うという。

 たかが昆虫と思うかも知れないが、その地域にはその地域の環境に適応した固有の遺伝子を持つカブトムシが棲息している。福島県の固有種を北海道に移籍するするのは無謀なこと。
 このカブトムシが在来のカブトムシと交配したら、生物界の微妙なバランスが崩れて、環境破壊につながる…

8/4 ホタルの科学館「めいじキララ」開館 養父町

 ホタルの魅力を伝える科学館「めいじキララ」が、ホタルの名所・兵庫県養父町奥米地に開館した。奥米地をモデルにしたジオラマに発光ダイオードを散りばめて光の乱舞を再現したり、ホタルの生態や光る仕組みを学べる。
 ホタルの世界▽光の科学▽ホタル物語▽奥米地の自然▽自然体験ガイド―の5コーナーで、ホタルの一生や保護対策を学べる。奥米地の四季パネルや終戦から現在までの環境年表も展示。150インチスクリーンのビデオプロジェクターを備えたシアター室では、ホタルや星空の映像を映写する。
 鉄骨2階建て延べ約600u。養父町が昨年10月から着工していた。総工費約1億8400万円。運営は地元に委託する。
 奥米地地区は1972年、ゲンジボタルの県自然環境保全地区指定を受けて、ほたるの里づくりを進めてきた。宿泊施設・ほたるの館や自然体験学習館めいじ、自然石の水路や天体観測拠点・星の広場などを整備してきた。
 めいじキララは午前10〜午後5時(予約で午後10時まで延長)。12月31日〜1月2日以外は原則として無休。大人500円、高校・大学生350円、小中学生200円。問い合わせはほたるの館TEL0796・65・0588

7/31 企画展「とんぼの文化誌」

三重県度会郡南勢町五ケ所浦の「愛洲の館」(川口祐二館長)で、企画展「とんぼの文化誌」が始まった。9月9日まで。
 トンボが日々の暮らしに登場することに着目し、企画した。写真や標本、化石をはじめ、トンボの図柄入りの陶器や着物、刀のつばやかっちゅう、図鑑など多数集めた。
 会場に入ってすぐに目に留まるのは、戦国時代のかっちゅう。かぶとの前立てには、長さ25aほどの金色のトンボが取り付けてある。トンボを「勝ち虫」といい、武士は好んで武具の飾りや紋様に取り入れていた、と解説が添えてある。
 川口館長は「人間がいかにトンボを愛しているかが分かり、大人も子どもも楽しめます」と話している。
 時間は午前9時から午後4時半まで(8月11〜15日は午後8時まで)。火曜休館。来月11日は午後6時から8時まで、入館者に限りお茶会を楽しめる。また同25日午後7時半からは、昆虫学者の石田昇三さんが講演する。
 入館料は大人250円。小・中・高校生は150円。問い合わせは同館(電話0599−66−2440)へ。

7/28 温暖化の影響か?北限を超え旭川でシロアリの成育確認

 これまで北限が空知管内上砂川町付近とされていたシロアリが、旭川市内でも生息していることが先ごろ、旭川市内の木材防虫処理業者により初めて確認された。シロアリは、木材の内部に巣くって建物に大きな被害を与える。専門家は「温暖化の影響とも考えられる。今後は旭川でもシロアリ対策を考えた方がよい」と語っている。
 シロアリが見つかったのは忠和地区にある25年前に建てられた木造2階建ての住宅。防虫処理業者が6月下旬、基礎部分のコンクリート表面に、地面から建物へ伸びる長さ約30aの粘土状のトンネル(蟻道=ぎどう=)を発見、その一部を壊したところ、往来するシロアリを見つけた。 専門業者は「採取したアリの中に働きアリと兵隊アリがおり、コロニー(集落)の形成が推測できる。旭川に生息しているシロアリであるのは確実」(村上竜仁・青山プリザーブ旭川営業所長)と説明する。 市内では28年前に一般住宅でシロアリの発見報告があった。専門家が調査した際は、家屋が改築後で生息確認ができなかった。これまでシロアリの北限は上砂川町とされており、札幌などでは住宅新築の際、防蟻処理が広がっているという。 旭川でシロアリが確認されたことについて、北海道生活害虫研究所の服部畦作所長は「アリの被害は羽根アリの存在で気がつくことが多いが、北へ行くほど羽根アリの発生は少なくなる。このため、旭川では見つかりずらかったのだろう」と話している。

7/26 アサギマダラのマーキング会

 前の羽が青色で後ろの羽が茶色のマダラチョウ科のチョウ「アサギマダラ」のマーキング会(宮崎昆虫同好会主催)は22日、宮崎県田野町の鰐塚山山頂であった。同会会員ら15人が、捕ったアサギマダラの羽に印を付けた。
 アサギマダラは国内では北海道南部から沖縄までの山間部などに生息。季節によって移動するチョウとして知られる。移動距離が長く、大阪でマーキングしたチョウが約1600`離れた沖縄県の与那国島で確認されたこともある。
 会員や会員の家族らは虫捕り網を手に「フワフワ」と飛び回るアサギマダラ36頭を捕まえた。羽に黒の油性ペンで自分の持ち番号と鰐塚山を意味する「ワニ」を記入。記録用紙に性別や前の羽の大きさなどを書き込んだ後、空に放した。
 同会の氏川豪勇幹事は「これまでに本県で約4000頭のマーキングをしたが、1頭も確認された例がなく、移動生態が分からない。見つけた人は、ぜひ県総合博物館に連絡してほしい」と話していた。

7/19 珍しいリュウキュウムラサキ飛来

 徳島県那賀川町みどり台の出島野鳥園で、同町工地、船員宮本勇さん(47)が県内で年に1〜2頭しか採取されないチョウ・リュウキュウムラサキを発見した。14日、野鳥を観察中に羽を休めているのを見つけ写真に収めた。
 広げた羽の大きさは約6aで、県立博物館の大原賢二自然課長によると雌。前羽の白い模様の並びからチョウはフィリピン型で、後ろ羽の白い模様から同国中南部に生息しているとみられる。
 県内では、秋に見つかることはあるが、夏場は極めて珍しい。同国中南部から梅雨前線の北上などに伴って飛来してきたものとみられる。 リュウキュウムラサキはタテハチョウ科に属し、沖縄以南の東南アジアに生息。生息地ごとに大陸型やフィリピン型など5つに分類されている。行動範囲が広く、県内にも迷チョウとしてわずかに飛来する。
 大原課長によると「後ろ羽の白い模様は日本国内で他の型と交配したものには見られないことから、フィリピンから直接飛来してきたものと考えられる」と話している。

7/18 ヤンバルテナガコガネ不法採取で激減

 国指定天然記念物で、沖縄本島北部だけに生息する日本最大のカブトムシ・ヤンバルテナガコガネが不法採取されていることが16日、環境省が委託したヤンバルテナガコガネ研究会(代表・東清二琉大名誉教授)の調査報告で分かった。東名誉教授は「正確な個体数は把握されていないが、発見された1980年代半ばから激減していることは確か。最も大きな要因は不法採取だ」と、防止策の重要性を指摘している。
 これを受ける形で同日、国や県、市町村、警察などが参加し「ヤンバルテナガコガネ密猟防止協議会」を発足させ、国頭村で初会合を開催。合同パトロールの実施やポスターを作製することなどを決めた。
 調査は国の保護増殖計画の一環。現状把握のため今年1月から3月まで北部の生息地で実施。84、85年に県教育庁、95年に環境庁(当時)が行った各調査で生息が確認された樹木を中心に行われ、対象となる6本の木を確認した。
 このうち1本に、まだ生息していることが分かり、後日、具体的な生息調査に乗り出そうとしたが、既に持ち去られていたという。このほか別の6本も倒されるなど、不法採取とみられる痕跡が確認された。
 ヤンバルテナガコガネは一部のマニアが標本にし、売買されるケースもあるという。東名誉教授は「ヤンバルテナガコガネは約4年間の生息期間に10匹程度しか卵を産まず、繁殖力が弱い。道路建設などの開発によっても個体数は減るが、不法採取は決定的な要因」と強調。同研究会の報告書に、関係機関による「密猟防止協議会」設立の必要性を盛り込んだ。

7/13 トンボを通じ「環境読本」づくり

 大館自然の会(明石良蔵会長、会員182人)は、秋田県大館市内に生息するトンボを通じて自然環境の保全と復活を考える「環境読本」づくりを進めている。2年後の発刊を目指した息の長い取り組みで、会員らが分担して写真撮影や解説文の執筆にあたる。
 読本は同市内で確認されている約40種のトンボを写真で紹介。ほかに、市民の森(同市比内前田)のトンボ公園で観察した食物連鎖(オタマジャクシ―ヤゴ―イモリ―カエル―ヘビ)の様子や、市内のトンボ生息地の環境などを写真と文で紹介する予定。
 編集を担当するのは8人の会員で、多くは元学校教諭。現在はトンボの写真撮影が進行中で、今後、同市内各生息地の撮影に取り掛かる。完成した読本は、同会が開く自然観察会などで使うことにしている。
 読本の製作費用には、全労災(本部東京)からの助成金50万円を充てる。同会は、市民を対象とした観察会開催などを通じて自然保護の啓発活動に取り組んでおり、全労災が環境保全活動などに助成していることを知った明石会長が申請し、先ごろ認められた。
 明石会長は「環境問題は、まず水に表われる。トンボは水や空気と密接な関係にあり、住民にも身近な存在なので、焦点を当てることにした」と話している。

7/3 毛虫大発生、紅葉山ピンチ

 大型の毛虫で、山林のほとんどの植物を食い荒らすマイマイガの幼虫が、新潟県佐渡島内で大発生している。畑野町の紅葉山公園では、5、6aの毛虫がモミジにむらがり、葉っぱを食い尽くされた枝もある。このため、「毎年見事な秋の紅葉が大変なことになる」と心配する声も出ている。
 全国に分布するマイマイガは、ドクガ科のガで、羽を広げると8センチ近くになる。4月から7月までの毛虫のときは、太い毛が体中に生え、全体に赤みがかっているのが特徴。名前と違って毒はないが、食欲おう盛で100種類以上の植物の葉を食べるため、林業上の害虫に指定されている。大発生はほぼ10年間隔。島内でも約10年ぶりの深刻な状況になった。

6/27 オオムラサキの羽化最盛期 群馬県大間々町

  市民グループと連携してチョウの飼育、保護活動に取り組んでいる大間々町塩沢の農業、木村八郎さん(76)方で、オオムラサキの羽化が最盛期を迎え、さなぎから国蝶が生まれるドラマチックな瞬間を見ようと連日、朝から昆虫ファンらが訪れている。
 木村さん方では先週、今年初めてのオオムラサキの羽化が確認された。
 防護用ネットで囲った飼育ハウスの中。エノキの葉に付いた、透き通ったさなぎの背が割れ出し、体が完全に出るまで約3分。梅雨の合間を見計らうように、早朝の晴れ間に変態することが多いという。
 羽化したばかりの成虫はまだ羽が弱々しい。飛び立つまでに数時間から半日かかる。それでも、美しい青紫色の姿は“森の妖精(ようせい)”と呼ぶにふさわしい。
 木村さん方周辺では1992年、オオムラサキの生息が確認された。それ以来「群馬国蝶オオムラサキの会」(事務局・前橋市、阿部勝次会長)など市民グループの支援を受け、飼育、保護が続けられている。今年は7月半ばまで、雌雄合わせて200匹ほどが羽化する見込み。
 見学希望者は、木村さん方(電話0277・73・2143)へ。

6/27 全市町村にホタル呼び戻せ 岐阜県

 岐阜県は新たに「ホタル楽園ぎふ」づくりを打ち出し、2005(平成17)年度までを目標に、県内の全市町村で蛍が舞う良好な自然環境の創出を目指している。蛍を“指標”として、身近な自然環境に対する県民の保全意識を育んで行く。
 県の2000年度調査によると、県内85市町村(262ヵ所)で蛍の生息が確認されている。調査を開始した98年度は80市町村(235ヵ所)、99年度は83市町村(248ヵ所)と、蛍の保護育成活動などの効果もあって生息分布は拡大しているという。
 県は本年度から更新した県環境基本計画(5ヵ年計画)の中に、最終年度の2005年度までに県内の99市町村すべてでの蛍生息を目標として盛り込んだ。
 県では、蛍の生息分布マップによる情報提供や蛍の保護育成リーダーの養成講習会、蛍の生息に適した水辺環境整備などを進め、生息が確認されていない残る14市町村をはじめ、県内の全市町村で蛍が見られる「ホタル楽園ぎふ」を実現したいとしている。

6/22 オニヤンマの里完成 福島県岩瀬村

 須賀川市の会社社長安積清美さん(55=同市向陽台918の2)がオニヤンマの羽化を子どもたちに見せたいとの願いを込め、岩瀬村町守屋に手づくりで「いわせ オニヤンマの里」を完成させ、ヤゴが次々と羽化している。トンボや昆虫が大好きで3年前、村の人から減反の田んぼを借り、池などを整備。ヤゴがえさを食べる様子や神秘的なオニヤンマの羽化を観察できるようし、無料開放している。「長時間の羽化に立ち会えば、我慢や命の尊さを感じてもらえる」と期待している。
 三春町出身の安積さんは小さいころからトンボや虫と遊び、興味を抱いてきた。トンボがどのように飛び立つのか研究したいとの夢を持ち、5年ほど前からヤゴを羽化させる場所を探していた。
 3年前、岩瀬村町守屋の減反水田約20eを借りることができ、整備を始めた。仕事が終わると郡山市三穂田町の会社から現地まで通い、池を掘り、池の上を歩けるよう足場をつくった。ヤゴを放して羽化させる場所にパイプを組み、羽化したトンボを少しの期間、観察できるようネットを張った。
 自然の中で育ったヤゴを探し毎年、少しずつ敷地内に放した。3年目の今年は本宮町の側溝にいたヤゴ約100匹を運んできた。側溝の上に鉄製の格子状のフタがかかっている場所でトンボになっても飛べず、死んでしまうため救出した。
 オニヤンマのヤゴは4、5年間、砂の底にもぐって生活するといわれ、4、5aに成長すると羽化する。「オニヤンマの里」では今月中旬から羽化が始まっている。

6/17 タガメふ化に成功 牧丘一小児童

 絶滅が心配されている水生昆虫「タガメ」のふ化に、山梨県東山梨郡牧丘町の牧丘一小(七沢徳雄校長)の児童が成功した。タガメは、環境庁が出したレッドデータブックで、絶滅の危険が増大している危急種に挙げられている。児童たちは、昨年から総合的な学習の時間を使い、校内のビオトープで飼育に取り組んできた。最初のふ化は6日朝。児童たちの登校を待っていたかのように、父タガメが見守る中で、約80個の卵塊から、花が開くように透き通った黄色い子タガメたちが飛び出した。50匹の幼虫が水槽の中を元気に泳いでいる。

6/15 ハビロキンヘリタマムシの生態一部解明

 長野県南佐久郡川上村御所平の自営業由井一昭さん(44)がこのほど、同村内でタマムシの一種「ハビロキンヘリタマムシ」の生態の一部を解明し、近く発刊の専門誌に発表する。ハビロキンヘリタマムシは全国でも発見例が極めて少なく、生態は未解明だった。ごく限られた地域にしか生息しない可能性もあり、専門家からは「保護策が必要」との声も出ている。
 ハビロキンヘリタマムシは、体長が雄で13_、雌が14_ほど。1953年に新種として発表された。由井さんによると川上村で過去少なくとも4匹見つかったほかは、群馬、岩手県で計3匹発見例があるだけ。
 由井さんはこれまでの目撃例からハルニレの木周辺での生息を推測。入手したハルニレの伐採木の中から羽化したため、同村梓山地区で、その木が立っていた隣のハルニレ2本を昨年6月25日から8月10日までほぼ毎日観察した。
 その結果、14匹を確認。主に高温で風のない日に活動することや、成虫は地上から13b以下には降りず一生を高所で過ごす可能性が高いことなどが分かった。
 ハルニレが発生木であることもほぼ特定できたとする。ただ、同地区以外のハルニレで生息は確認できなかったといい、「きわめて限られた地域にしか生息しないのではないか」とみる。
 信大理学部の藤山静雄教授
(昆虫生態学)は「常時生息が確認できるのは、全国でも川上村だけではないか。さらに調査を進め、保護策を考える必要があると思う」と話す。羽に金色の光沢があることから、由井さんは「マニアの採集の標的になると生態が維持できるか心配」と懸念している。

6/11 チョウセンアカシジミの食樹トネリコ培養に成功

 岩手県滝沢村滝沢の盛岡農業高(紺野清夫校長、744人)の生物工学科3年生22人は、バイオテクノロジーによって絶滅寸前の天然記念物チョウセンアカシジミの食樹であるデワノトネリコの組織培養に成功した。同樹木の培養は国内外にも例がない。昨年から研究に取り組む生徒らはこれらを生息地に移植し、たくさんのチョウが舞う日を夢見ている。
 デワノトネリコは、かつて沢や湿地に多く自生していたが、河川や道路の改修工事、農業の機械化により激減、チョウの生息域も狭まった。 今回成功したのはデワノトネリコのわき芽の成長点(0.3〜1_)を採取し、試験管内で育てる技術。挿し木の活着率が低い同樹木の量産につなげるのが狙い。培養班の羽沢良太君、入沢順平君、昆亮輔君の3人が昨年8月から試行錯誤を重ねてきた。
 試験管内で同樹木に適した培地の素材など探った結果、無機塩類と有機物を抑えるなど、栄養価を落とした方が育ちやすいことが分かった。
 羽沢君は「卒業までにできるだけ大きく育て、雫石町や県内の生息地に移植したい」と夢を広げる。
 同校の活動を応援する雫石町教委の千葉昇社会教育係長は「若い人たちが取り組んでくれ頼もしい。食樹は古いと卵が付きにくく、若い木がたくさん欲しい」と大きな期待を寄せている。
 つくば市にある農水省森林総合研究所生物工学領域室の石井克明室長は「チョウセンアカシジミの救済に向けたデワノトネリコの培養は国内外でも例がない。環境保持に向けた素晴らしい取り組みであり、応用できるまで継続してほしい」とエールを送る。日本林学会への発表も勧めている。
 生徒らは、岩手日報に掲載された保護活動の記事がきっかけとなり、チョウセンアカシジミの保護を共通テーマに設定。昨年度から雫石町教委や、小岩井農場などの協力で町内の卵や食樹を分けてもらい▽チョウの繁殖▽食樹の培養▽普及活動−の3班で取り組んできた。
 成果は7月4、5の両日、同校を会場に開かれる県学校農業クラブ連盟大会で発表される。

6/9 ナスの受粉に蜂を活用

 マルハナバチによる受粉栽培を行っている、岐阜県海津郡海津町高須、伊藤宗人さん(49)のビニールハウスでは、ハチによるナスの受粉が追い込みの時期を迎えている。受粉作業は10日ごろまで続き、ハウスものの出荷は7月上旬まで続く。
 マルハナバチは花粉などをえさとしており、花粉を求めて花弁を動き回る間に受粉できる仕組み。トマト栽培では一般的だが、ナス栽培では注目され始めたのは3年ほど前から。岐阜県内では昨春、伊藤さんのハウスで初めて試験導入され、今春から本格的に始めた。
 伊藤さんは3月下旬から約20万円で約400匹のマルハナバチ(ベルギー産)を購入。6月上旬までの約4ヵ月間、約25eのハウス内に放った。人件費がかからない上に、ハチに害を与えないため農薬散布を抑えるため、無農薬野菜として消費者の安心にもつながるという。
 伊藤さんは「天敵農薬は高価だが、無農薬野菜を届けたいから」と話している。

6/1 プライヤキリガ大発生

 幼虫の時期に照葉樹のアラカシ(ブナ科)を食べるプライヤキリガ(ヤガ科)がここ数年、和歌山県紀南地方の山間地で増えている。特に自然林が広がる古座川町や熊野川町では顕著。南紀生物同好会副会長の後藤伸さん(71)田辺市秋津町は「昆虫が付くのは弱った樹木。森林荒廃の前触れといえるだろう」と危ぐしている。
葉を食べる幼虫は体長約5aで、黄色と黒の筋模様が特徴。今年は4月下旬から出現し、5月に入って大発生。中旬にはさなぎになったが、幼虫が付いた木の下では、葉を食べるザワザワという音が響き、糞がポタポタと落ちるほどだった、という。早いものでは既に羽化しているという。
 この事態を危ぐする後藤さんは、「プライヤキリガの大発生の後、1998年からキクイムシ類の発生も目立っている。どちらも自然林が広がる紀伊半島の南部で顕著だ。これは樹木が弱っているから。乾燥化で、森林が荒廃しつつあるといえる」と話している。
 プライヤキリガ 成虫は開張38〜40_。オス、メスともにうす茶色だが、触角に違いがある。初夏に発生した後、仮眠し秋に再び発生する。分布は本州や四国、九州。 後藤さんによると、1985年から異常な大発生が続いている。紀南地方でも場所によって違うが、毎年のように大発生している所もあれば、数年に一回発生している地域もあるという。
 古座川町でも目立っており、ガとチョウを採集し調べている南紀生物同好会の谷幸子さん
(52)古座川町池野山によると、今年はこれまでで一番の大発生という。

5/30 カトリヤンマが大量羽化

 秋田県大館自然の会(明石良蔵会長)が、同市比内前田の市民の森に造ったトンボ公園で、カトリヤンマが数多く羽化している。県の絶滅危ぐ種に指定されている希少種。数年前から確認されていたが、今年は目立って多くなり、明石会長は「大切に見守っていく必要があると思っている」と話している。
 カトリヤンマは、県版レッドリストの絶滅危ぐ種TA類。体長は7aほどでヤンマの仲間のうちでは中ぐらいだ。明石会長によると「名前の通りカをエサとするため、たそがれ時や朝方などカが出るころに行動するようだ」という。
 トンボ公園では2〜3年前から見られるようになったが、その数は20〜30匹程度。今年は28日までにヤゴの抜け殻を98も確認。池に設置してある止まり木などに残っている。
 28日は午前5時半ごろ、池の外側の草むらで羽化を確認、撮影に成功した。羽化直後は体の色も薄く、羽は閉じたまま。時間とともに色が濃くなる。徐々に羽を開き体を動かし始めたのが6時5分。2分後に林の中へ飛び去った。
 羽化は普通、沖縄で6月上旬、東海地方で7月中旬。さらに北のトンボ公園では7月下旬から8月上旬にかけてだったが、今年は早い。
 明石会長は、羽化数が増えたことを喜びながらも「今年はどういうわけか、時期がずれている。急に暖かくなった。羽化に関係するといわれる積算温度と呼ばれる数値や、ここ数日の好天で池の水温が上がったからかもしれない。異常気象に関係があるかも」と話している。
 トンボ公園は市民の森キャンプ場の奥に位置する。自然環境復元をめざす運動の一つとして自然の会などが7年度から造成に着手。休耕田だった一帯を利用して、さまざまな種類のトンボが生息しやすいように深さや水草の違う10種類の池をこれまでに造った。
 現在では、年間を通して27〜28種が見られる。今年もすでにシオカラトンボなどが確認されている。

5/28 害虫駆除に新たな可能性、植物内微生物を発見(石川県農業短大グループ)

 石川県農業短大農業資源研究所の古賀博則教授の研究グループは、野菜などの作物を食い荒らす害虫「ネキリムシ」の駆除に効果があるエンドファイト(植物内生菌)を西シベリア原産の芝草から発見した。農薬を使わない害虫駆除の道が広がる可能性があり、同グループは他の害虫への影響や効果的な栽培方法などの研究を進める。
 エンドファイトは植物の細胞の間に共生する微生物で、感染した植物は病気や乾燥、害虫などへの抵抗力を備える。農薬を使わず、低コストで安全な農作物の生産が可能となることから、古賀教授のグループが研究を進めている。
 今回発見したエンドファイトは寒地型の「トールフェスク」と呼ばれる芝草にあった。同大がバイカル湖周辺の環境保全で共同研究しているロシア・イルクーツク国立農業アカデミーから送られてきた種子八種中の一種に認められた。
 エンドファイトと共生した芝草と、共生していない芝草にネキリムシを入れて観察したところ、共生していない苗だけを食い荒らした。また、共生した苗の根にネキリムシを放すと遠ざかる現象も見られた。
 実用化については研究段階だが、生命力の強いトールフェスクの特性を生かし、根だけを他の作物の根に絡ませて防虫効果を上げるなどの方法も考えられる。
 同グループでは、県農業総合研究センターと共同で他の害虫への効果などの研究を進めており、古賀教授は「トールフェスクは西シベリア原産で、他にも効果がある品種が多いと考えられる。種子を取り寄せて調べたい」と話している。

5/25 花巻・松食い虫監視の情報ネット

 拡大する松くい虫被害を食い止めようと岩手県花巻地方振興局(佐々木正勝局長)は23日、被害状況を迅速に収集する情報ネットワークの整備に取り組み始めた。同地方は岩手県被害の北限とされる重点駆除地域。これまで林業関係者だけに頼っていたパトロールを行政関係者全体に広げ「監視の目」を拡充する。
 情報ネットワーク(通称・松を守ろうネットワーク)は、林業関係者に加え、花巻、東和、石鳥谷、大迫の1市3町と振興局の職員、鳥獣保護員、道路パトロール員、河川管理補助員など約1,080人で構成する。
 同振興局と大迫町で23日行われた研修会では、メンバーが被害木と健全なアカマツとの見分け方や通報、駆除システムを確認。今後は他の自治体でも開催し、ネットワーク構築を急ぐ。
 岩手県の松くい虫被害は昨年度、約32,000立方メートル。過去最悪だった前年度の約21,300立方メートルを大きく上回った。北限とされる花巻市のほか石鳥谷、紫波町にも新たに被害が発生した。
 県はこれまで、花巻市と東和町の南側山林に延長約30`、幅約2`の松くい虫被害防除監視帯を設定。監視員を配置するなど新たな被害拡大を防いできたが、昨夏の高温小雨の影響で北上を抑えきれなかった。
 ネットワーク整備により、これまで被害パトロールにあたっていた被害監視員48人から約13倍に監視体制を拡充するほか、行政内の縦の枠組みを超え多角的に情報収集。1市3町の広大な「監視地域」で被害撲滅に向けて取り組む。
 被害の多くは南部赤松。同振興局は、昨年度の被害は住宅用製材(40坪)に換算して600棟分の損失と試算。佐々木局長は「拡大を防ぐには被害木の早期発見が第一。なんとかこの地域で食い止めたい」と住民からの情報提供も呼び掛ける。

5/21 ゴキブリも鼻炎の原因

 くしゃみや鼻水などの症状が出るアレルギー性鼻炎が、花粉やダニだけでなく、ガやゴキブリなど身近な昆虫によっても引き起こされることが、秋田大医学部付属病院や静岡県の県西部浜松医療センターなど20施設が参加した全国調査で分かった。ぜんそくがユスリカなどでも起こることは明らかになっているが、昆虫がアレルギー性鼻炎の一因であることが確認されたのは初めて。17日から福岡市で始まった日本耳鼻咽喉(いんこう)科学会で発表された。
 20施設でつくる研究班は昨年夏、計560人の患者を対象に、ゴキブリのふんやガの体を覆っている鱗粉(りんぷん)など13種の抗原に対する抗体が血液中にあるかどうかを検査した。
 室内のちりに対しては66%、スギ花粉には57%の患者が抗体を持ち、昆虫に対してはガ33%、ユスリカ16%、ゴキブリ13%という割合だった。秋田大医学部付属病院から送られた血液検体は15。この中でも25%程度にゴキブリの抗原に対する抗体があり、ユスリカとガの抗体も10%以下だが見つかった。
 研究班は、昆虫のエキスをろ紙に浸して患者の鼻に入れ、くしゃみや鼻水の症状を確認したところ、抗体量の多い患者のうち62%がガで、44%がゴキブリでそれぞれ反応を起こし、アレルギー性鼻炎の原因になることが確認された。
 ガやユスリカの増える秋には、抗体を持つ患者も増え、昆虫によるアレルギーにも花粉のような季節性があることも分かった。
 研究班長の奥田稔日本医大名誉教授(鼻科学)は「夏はゴキブリ、秋はガとユスリカの影響を軽視できない。自分で花粉症と思っていても昆虫が原因の可能性があるので、検査を受けた方がいい」と話している。
 研究に参加した秋田大医学部付属病院・耳鼻咽喉科の本田耕平助手は「昆虫の抗原に対する抗体保有者には、花粉など別の抗体を重複して持っている人が多い。昆虫の抗体がどの程度症状にかかわっているのかについては、今後精査が必要になると思う」と話している。

5/18 飼育ホタルが発光、飛び出すのも間近 龍神中学校

 水槽でホタルを飼育している和歌山県龍神村湯ノ又、龍神中学校(久保博是校長、31人)で、さなぎから育ったホタルの成虫が発光をはじめ、飛び出すのも間近と期待に胸を膨らませている。
 同校は昨年から、身近な環境について考え、ふるさとを思う心を育てようと、ホタルの飼育に取り組んでいる。
選択理科の授業で、当時3年生の松阪晃宏君と中小野一八君の二人が、山崎学教諭の指導で飼育に挑戦。
昨年6月、捕獲したゲンジボタルの♂30匹と♀2匹が飼育箱で無事に卵を産み、20匹近い幼虫が育った。
 その後、移し替えた水槽(60a×30a×25a)に、砂利や小石を入れて高さ約10aの土手を作った。
この春には、幼虫が土中に入ってさなぎとなり、5月初めに土まゆを作り、16日までに水槽のガラス越しに体長約1aの黒っぽいさなぎと、羽が伸びて成虫の姿になった個体をそれぞれ1匹ずつ確認している。
 発光を始めたのは2〜3日前から。全校生徒にも観察できるようにと、紙に丸い穴を開けて水槽に張り付けている。同校は「ホタルが水槽内を飛ぶのが楽しみ。今後、自然の川に帰すかどうか考えたい。観察記録をさらに充実させるため、2年目の飼育に挑戦したい」と話している。今年は9人の生徒が先輩から受け継いだホタルの飼育に取り組む。

5/17 ホタル800匹乱舞 鹿児島県鹿屋・下祓川…カワニナ放流が奏功

 鹿屋市下祓川町の池田病院敷地内の用水路で、ゲンジボタルが淡い光の舞を見せ、患者や見物人らを楽しませている。同市西原2丁目の「ホタルと水と緑を守る会」の小牧正男会長(68)が、8年前にホタルとエサになるカワニナを放流。5年ほど前から800匹前後の乱舞が見られるようになった。
 毎年この時期、小牧さんと妻の律子さん(64)が現地の管理をしながら、訪れる見物人らにホタルの生態などを説明している。
 話を聞いて訪れた鹿屋体大2年の白石香織さん(19)と佐伯悠子さん(19)は、「小牧さんの説明で、約10日の短い生涯を精いっぱい生きていることが分かり感動した。きれいなだけではなく、命の大切さも教えられた」と光跡を追っていた。
 小牧さんによると、観賞できるのは20日ごろまで。同病院では午後7時〜9時まで一般に開放している。

5/16 長野市・大峰城の「チョウ博物館」年度内に閉鎖へ

 長野市が管理する箱清水の大峰城内にある「チョウと自然の博物館」が、本年度中にも閉鎖される見通しであることが14日分かった。年間入館者が開設当時の20年前に比べて十分の一以下に激減。施設運営が毎年大幅な赤字になっていることが大きな理由だ。ただ、市観光課によると、約1300種、約3000点に及ぶチョウの標本を新たに展示する場所は見つかっていない。
 同博物館は、市街地を見渡す標高約830bの大峰山頂近くに市が復元した城内にある。業者に委託して収集した世界のチョウの標本を展示する。県教委によると、東北信地方では最大のチョウの博物館という。
 市観光課によると、開設した81年度は約54,500人の入館者があったが、その後は減少続き。クワガタやカブトムシの標本を集めた特別展を開いた98年度は前年度比2倍余の約2万人となったが、その後も落ち込みに歯止めはかからず、昨年度は5,400人にとどまった。冬期(12〜3月)は閉館している。
 特別展を開いた98年を除くと、入館料は年間百数十万〜300万円強止まり。これに対し運営費は年間500〜700万円かかっており、残りは市が持ち出す恒常的な赤字施設になっている。
 市観光課は「入館者の減少が止まらないため、閉館はやむを得ない」と説明。市立博物館(小島田町)や市立科学センター(上松)を所管する市教委に新たに展示するよう打診しているが、「スペース確保が難しい」などとして難色を示されている。同課は「どちらかの施設が受け入れるよう働き掛けていきたいのだが…」と話している。

5/12 農家がマメコバチ感謝祭

 第10回マメコバチ感謝祭が8日、青森県板柳町の多目的ホールあぷるで開かれ、町内のリンゴ農家らがリンゴ受粉の省力化に活躍しているマメコバチに感謝し、今年の豊作を祈願した。
 マメコバチによる受粉は同町横沢地区が県内の先駆けとして取り組み、普及した。感謝祭ではマメコバチへの感謝と、リンゴの豊作、農家の作業安全を祈願する神事を行った。舘岡一郎町長が「輸入リンゴが入ってくるなど厳しい生産競争にうち勝つためにも、マメコバチの管理を徹底し、高品質で安定した収穫ができるよう努力してほしい」とあいさつした。
 会場では県リンゴ協会の加川幸男専務理事が「オーストラリア・ニュージーランドのりんご事情」と題して記念講演したほか、手作りアップルパイコンテストや町民大懇親会も行われ、「リンゴの里板柳町」の交流を深めていた。

 マメコバチはミツバチより小型の蜂で、動きがミツバチより早いため、受粉スピードもミツバチの1.5倍も早い。
マメコバチは集めた花粉で花粉団子を作って、茅や葦の随に貯めて産卵。幼虫はその花粉団子を食べて育つ。青森・秋田県のリンゴ園では作業小屋の軒先に、30aほどの茅や葦をびっしり詰めたリンゴ箱を積み上げているが、これはマメコバチの産卵舎である。

4/27 長岡京市の西山一帯を「チョウの森」へ

 絶滅の恐れがあるチョウの希少種を保護しようと、京都府長岡京市の西山で「チョウの森」がつくられている。希少種が好むナラガシワやクヌギなどを育て、生息しやすい環境を整える取り組み。現在、地元財産区や農家から土地提供の協力を得て、樹木の育成が進んでいる。 森づくりに取り組んでいるのは「乙訓の自然を守る会」を中心とした乙訓地域の自然保護団体3団体、約30人。 豊かな自然が残る西山は、府内有数のチョウの生息地として知られている。府内では数ヵ所しか確認されていないウラジロミドリシジミや、環境省がレッドリストで準絶滅危ぐ種に指定しているオオムラサキもすんでいる。
 だが近年、同地であぜ道の整備や市の総合公園建設が進んだことなどから、ナラガシワなどの樹木が姿を消し、その影響でチョウが激減した。今では一部の池周辺にわずかに残るのみという。このため会員らは希少種がすみやすい環境の復元を目指して3年前から「チョウの森」づくりを始めた。
 チョウの幼虫は種類によって食べる特定の植物が決まっている。計画はこの特性を利用して、ナラガシワやクヌギ、エノキなどを育成し、希少種を呼び寄せるという。
 会員らは西山山ろくの同市粟生地域に地元財産区から約300uの土地を借り、これまでに約50本を植樹した。早いものは高さ約1bに成長している。今年に入り、地元農家から付近に約400uの土地を借り受け、新たに約50本を植樹した。その後も除草や啓発看板を設置して、成長を見守っている。
 会の宮崎俊一代表は「3年後には木が育ち、チョウの楽園ができるのでは。将来は森を西山一帯に広げたい」と夢を広げている。

4/25 「県版レッドリスト」にチョウ目3種選定

 秋田県は23日、絶滅の恐れのある動植物のリスト「県版レッドリスト」の第3次分として、昆虫類に関するリストを発表した。絶滅種にチョウ目のチャマダラセセリ、オオウラギンヒョウモン、カバシタムクゲエダシャクの3種を選定、絶滅危ぐ種にはコウチュウ目13種とチョウ目57種の計70種を選定した。
 今回の昆虫類のリストで県内の大まかな選定は終了。県は来年3月までに「県版レッドデータブック」を正式に作成する。
 県自然保護課によると、チャマダラセセリは羽を開いた全幅が約3センチ。茶色のまだら模様の羽を持ち、バラ科のミツバチグリ、キジムシロなどが生える採草地に生息する。オオウラギンヒュウモンは全幅約6センチで、豹(ひょう)柄の羽を持ち、スミレ科の草類が生える採草地に生息。この2種はチョウの仲間で、チャマダラセセリは1971年に鷹巣町で、オオウラギンヒョウモンは同年に仁賀保町で生息が確認された後、姿は確認されていない。
 カバシタムクゲエダシャクはガの仲間で、海岸や河川敷に生息。50年代に秋田市の太平山近辺で確認されたものの、それ以降は発見されていない。
 これら3種はいずれも今年3月、県内の昆虫専門家などで構成する選定委員会で、「生息地が予想できるにもかかわらず、過去30年以上未確認」であることが報告された。
 このほか、絶滅危ぐ種はチョウ目でTA類が17種、TB類が23種、U類17種、コウチュウ目はTA類4種、TB類4種、U類が5種選定された。TA類はごく近い将来に野生での絶滅の危険性が極めて高いもので、TB類はTA類に準じて絶滅の可能性のある種。U類は絶滅の危険性が増している種。
 県のレッドリストは、環境省のレッドリストに準じて、平成10年度から3年計画で選定作業を開始。10年度は植物や淡水魚、水生昆虫、11年度はほ乳類、鳥類、両生類などのリストを選定してきた。

4/20 愛媛県立博物館で「蛾の世界」展

 県内に生息するガを中心に展示したテーマ展「ガの世界」が、松山市堀之内の県立博物館で開かれており、
300種類約1200点の標本や写真パネルなど貴重な資料が来館者を引きつけている。5月27日まで。
 ガは、幼虫が農作物を食害したり、チョウに比べ色が地味だったりすることから敬遠されがちだが、多種多様なことを知ってもらおうと企画した。同博物館は「ガはイメージが暗く嫌われがちだが、もっと身近に感じてもらえたら」と話している。入場無料。月曜、祝日は休館。

4/19 ベコッコウトンボ飛び回る

 国内希少野生動植物種に指定されているベッコウトンボが、祁答院町の藺牟田池周辺で春風に乗り早くも飛び回っている。
 池の周りで観察を続ける環境省委託保存推進員永野萌子さん(77)は、今月10日に成虫3匹を初めて確認した。例年より10日ほど早いという。16日には163匹を確認した。
 過去5年間のデータによると、1日の確認匹数が最多の1121を数えた1998年も初確認は4月13日。「それより早い今年は数が多いのではないか」と永野さん。ゴールデンウイークには華麗な群舞が楽しめそうだ。
 藺牟田池周辺はベッコウトンボの国内有数の繁殖地。96年に旧環境庁から生息地保護区指定を受けた。体長4−5センチのベッコウトンボは、アシの茂みや田畑を活動場所にしており、早朝には枯れたカヤの上などで、ひっそりと羽を休める姿が見られる。

4/18 ギフチョウの産卵、撮影に成功

カンアオイの葉に産卵するギフチョウカンアオイの葉に産みつけられたギフチョウの卵 「春の女神」と称されるギフチョウの産卵シーンが15日、滋賀県
大津市内の山中で見られ、同市穴太3丁目、東山高教諭藤本秀弘さん(58)が撮影に成功した。
 滋賀県立琵琶湖博物館によると、ギフチョウは県内では北西部の山間部など限られた場所でしか見られない。近年はゴルフ場や宅地開発などで生息場所が減少、県がまとめた「滋賀県で大切にすべき野生生物」の希少種にも指定されている。
 藤本さんは、ギフチョウがさなぎから羽化する今月に入ってから撮影場所に足を運び、7回目に撮影に成功した。正午ごろ、飛んでいるギフチョウを発見。幼虫のえさとなるカンアオイの葉に止まり、真珠色の卵を11個産み付けて5分ほどで飛び立ったという。
 琵琶湖博物館は「ギフチョウは特に湖南地方では見られなくなっており、産卵シーンを見つけるのは難しい」という。藤本さんは「残りわずかな生息場所をこれからも大切にして行かなくては」と話していた。

3/24 カヤ葺き屋根からカブトムシの幼虫1000匹

 高知県吾川郡伊野町中追渓谷観光温泉(福留福太郎代表)で、古い茅葺き屋根から1000匹近いカブトムシの幼虫が見つかった。同温泉は「自然豊かな場所だが、まさか屋根の中にこんなに沢山の幼虫が居ったとは…」と目を丸くしている。
 幼虫が居たのは宿泊施設として利用している松翠庵など3棟の屋根。2月下旬から20数年ぶりに吹き替え作業に入ったところ、大きいもので体長約10a、大人の親指ほどの大きさの幼虫がぼろぼろになったカヤの中から沢山見つかった。
 専門家によると、すべて蛹になる一つ手前の3齢幼虫、腐食して湿った茅が幼虫が栄養を取るのに丁度いい状態になり、毎年のように卵が産みつけられて周辺の木々に飛び立っていたらしい。
 周辺では山桜がそろそろ見頃。福留代表(88)は、「自然の中でいろんなことを勉強するのにいい場所。親子で遊びに来てほしい」と、24日以降の中学生以下先着30人に、入園するしないを問わず、幼虫を古い茅と一緒に贈る。問い合わせは同温泉(088−897−0011)

3/22 小学校内にビオトープ建設

 徳島県阿南市領家町富岡小学校の前庭に、ビオトープ(生物の生息空間)の中心となる池が完成した。卒業記念で6年生とPTA役員ら保護者が協力して造った。同校は今後、池の周囲に雑草を生やしたり、魚を放流したりして、周辺の自然環境に近いビオトープを完成させ、在校生の環境学習に役立てる。
 池は全長約20b、幅約1b、深さ約50a。川のような形をしていて児童の発案で「ふれあいリバー」と名付けられた。昨年12月に造成に着手。ビオトープ用の土地240uに保護者の一人が重機で土を掘り、PTA役員らが防水シートを敷いた後、6年生132人がシートの上に粘土をかぶせるなどして仕上げた。池の横にはPTAと同校が記念碑を建立した。
 同校は、池を周囲の自然に近づけるため、近くの用水で捕れたフナやメダカを放流したり、水草を移植したりする予定。池の周囲の雑草ではどのような昆虫が生息するかを観察する。
 このほど、碑の除幕式があり、6年生のほか教師ら約30人が参加。6年生を代表して表原ひかるさん(12)が「この池が学校や地域の人が自然と触れ合う場所になってほしい」とあいさつした。須賀大輔君(12)=同市福村町南筋=は「自分たちが苦労して造った池。後輩たちに大事に受け継いでもらいたい」と話している。

3/18 巨大な海中ダンゴムシ?「オオグソクムシ」展示 (和歌山県すさみ町)

 和歌山県西牟婁郡すさみ町江住、町立エビとカニの水族館(森拓也館長)は、大型の等脚類「オオグソクムシ」を14日から展示、公開している。エビやカニと同じ、甲殻類の仲間として展示されるもので、巨大な海中ダンゴムシのような珍しい姿が人気を集めそう。
 徳島県海部郡水産振興会がすすめる、深海ガニの資源量調査によって捕獲されたものを譲り受けた。徳島県沖の紀伊水道、水深670〜760bの深海に仕掛けられたカニかごで捕獲された。
 現在、平均体長10aのものを10数匹飼育しているが、大きいものでは、体長15aあまりになる日本最大の等脚類。ふだんは海底を這い回り、沈殿した有機物や魚の死骸などを漁り、底引き網などによくかかる。ダンゴムシと同じ等脚類で、よろいの具足に似ていることから名付けられたとも言われている。
 同館では、エサにイカの切り身を与えているが、スタッフもその姿を気味悪がり、「手をエサだと勘違いして集まってこないかと思うと…」と話し、おそるおそる手に持つ。深海にいる生物のため、低い水温でしか飼育できず、この時期だけの飼育になるかも知れないという。 

3/7 昆虫の森10月オープン(群馬県)

 群馬県は10月から、新里村新川不二山で整備を進めている「県立ぐんま昆虫の森」の雑木林ゾーンなど一部をオープンする。県議会一般質問で5日、高井健二教育長が岩井均氏(自民)の質問に答え、明らかにした。
 オープンするのは雑木林ゾーンのほか、体験工房のある桑畑ゾーンで、総面積48fのうち約7割に当たる部分。クヌギやコナラの生える雑木林で昆虫の生態を観察したり、カイコやハチの飼育を体験できる。
 利用は学校や子ども会育成会などの団体単位で受け付け、学びたいテーマに応じて担当職員が解説する。
 昆虫の森は全体の85%が昔ながらの雑木林。豊富な自然が残る里山を生かし、自然の姿のままで昆虫の生態を観察できるよう、4つのゾーンに分けて整備している。
 メーン施設となる昆虫観察館は2003年の開館を目指しているが、県教委は、一部オープンによって利用者の意見を聞いたり、解説員のノウハウを蓄積したいとしている。

“春の女神”ギフチョウが羽化
 5日は、冬ごもりしていた虫が地中から這い出る頃とされる二十四節気の一つ、啓蟄(けいちつ)。岐阜市大宮町の名和昆虫博物館(名和秀雄館長)では人工飼育のギフチョウが羽化、黄色と黒の美しいコントラストの羽を広げた。
 同館のギフチョウは、先月28日に一匹目が羽化。啓蟄までに6匹が美しい羽を広げて目覚め、近づく春を予感させている。
 ギフチョウは“春の女神”とも呼ばれ、野外では3月下旬〜4月上旬にかけて華麗に舞い、2週間の短い成虫時期を終える。

3/4 角が曲がる原因、分かったよ!  カブトムシの研究で学研社賞

   「第37回全国児童才能開発コンテスト」(才能開発教育研究財団主催)の科学部門で、秋田県山本町森岳小
  1年の島田健汰君が、280件の応募の中から最優秀に次ぐ学習研究社賞を受賞した。
   島田君の研究内容は、「カブトムシの成長と土まゆ」。3歳の頃からカブトムシを飼育し続けており、飼育中
  の一匹の角が曲がっているのに気づき、その原因解明の課程をまとめた。
   生態を細かく観察したり、インターネットで県外の研究機関に質問。成虫になるまで過ごす土中の「土まゆ」
  を、観察中にいじって形を崩してしまい、角の成長に必要なスペースを壊してしまったことが原因であると
  突き止めた。また、土まゆは幼虫が自分の糞と土を混ぜ合わせて作っていることも観察で明らかにした。
   図鑑を見たり昆虫を飼育するのが趣味という島田君は、カブトムシ以外にもスズムシやカマキリなどを飼育
  しており、学校では「昆虫博士」のニックネームで呼ばれているという。

2/15 奄美の絶滅危惧2種、生育調査始まる(環境庁)

   環境省は13日、奄美で絶滅の危機にひんしている鳥、オオトラツグミの初めての生息環境調査を
  名瀬市金作原から開始した。今月中にアマミヤマシギの調査も始める予定で、種の保存法で国内希少
  野生動植物種に指定された両種の保護増殖事業が本格的にスタートする。
   金作原のオオトラツグミの生息が確認されている地点で、環境省が委託した鹿児島県環境技術協会の
  メンバーが、林床の状態を調べるため温湿度計を設置した。16日まで、奄美大島の10カ所程度で
  同計器を設置するほか、落ち葉の量や主要なエサのミミズなどについて調べる。
  また3月には鳴き声調査を行う。作業に立ち会った環境省奄美野生生物保護センターの阿部慎太郎
  自然保護官は「オオトラツグミの生態はよく分かっていない。生息適地がどういう環境なのかを明らかに
  することで、保護策を考えたい」と話した。
   オオトラツグミは、奄美大島と加計呂麻島に100羽程度しかいないとみられ、環境省レッドデータブックの
  絶滅危ぐ種の中で最高ランクのTA類となっている。アマミヤマシギは、来年度以降の捕獲調査に向けて、
  2月と3月、奄美野鳥の会に委託して夜間のルート調査を行う。

2/9 アカマダラケシキスイ落下梅に産卵・食害(害虫防除対策本格化)

   和歌山県紀南地方のJAや梅農家は、梅干しへの虫混入の予防対策に本腰を入れている。
  紀州産梅干しは完熟梅を使用し、果肉が柔らかく高品質と市場での評価も高い。一方、完熟して落果した
  梅に、まれに害虫が侵入する場合があることから、田辺西牟婁地方の8農協と紀州田辺梅干協同組合は、
  この虫の生態・特性の解明と対策確立を県に要望、各農家にも予防対策の徹底化などを啓発している。
   害虫は、アカマダラケシキスイ
(甲虫類鞘翅目ケシキスイ科)。まれに、落果した梅に成虫が産卵しふ化
  することや、地面から幼虫が果実に侵入することがある。体長は成虫で7〜8_で、本州、四国、九州、
  南西諸島、台湾、インドシナ、インドなどに生息している。詳しい生態はまだ分かっていない。

   生産農家は梅園でのケシキスイ侵入防止に、梅干しメーカーは混入している虫の発見と排除に細心の
  注意と努力を払っているが、完全な問題解決には至っていない。
   JAや梅干組合は、産地の緊急課題としてケシキスイの生態・特性についての調査侵入防止対策の
  確立有効な防除薬剤の開発・登録についての働きかけ梅干しなどに侵入したケシキスイの発見・排除技術
  の開発を、県農林水産部などに要望、先月から担当者レベルでの打ち合わせが始まった。
  さらに、県農協連合会植物バイオセンター
(桃山町)に、虫の誘引・駆除の対策方法の検討や、和歌山市の
  研究所に、光センサーを使い、異物混入した梅干しの発見・排除技術の検討を依頼するなど、積極的な
  対応策に乗り出している。
   また、田辺市湊小泉、JA紀南
(虎伏章組合長)では、十数年前から作業効率向上と異物混入防止の
  ためにネットの使用を呼びかけてきたが、今年は1月に、各地区の営農地区懇談会で侵入防止対策の
  啓発チラシ計2000枚を配布。対策実施報告書も設け、各農家に確実な実施を呼びかけるなど、各JA
  でも地域の農家に、これまで以上の対応策の徹底を訴えている。

   侵入防止対策としては、ネットを敷き、できるだけ梅が地面に接しないようにする梅を拾う回数を増やし、
  虫の侵入しやすい古い果実や傷んだ果実は捨てる漬け込み前に傷んだ果実、古い果実、過熟梅の選果・
  選別を徹底する山林近くなどのケシキスイの多い園では、補助的に殺虫剤を散布する−などがあり、
  殺虫剤の助成などを実施しているJAも。

   食品への異物混入については、雪印乳業の食中毒事件以来、消費者が敏感になっていることもあり、
  各JAの担当者らは「全国一の梅産地として異物混入問題に積極的に取り組み、消費者に信頼して
  もらえる商品づくりをしていかなければならない」。
   加工業者もピリピリ 梅干し加工業者は「雪印の事件以降、特に昨年7月から9月にかけて、消費者の
  目が厳しく、我々も神経をとがらせている。11月以降は苦情も減少したが、特産地として、生産者も我々
  加工業者も真剣に取り組まなければならない問題だ」と話している。

2/6 イチジク伐採でホタル受難?岡山市の緑化整備進む大供三俣用水
    自然保護団体反発「生態系へ配慮欠く」

   全国でも珍しい都市繁華街のホタル生息地、岡山市柳町二丁目の大供三俣
(みつまた)用水で、
  昔から生えていたイチジク並木が伐採された。市が緑化整備のため、観賞用植物に植え替える
  計画だが、岡山県内の自然保護グループは「イチジクはホタルの生息条件の一つだった。
  生態系への配慮を欠いている」と反発している。

  ◇用水はJR岡山駅前から市役所方面へ続く繁華街の一画で、西川緑道公園から分かれ西に
   流れている。毎年5月下旬〜7月上旬にかけ、ヘイケボタルが舞う。約800人でつくる
   「岡山の自然を守る会」会員の喫茶店経営松島浩志さん
(59)=同市柳町一丁目=の観察
   によると、多い年は150匹が幻想的な光を放つ。岡山市も生息を確認している。

    ホタルには、適度にきれいな水▽えさのカワニナやシジミ▽木陰―などの条件が必要。
   木陰は光による雄と雌の「交信」を妨害する照明や外敵を遮るほか、日中の休息場所となる
   いわば″シェルター″。同用水のイチジクは1940年ごろから水面を覆うように枝葉を伸ばし、
   繁華街のネオンからホタルを守っていたとみられる。

    市は用水沿い約300bの緑化整備事業のため昨年12月、イチジク16本を伐採した。
   約九千万円かけ道路を石畳風に舗装し、カンツバキ、ユキヤナギ、オオムラサキ、サクラ、
   ハナミズキなど700本を植える。高さ2b前後の低木が中心だ。

    岡山の自然を守る会は1995年の基本計画策定を受け、市へホタルに配慮した整備を求める
   陳情書を提出していた。松島さんは「これほど大きく環境を変えてしまうとは。
   新しい植栽でイチジクのようにホタルを守っていけるのか」と疑問を口にする。

    これに対し、市公園建設課は「事前に環境アセスメントを行い、近隣住民の意見も聞いた。
   ホタル保護を十分考慮している」と主張。ホタルの生態に合うよう土の部分や用水路の石垣護岸を
   残したことも挙げ、「新しい環境でも以前のように生息していくはず」と言う。

    しかし、昆虫に詳しい伊藤國彦岡山県立大短大部教授
(生物学)は「植樹するのは観賞用に品種改良
   され、自然の川辺にないものが多い」と指摘。花が目立つ木が多いため、外敵の昆虫を呼び寄せることも
   懸念、「花の手入れのため農薬散布でもすればホタル絶滅の恐れもある。
   イチジクやヤナギなど川辺の生態系にあった草木にすべきだ」と提言する。

    同会会長の千葉喬三岡山大教授
(緑地生態学)も「イチジクは古くから残る自然の一部。
   保存した上で整備もできたはず。景観重視だったのではないか」とみる。
   さらに「人間だけが住みやすい都市づくりは20世紀の反省点。今世紀は自然との共生が世界的課題
   であり、行政や市民の意識改革が必要だ」と訴える。
   工事は3月に完了する。新しいすみかの水は甘いか、苦いか…。ホタルたちはどう判断するのだろうか。

2/1 カブトムシの養殖始まる(京都府わち山野草の森)

  京都府船井郡和知町坂原の「わち山野草の森」は夏場の観光対策として、カブトムシの養殖に
  取り組み始めた。夏休みの子どもたちにアピールし、誘客拡大を図る狙いで、同園では「虫とふれ
  あえる施設も作りたい」と施設の充実に力を入れている。
  わち山野草の森は、自然をそのまま生かした公園施設として1998年10月にオープンした。
  約12fの敷地にハーブ園や果樹園などが整備され、四季折々の約千種類の山野草が楽しめる
  空間として、京阪神など都市部の人たちに徐々に注目されてきた。
  寄せ植え教室などのイベントも行っているが、どちらかといえば大人向きで、クリ拾いなど家族向きの
  催しもあるが、子どもが主役となる夏休みシーズンには目玉行事があまりなかった。
  カブトムシの養殖施設は昨年夏、園内2カ所に設置。各10立方メートル前後のスペースで、シイタケ
  栽培で利用したホダ木や菌床を敷き、一方には業者から仕入れたカブトムシを放し、もう一方には
  自然の状態で卵を産ませた。昨秋、施設を調べた時には両方とも多くの幼虫を確認。
  順調にいけば数百匹の成虫がかえる見込みで、同園では「試験段階だが手ごたえを感じている。
  うまくいけば、自然の木を生かした観察小屋のような施設も建設したい」と期待を寄せている。

1/25 偽フェロモンでハリガネムシ防除(沖縄県農試)

  沖縄県農業試験場は、サトウキビの害虫・ハリガネムシを交信かく乱法で防除する実証事業を
  2月18日から南大東島で始める。交信かく乱法による島全体を対象にした大規模な防除で、内外の
  注目を集めている。今後、4年がかりで事業を進めていく方針だ。

  南大東島では年間約6500万円の農薬がハリガネムシの防除に使われているが、被害の根本的な
  解決に至っていない。交信かく乱法による防除の経費は年間約1600万円で、低コストで環境に
  優しい防除法を売りにしている。
  交信かく乱法とは、害虫の雌が放出する性フェロモンと同じものを大量に空気中に放出し、フェロモンを
  頼りに雌を探す雄の行動を邪魔し、交尾を不可能にさせる。実験では、3000fある島全体を「防除区」に
  設定し、性フェロモン・チューブ90万個を島中のサトウキビ畑(1500f)や周辺保安林に設置する。

  ハリガネムシは、サトウキビの地下芽子を食い荒らし、植え付けた苗や株出しの芽生えを妨げる原因
  になるなど、重大な被害を及ぼす害虫。農業試験場では本年度の伊計島での実験結果、交信かく乱法が
  ハリガネムシに対して高い防除効果がある、と確認できたため、南大東島での実験を開始した。

  18日のチューブ設置は村とJA南大東村、大東糖業、県が実施態勢を組んで村を挙げて取り組んだ。
  関係者は「防除に成功すれば欠株の解消が見込まれ、約2割の増産が可能になる」として、キビの
  生産振興につながることを期待している。

2001,1/23 旭川市では珍しい「ジンガサハムシ」が民家で越冬

  旭川周辺に分布するのは珍しいとされる鞘翅(しょうし)目ハムシ科の昆虫、ジンガサハムシが
  旭川市内の民家で越冬しているのが見つかった。頭が金色に輝く小さな姿に、発見した旭川市
  永山の主婦、桜田英子さん(59)は「まるでシールみたい」と驚き、専門家は「旭川での越冬は稀な
  事例」という。
  ジンガサハムシは体長約1cm。体の周囲が透明で頭が金色。北海道、本州などに分布、道内では
  道南や日高地方でよく見られるが、旭川では珍しい。
  桜田さんは20日、自宅で交通安全セミナーなどを行う地域ボランティアグループの新年会を開いて
  いる最中に虫を見つけた。「先日、遊びにきた孫が落としたシールかと思った」が、拾おうとしたところ
  動きだしたのでびっくりしたという。
  北海道昆虫同好会の佐々木恵一さん(旭川市豊岡)によると、室内で越冬していたものが暖気で動き
  だしたと考えられ、「ジンガサハムシの成虫の越冬がこれまで旭川で確認されたことはない」と話している。


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