からくりの五平

 

 えー、大変なものでございまして。

 何が大変かと申しまして、技術の発展、科学の進歩というものは本当に大変なものなのでございます。

 実は先日も何とか博覧会という所へ行ってきたのでございますが、たいそうなものがございましたね。二足歩行ロボットだそうでございますよ。わたくし行ったんでございますが、ギッコン、ギッコン歩いておりましたですね。何と言っても二足歩行でございますからね。人間が他の動物とちがう所はと申しまして、二本の脚で歩くことやそうでございますが、それが機械仕掛けで出来てしまうのでございますからな。これはもう、大変はことでございますね。

「階段ものぼれるんですよ」

 と、説明の係の方は言っておられましたですね。

「へえー。えらいもんでんなー」

「おっほん。こういうのを、ほんまのビッグ・サイエンスというのです」

「二本脚で歩く。階段ものぼる。たいしたもんやなー。時におたずねしますが、あんさん、このロボットが階段のぼると言わはりましたが、ここに階段がおまへんな」

 「あー。ちょっとその、階段の段取りがつかなんだもんで……」

 「さよか? 階段なんて、こんな、こんな段があるだけでっしゃろ。それが、これだけの博覧会ででけんのですか?」

 「あー。それはその、ちょっと予算の都合で、また今度のことにしたんですわ……」

 「また今度て、あんた、わたしらこの次いつ見られるかわかりまへんで。そこらにある椅子でも何でも使うて、階段のぼるとこ見せておくんなはれ」

 「あー。それがその……」

 「早う見せておくんなはれ。ビッグ・サイエンスの成果を」

 「あー。あー。あー」

 「何を言うてなはるねん?」

 「このロボット、階段は確かにのぼれますのやが、降りる時、ボテッとこけますねん」

 まあ、ロボットと申しましても色々あるようでございまして……。

 「こんにちは」

 「おー。まあこっち入りいな」

 「どうも、えらいご無沙汰してます」

 「どや、仕事の方は?」

 「それがもう、どもこもなりまへんわ。不景気ちゅうんですか、景気が悪いちゅうんですか、金の回りがよくないちゅうんですか……」

 「そら、おまえ、同じこっちゃ」

 「へえ、同じことですのやが」

 「早い話が、うまいこといっとらんのやろ?」

 「言やあ、そういうことでんねん」

 「頼りない男やな。それで商売の方はあぶれててどないするねん?」

 「それですがな。わて、考えたんですが、こう世の中が不景気やと、皆おもろい見世物に寄ってくるんやないかなー、とね」

 「ほうほう、えらいもんやな。確かに昔から、世の中の景気が悪なる時は、見世物がはやるとしたもんや」

 「そうでしょ、そうでしょ。それでですね、あなたの、そのぼてーっと大きい顔でですね、なんぞおもろい見世物を仕込んでもらわれへんやろかやろか思いまして」

 「すると何か、わしの顔が広いさかい、見世物の相談に来たちゅうわけか?」

 「早よ言うたらそういうことでんねん。マアマア」

 「何がマアマアや、たったそれだけのこと、人をわざわざむかつかすように言えるな。お前だけは何を言われても腹が立たんな。しかし、わしにもまんざら心当たりがないこともない」

 「さよか」

 「うん。上本町の高木五平ちゅうてな。人呼んでからくりの五平ちゅう男や。年がら年中からくり細工ばっかりいじっとる男でな。人間は少々変っとるが、この男に相談したらええ知恵を貸してくれると思うわ。わしの所から来たちゅうたら、じきに会うてくれるさかいな。ここに……所番地を書いたったさかい、いっぺん行てみたらどや?」

 「ほたら、一つ行てきます。おおきに、さいなら、ごめん」

 面白い男でございまして、見世物で一山当てようと上本町へやってまいりました。

 「このあたりやな。ここらで、いっぺんたずねてみたろ。あの、ちょっとものをたずねますが」

 「へいへい、何でっしゃろ?」

 「ここらに高木五平さんちゅうお人が住んではらしまへんやろか?」

 「高木五平? ああ、ああ。からくりのおやっさんのことですかいな」

 「へいへい。からくりの五平さんのことです」

 「おっさんの所は、この先の三軒めですのやが。あんた、どんなご用事かは存知まへんけど、あんまりあの人の相手にならん方がよろしおまっせ」

 「なんでだす?」

 「あの人、頭がおかしいらしいというて、近所でももっぱらの評判でですのや」

 「へえー。わかりました。この先だすか? おおきにありがとう。えらい言われようなやな。そやけど、それぐらいやないと、人をあっ、と言わすようなからくりもでけんのやろな。ああ、どうやらここらしい。こんにちは。からくりの五平さん、こちらですか?」

 「はいはい。どなた?」

 「ああ、からくりの先生ですか? わて、どぶ池の仁兵衛はんの所から来た者です」

 「おー。どぶ池のご隠居の所から。それはそれは。してご用は?」

 「実はわて、見世物で一山当てたいと思うてまんのやけど、何ぞええ見世物おまへんやろか?」

 「ほうほう。見世物のご相談に。わっかりました。わっかりました。とにかくまあ、お上がりを」

 「へえ、上げさせてもらいます。へえー、えらい、いろんなもんがありまんな。これ、みなあんさん作んなはったからくりでっか?」

 「はい。言やあ、わたくしの発明品ですな」

 「ここにある、この小さな手が何本も出てる奴、これ何ですか?」

 「あ、これはですな。万能孫の手ともうしましてな」

 「万能孫の手?」

 「はい。ふつうの孫の手というものは、一度に一箇所しか掻くことができません。そこでこの万能孫の手を使えば手が何本もついておりますので、一度に何箇所も掻くことができます」

 「へえー。たしかにねえ。そやけど、かゆい所が一つだけやった時はどうしますねん?」

 「さあ、それがもんだいでしてな。まだ完成しとりません」

 「ふーん。あんまりかしこいことないなあ。大丈夫やろか……。えっ、いえいえ何でもおまへん。そっちにある大きな車輪のついたもんは何ですか?」

 「あ、それはですな、転ばぬ自転車です」

 「転ばん、自転車? 自転車ちゅうたら車輪が前と後ろについとるのと違いますか? この自転車には、車輪が左右に二つついてますな」

 「そこです。よいところに気づかれました。そも自転車とは、車輪二つの間に人間がまたがってペダルをこぎます。じゃによって、左右いずれかに転ぶ危険がありますのじゃ。そこで、このように車輪を左右に付け、ペダルを回転させます。左右に車輪がついとりますゆえ、安定しとります。決して左右に倒れることはありません」

 「あの、先生。ちょっとええですか。素人が口出しして、えらいすんませんけど、それ、あのー前後に転ぶっちゅうことはおまへんのやろか?」

 「それが問題なのです。そこで、前の方にももう一つ車輪をつける事を考えてますのじゃ」

 「あのー、先生。ひょっとして、そういうのん、三輪車というのとちがいますか?」

 「まあ、そうも言いますな」

 「うーん……。頭痛ぅなってききた」

 「ところで、あなたは見世物のご相談にみえたのでしたな?」

 「へえ……まあ……まあ」

 「あなた、よいところへ来られましたぞ。見世物にうってつけの、新しいからくりがあります。これに比べたら、ここにある物などガラクタのようなものです」

 「別に比べいでも、ガラクタやと思うけどな。えっ、いえいえ何でもおまへん。で、その新しいからくりちゅうのは?」

 「こちらへどうぞ」

 次の間に通されますと、えらくちらかった部屋のまん中に人の背丈と同じくらいの大きさの人形が立っております。

 「先生、これは何ですか?」

 「ふっふっふ。こーれこそ世紀の大発明、太鼓持ちロボット、です」

 「たいこもち……ロボット?」

 「そーです。幇間、たいこもちと言われる人たちは、きょうびずいぶん少なくなってしまいました。しかし、人間誰でもべんちゃらを言われて悪い気はしません。そこでこの太鼓持ちロボットにべんちゃらをしゃべらせるわけです。このロボットは相手ごとに、聞いていて最も心地よいべんちゃらをしゃべります」

 「ほんまでっか?」

 「ほーんとです。やってみましょうか?」

 「へえ……」

 「では」

 ぱっちんとスイッチを入れますというと、太鼓持ちロボット、体を起こして何やらもの言い出しよった。

 「こんち、どうも。わたくし、ミナミの幇間でイッパチと申します。以後お見知り置かれましてよろしゅうに。ときにあんさんはどんなもんが、お好きですか?」

 「わての好きなものちゅうたら、やっぱり酒だすかなぁー」

 「酒。いよっ、よろしいなー。男はなんちゅうても酒です。酒をやらんようでは、男とは言えまへん。酒なくて、なんのこの世の花見かな。いやあ、大将の色男」

 「はあー。なかなか言うもんでんな」

 「うぉっほん。どーです? これなら見世物になりますでしょう?」

 「そーですなあ。これなら何とか……」

 「そうそう。こうなればですな。一刻も早く見世物として世間に出す段取りを」

 「へえ、わかりました。ほたらわて、仁兵衛はんの所へいて、そこらの段取りしてきますさかい、先生はひとつロボットの方よろしく頼んますわ」

 「はいはい」

 この男、どぶ池筋にとって返しまして仁兵衛さんに相談いたします。そこは面倒見のよい人でございますから、近場の借り手のない空き家を見つけてくれまして、ここに見世物小屋を開きます。初日はご祝儀ということもありまして、長屋に人ら大勢よってくれます。

 「どうもどうも。ようこそおこし。ようこそおこし」

 「いや、喜ィさん。こんどおもろい見世物始めたんやて?」

 「政やん。じつは太鼓持ちロボットちゅうもんが手回りましたんで、ひとつ見たっておくんなはれ。さあ、みなさんも一人ずつ、一人ずつロボットの前に並んでおくんなはれ」

 「それやったら、一番はわいやで」

 「へえへえ政やん。ほたら、からくりの先生、ひとつお願いしま」

 ぱっちん。

 「こんち、どうも。わたくし、ミナミの幇間でイッパチと申します。以後お見知り置かれましてよろしゅうに。ときにあんさんはどんなもんが、お好きですか?」

 「そやな、わしの好きなものちゅうたら博打か」

 「博打。いよっ、よろしいなー。男はなんちゅうても博打です。博打をやらんようでは、男とは言えまへん。博打なくて、なんのこの世の花見かな。いやあ、大将の色男」

 「おう。なかなかええこと言ってくれるな。これはわずかやけど、祝いや。とっといて」

 「えらいすまへんなあ。こんな心配してもろて。ほな、おおきに」

 「次はわしやで」

 「八っつぁん。どうぞどうそ」

 ぱっちん。

 「こんち、どうも。わたくし、ミナミの幇間でイッパチと申します。以後お見知り置かれましてよろしゅうに。ときにあんさんはどんなもんがお好きですか?」

 「わしは甘党やさかい、ぜんざいが好きや」

 「ぜんざい。いよっ、よろしいなー。男はなんちゅうても、ぜんざいです。ぜんざいをやらんようでは、男とは言えまへん。ぜんざいなくて、なんのこの世の花見かな。いやあ、大将の色男」

 「なんやこれは。最前政やんに言うたのと同じやないか。喜ィコ、どないなっとんねん?」

 「先生、先生。どうなってますねん?」

 「いやー、このロボットといのが相手の好きなものをたずねて、それを決まったようにほめるわけでー」

 「えー、そんな、アホな」

 「おい、喜ィコ、馬鹿にするなよ。人と同じべんちゃら言われて誰が心地ようなるかい。みんな、帰ろ帰ろ」

 「喜ィコ、最前の祝い返してもらうわ」

 「あらー政やん。あらー。あらー。皆帰ってしもうた。先生、一体どないしてくれますねん」

 「いやー、ちょっと思惑からはずれましtな」

 「もうし、ちょとどころやおまへんで。これでわいの信用地に落ちてしもうた」

 「まあまあそう気を落さずに。これはやはり一度に大勢の人を相手にしようとしたのがまちがいでしたな」

 「そんなこと言うたかて、見世物と言うたら一度に大勢に見てもらわなどうもならん」

 「そこです」

 「どこです?」

 「何を古いネタやっておられます。そういうことではなくてですな。一人の人だけを相手にべんちゃらをかませばよいのです」

 「そんな、たった一人やったら儲からん」

 「だから、金持ちの客をつかめばよいのです。お金と暇のある人相手に見せれば、貧乏人をぎょうさん相手にするよりは儲かりましょう?」

 「あ、ナールホド。これは理屈ですねえ。たしかに金と暇をぎょーさんに持て余してる人間ちょいちょい見かけま。そやけど先生、それにしてもこのロボットの応対、ひどすぎまっせ。何ぼ一人を相手にするにしても、もうちょっとそれらしいべんちゃらをしゃべってもらわんと」

 「アハハハハ。やはりあなたもそう思いますか?」

 「誰かて思いますわ」

 「わっかりました。わっかりました。ロボットは直しておきますので、ご心配なく」

 「今度こそあんじょう頼んまっせ。ほたらわて、客になりそうな奴さがしときますさかい」

 今度こそはとこの男、あっちこっち心当たりをばたずねます。とある知りあいから聞き込みましたのが、伊勢屋と申します船場の大家の若旦那。このお方が、いたって遊び好きの珍しい物好き。したい事はしてしもた。食いたい物は食てしもた。海外旅行だけでも三百六十五へんもしてしもた、というかっこうのお客。この若旦那を知っております友達に頼み込みまして、顔をつないでもらいます。からくりの先生にも声をかけまして、いよいよこの若旦那の座敷に乗り込む段取りとなりました。ミナミあたりの色町は、いつに変わらぬ陽気なこと。

 「先生、出てといなはれ。こっちだっせ」

 「いやあ、わたくしはこういう所は初めてでしてな」

 「きょろきょろせんとこっち来なはれ。ところで先生、ロボットの方は大丈夫でっしゃろな?」

 「はいはい。ちゃんと直しておきましたぞ。今度は相手の趣味に合わせて、いろいろなべんちゃらを次々繰り出すようにしています」

 「それやったら、けっこうです。ほたら、ぼちぼち行きまひょか」

 やってまいりましたのが、造りこそ小さいがいたって粋なお茶屋でございます。玄関先であいさつをしまして、座敷に上がります。

 「どーも、若旦那。お初にお目にかかります」

 「おうおう、おまはんらか。何やおもろいもん見せてくれるちゅうのは?」

 「へい、さようでおます。こちらにおられますのが、これからご覧にいれます太鼓持ちロボットの発明者、からくりの五平せんせいです」

 「はは、どうもどうも。このロボットは現代科学の粋をこらして作られておりまして……」

 「先生、先生。もう、そんな能書きはどうでもよろし。早いとこロボットを動かしておくんなはれ」

 「そやそや。早いとこそのロボット見せてんか」

 「あ、はいはい。わっかりました」

 からくりの先生、せたろうておりました箱をあけましてロボットを出します。背中のスイッチをぱっちんとやしますと、太鼓持ちロボットが動き始めます。

 「ええ、どうもどうも。わたくしミナミの幇間でイッパチと申します。以後お見知り置かれましてよろしゅうに。こちらはまた、どちらのご大家の若旦那で?」

 「船場の伊勢屋ちゅう店の一人息子で作次郎ちゅう者や」

 「これはどうも若旦那。ていねいなごあいさつ、痛み入ります。今日はありがたいお招きにあずかりまして本当にありがとうございます。わたしらはもう、いたって無芸不器用でございまして、まずはどどいつなりとご披露いたします

 赤襟さんでは年季が長い、あだは年増にゃ間夫があるぅ」

 「もし、先生。なかなか器用にやるもんでんな」

 「おっほん。わたくしがちょっと本気を出せばこんなもんです」

 「いやあ、ええ喉や。どや、一杯やらんか」

 「では、ありがたくちょうだいしたします」

 「先生、先生。ロボット酒飲んでますけど大丈夫でっか?」

 「いやあ、心配ご無用。酒も飲めば料理も食べるようになっています」

 「いやあ、けっこうなお酒ですなあ。五臓六腑に染み渡ります」

 「おうおう、なかなか飲みっぷりええがな。小さいもんは邪魔臭い。どや大きいもんでぐーっといかんか」

 「はい、ありがたくちょうだいいたします」

 からくりの五平先生が作りました太鼓持ちロボット、伊勢屋の若旦那に勧められてやったりとったりしております。さてこのロボット、酒も飲めるんですが人間同様飲める量に限界がございます。何でもそうでございますね。水槽に水を入れ続けておりましてもいつかはあふれます。こういうのんをオーバーフローちゅうそうでございますが、このロボットの体内でもオーバーフローが起こってまいりまして、人間で申しますとへべのれけれけになってまいります。

 「いやあ、わわわ、若旦那、けけけ、けっこうなお酒れすねぇー」

 「もうし先生。なんやロボットのようすがおかしおますけど、ええんですか?」

 「あー、その、本当の太鼓持ちらしい方がええと思いまして、酒を飲むにしたがって酔っ払うようにしてあるのです」

 「えー。ほたら人間並みに酔うちゅうわけでっか。ロボットが酔うたらどないなりますねん?」

 「さあそれは。体の中に飲んだ酒を入れるタンクがあるんですが、これがあふれんかぎり大丈夫です」

 「ほんまにええ飲みっぷりや。どや、またどどいつ聞かせてんか」

 「ふ、ふぁぁい。

  雨のふる日は天気が悪い、姉はわしより歳が上ぇぇ」

 「声はええけど、なんやようわからんな」

 「ななな、なぁにぃ。わしのどどいつがわからんのやてぇぇ。おまえ、遊んどるくせに芸がわからんちゅうのやな。よし、ひとつわしが、ほんまの芸ちゅうもんを教えたるさかいな。酒ついでんか」

 「おいおい、もうええかげんにしとき」

 「おおきなお世話じゃい。親の金で遊んでくさって他人に説教できるたまか。どうせわいはロボットや。けど、ロボットが酒飲んで悪いんかい。うーぃ。どどいつ聞かせたるさかい、耳の穴かっぽじってよう聞いとけよ。

 高い山から低い山見れば、低い山の方が低ぅござるぅ

 どや、ええ文句やろ。どや」

 「おい、このロボットなんとかしてや」

 さすがの若旦那も悲鳴をあげます。これ以上ぼろの出んうちに片付けようと、からくりの五平先生、ロボットの背中に回ってスイッチを切ろうといたしますが、ロボットこれに感づきおって

 「何をすんのじゃい。ロボットかて酒も飲みたきゃ遊びもしたいわい。ここでひとつ大騒ぎしたるわーい。

 うわーい。そーれ、それそれそれそれぇー。よいとこら、よいとこら、よいとこらさっさー」

 大騒動でございます。このロボット、人間の形はいたしておりましてもやはりロボットでございますから、体の中にはいろんな仕掛けが入っておりまして、ずいぶんと重とうございます。その重たい体で暴れたんやからたまりません。踊りながら廊下に出たとたん、べりばりぼりばりっと音がして床が抜けます。見ていた若旦那の怒ったの怒らんの。

 「おうおう、こらいったいなんや? こんなろくでもないロボット、持って来よってからに。見てみい、おいどまですっぽり床にはまってるがな。この始末、いったいどうつけてくれるねん」

 「わー、わー。えらいすんまへん。えらいすんまへん。先生、はやいとこ帰りまひょ」

 からくりの先生とこの男、一目散に逃げ帰ってしまいます。さて、ロボットのちょど真下がお茶屋の帳場になっておりまして……

 「お帳場はん。お帳場はん。なんですねん今の音は?」

 「さあ、わたいらも最前から腰がぬけかかってまんのやが」

 「あらー、あれあれ。お帳場はん見てみなはれ。廊下の天井から二本の脚がにゅーっと

出てるがな」

 「わっわっわっ。なんやなんやあれは。なんぞの化けもんか? 怪物か?」

 相手はロボット、ただの怪物ではございません。アンドロおイドの怪物でございます

                             

                         1987年執筆

 

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