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* 心の中 *

私の記憶では32週くらいから
先生から「順調ですよ!」という言葉を聞いていない。

「中毒症だとどうしても赤ちゃんに栄養がいきづらくなるんですよ。
それでね、なかなか大きくなれないってことがあるんです。
塩分制限がんばってください」。
これが「順調ですよ」の代わりに言われ続けた言葉。

味噌・醤油・塩を使わない食事に変更。
大変だけど、工夫のし甲斐もあったし、
ちぃたん(HN:ちびたん)に大きくなって欲しい一心で頑張っていた。

36W5T。
いつも通りの定期検診に出かけ、
いつも通り「塩分制限頑張ってください」と言われて帰宅すると思ってた。
でも、違った。
「小児科設備の整った病院での出産をお勧めします」。

「・・・」。
意味がわからなかった。


「おなかの赤ちゃんがね、かわいい(大きさ)のね。
もうあと少しで37週になるんだけれど、
多く見積もって2000gなんですね。
前から注意深く見ては来てるんだけれど、
この辺り(34週)から体重の増加が見られないんですよ。
特にね おなかまわりが細いから(5週分の遅れ)
産まれてすぐに小児科のお手伝いが必要かもしれないですね。
体の小さな赤ちゃんにはね
陣痛がかなりのストレスになるんですよ。
もしかすると・・・出産の力にまけてしまって
元気な産声をあげないかもしれません。
赤ちゃんのことを第一に考えると
やはり私は小児科設備の整った総合病院でのご出産をお勧めします」。


先生の言葉を静かに聞いた。
でも とても 冷静ではいられなかった。

ここで産めない?
元気な産声をあげないかもしれないって・・・?
小児科の手伝いって・・・?

「わかりました」。

本当はいろいろ質問するべきだったのかもしれない。
でも 頭の中は真っ白で目の前は真っ暗だった。
わかりましたというのが精一杯だった。

「この3連休が明けたらすぐに転院してください。
紹介状を用意しますから」。

「はい、ありがとうございました」。
もう、とても先生の顔を見ることはできなかった。

診察室を出るといつも通り旦那様が待合室で待っていた。
いつもと違うこと。
私が・・・涙をこらえていたこと。

なんとか会計をすませて病院のドアを出た瞬間
もう 涙を止めることはできなかった。


ちぃが小さいことが転院をしなければならいような重大なこととは
思ってもみなかった。
そのうち体重が増えるのだろうと思っていたし、
細めな子なのかな?と思っていた。

病院に対しては正直に言って
「なんで いまさら!!」という気持ちもあった。
なぜ37週のいつ産まれてもいい時期になってそんなことを言うのか。
もっと早く対処することはできなかったのか!! と。

でも、自分を責める気持ちの方がずっと大きかった。
私が自分の体重増加を気にせずもっと食べていれば
ちぃは大きくなれたんじゃないだろうか?
私が「あまりお腹が大きくなるのイヤだなぁ」なんて思ったことがあったから
罰があたったんだじゃないか。
私が9ヶ月半まで働いたり動いていたのが悪かったんじゃないか?
いくらでもいくらでも私の悪いところが出てきた。

不安だった。
とにかく不安だった。
何がと聞かれてもわからない。
不安で不安で涙をどうやっても止めることができなかった。

3連休が明け総合病院に転院して診察した結果
「お子さんに奇形やハンディがあるかもしれないことは承知しておいて欲しい」と言われた。
それを聞いても特別ショックでもなかった。
普通に聞けた。
ただ私の願いは「産まれて欲しい」ということだけ。
もし奇形やハンディがあったとしたら
ちぃにはつらい思いをさせるかもしれない。
それは申し訳ないと思った。
でも私は何があってもちぃを守りちぃと一緒に生きて行く決心はできていた。


11月12日。
とても小さな体で大きな産声をあげた。
これで助けてもらえる!
そう思った。
生きて産まれて来れば
あとは先生に助けてもらえる!と思った。
11日の検診の時の推定体重は2192gで出生体重は2162g。
誤差のなさに驚いた。
翌日 NICUに面会に行ったときに
身長が43センチと聞いた。
43センチ?
48センチの書き間違いじゃないかと思った。
体重が少ないとは聞いていたけどまさか身長も低いとは・・・
普通のサイズの子より7センチも低い状態からのスタート。
いつか追いつくことができるんだろうか?

ふとNICUの中を見渡すとユウより小さい子が何人もいた。
病気と戦ってるらしき子もいる。
みんなみんながんばって生きよう!としていた。
その子供たちの数だけがんばってるママがいた。
そうかぁ、小さくたっていいじゃないか。
元気で産まれてきたことだけで十分なんだ。
この子はこの子のペースで大きくなればいい。
そう思えた瞬間だった。

たくさんの人に支えられ産まれてきたちぃたん。
無事に産まれたこれから先は
人を助けることができ 人のためになる優しい人間になって欲しい。
そう願いを込め名前を付けた。



心も体も大きくなあれ!