ただいまと弾む少女が負いてくる ドアいっぱいの夕やけの彩
器用には生きられないわれ今朝も 四角い豆腐をしかくく切りぬ
今日もまた計量カップに計られて スープの味は上々である
透明なビニール傘に雪つもり 「よひょう」の好きな「おつう」がひとり
夫のため子のため夕餉の支度する シャボンの泡を時に舞いあげ
見えるもの見えないものをも見るための 眼鏡の曇りたんねんに拭く
もうでなくまだこれからと向日葵は 天にむかいて黄を放ちおり
蝶でなく蛾として生るるは罪なるや 打たれて鱗紛をただに散らせる
人の死を他人のことと思いしも モノトーンの裡にあるわれの死も
窯変の彩それぞれに輝きぬ 千度の釜にこころあずける