阿仁の民話 まんじゅう問答 2001,2,15掲載
 むがし、ある寺の門前に、まんじゅう屋があって、そごの小僧がよぐ寺さ遊びに来て、和尚ど親しくして居(え)だど。
ある日、和尚が檀家の法事があって、一日中寺空げるごどになって、小僧に留守を頼んで出がげだど。
 その日の夕方(ばんかた)、玄関で
「お頼み申す」どいう声がするもんだがら、出で見だど。
 したば、一人(ふとり)の旅の僧が立って居(え)で、
「問答したい」というのだど。
 小僧ァ困ったども、問答どいうのは、何時(えづ)だが和尚が、旅の僧とやってだあれだなど思って、断るのもしゃぐだし、
「よし、一(ふと)つやって見れ」ど決心(おも)って、和尚の着古した衣を着て、この寺の小坊になって出はって、問答をはじめだど。
 旅の僧はこんだ、左右の手の指でそれぞれ輪を作(こしぇ)で、差し出したので、小僧ァ大きぐ両手(ふろ)げで見(め)ひだど。したばこんだ、指一本出したもんだがら、五本指を突きだしたど。したば、
「うんうん」ど感心してうなづいでらきゃ、こんだまだ、指三本出したので、小僧ァ面倒くせぐなって、あかんべェをして見(め)ひだど。
 したば旅の僧ァ、
「い、おそれいったァ」って、おじぎをして戻って行ったど。

 したば、門の所(どご)で、法事がら戻ってきた和尚どバッタリ会ったど。和尚が、
「どなたかわがらねども、俺はこごの寺の住職だ。留守中で申し訳ねェごどしたが、用があったら戻ってたもれ」って喋ったど。したば、旅の僧、
「いや、今(えま)お宅の小坊ど問答して、負がされで帰る所(どご)」って喋るので、和尚ァびっくりして様子聞いだば、
「俺は両手で輪を作(こしぇ)で、日月はと問うと、小坊は、大きく両手を拡(ふろ)げで、世界を照らすと答えだァ。こんだ指一本出して、一仏一代ど問うたら、五本の指出して、五智の如来ど答えだァ。今度(こんだ)三本指出して、三仏観音ど問うたば、指を眼(まなぐ)の下さあでで、目の下にと答えだァ。すっかり参った」って、戻って行ったど。

 和尚まだ、寺さ戻って小僧がら話聞いだば、
「あの生臭坊主、人(ふと)を馬鹿にしてる」ど、怒って喋るには、
「指で輪作(こしぇ)で、お前(めェ)の家(え)の饅頭この位がとやるがら、うんにゃ、こんなに大っきいでやって、両手(ふろ)げで見(め)ひだァ。一(ふと)つなんぼだどいうがら、五文だどやったば、三文にまげれでっていうがら、面倒くさぐなって、あかんべェをやったば、恐れ入りましただど。俺はまんじゅう屋の小僧で、何も知らねべがど思って、あの糞坊主」って、カンカンに怒って喋(さべ)ったど。
 和尚ァそれ聞(き)で、あぎれだり、感心したりしたど…。     TOPに戻る     HOME