ホトトギス

1999,5,1掲載 

10月11月12月1月2月3月4月掲載 

 むがし、むがしに、女(おなご)の子供(わらし)一人(ふとり)あるども、女房(かが)に早ぐ死なれでしまって、そのなり(そのまま)後妻も入(ひ)れねで、暮らしてる男あったけずおんな。
 それではァ、どごさ歩(あ)ぐっても、子供連れて歩(あ)がねばねっけど。それでこんだ、山の畑さその子供(わらし)連れで、登って稼んでるわげだなん。んだどもしゃ、やっぱり天候(てんき)によって畑で稼がえね日(じぎ)は、子供(わらし)どこ山の小屋さ置えで、
「おっちょ(ウサギなどを取る仕掛け)掛げに行(え)って来るんてがァ」って、行ったもんだずおんな(ものだそうだ)。
「おいおい、父(おど)はな、山さ行って来るんて、父来ねがったら、『おっちょ掛けだがァー』って、叫(さか)べェ。せば、『おっちょ掛けだ』ってせば、しんま(直ぐに)帰って来るし、返事さねがったら、まだまだ来ねど思って小屋に居(え)で待ってれ。こら、こごさ御飯(まんま)置ぐんて、これ食って遊(あし)んでれ」って、言付(ゆづ)げで、歩(あ)ぎ歩(あ)ぎしたずおんな。

 こんだある日(じぎ)、まだ行ったども、ながなが音がねェし、小屋コの前(めえ)さ出はって、
『おっちょ掛けだがァー』って、叫(さか)んだど。したども、なんも音ねェど。
「こりゃ、まだまだ来ねな」ど思って、そうして居(え)るうぢに、暗(くりゃ)ぐなるえんになったわげだな。それがらまだ、小屋コの前(めえ)さ出はって、
『おっちょ掛けだがァー』って、叫(さか)んだども、なんの返事もねェずおんな。
「んにゃ、なしてこんたに来ねもんだべェ」ど思って居(え)だども、子供(わらし)だたえに、寝でしまったわげだ。したっきゃこんだ、眼(まなぐ)覚まして見たば、真っ暗ぐなってしまってらども、
「まだ来てねな」ど思って、まだ小屋コの前(めえ)さ出はって、
『おっちょ掛けだがァー』って、叫(さか)んだたて、何の返事もねェわげだァ。そして居(え)るうぢに、まだ眠でしまったわげだァ。したたて来る様子(さ)もねェ。そして居(え)るうぢにはァ、夜ァ明げでしまったど。
 それがらまだ外さ出はって、
『おっちょ掛けだがァー』って、叫(さか)んでみだたて、何の返事もねェずおんな。
したっきゃこんだ、この子供(わらし)もどうもなねして、「オーイ、オーイ」ど泣いではァ、山さ出がげだど。
 出がげで行って、それっきり父(おど)も来ねし、子供(わらし)も来ねで、二人とも居(え)ねぐなってしまったわげだ。したども山の方で、

 おっちょかげだがァ、おっちょかげだがァ

って鳥出はったわげだどなん。それが今(えま)のホトトギスであったど。


   
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