第2集:進化の不思議な大爆発

5億5000万年前、生物の爆発的な多様化が始まった。
肉食動物や、私たち脊椎動物の祖先など、現在へ続く動物が出そろった。
たった一度の形の選択が、その後の生物の生き方・運命を決める。

第1章:進化のビックバン

5億3000万年前のカンブリア紀の海には、現在の生物学の枠組みをはみ出すものまで含め、多彩な生物があふれていた。そしてそれは、「カンブリア爆発」と呼ばれるほど急激な多様化によって突然、地球上に現れたのだ。

カンブリア紀以前には数十種類ほどだった生物の種類が、この時代に一気に一万種類近くまで達するのである。そしてその中には奇妙な生物だけでなく、現在の生物の基本形と言えるものがほとんど出そろった。

第2章:爆発の長い長い助走

地球上に生命が誕生したのは、40億年近く前と言われている。それから後、20億年以上も、たった一つの細胞で体が出来た単細胞生物の時代が続く。

その間、光合成をする生物の登場、酸素呼吸の始まり、真核生物の登場など、重要な進化は起こっているが、少なくとも外見上、それらは全て単細胞のままであり、形の上での多様性はほとんどない。

生物が多種多様な形態を作り出したのは多細胞生物が現れてからのことなのである。

最初の多細胞動物が登場したのは10億年ほど前だと考えられている。
やがてそれぞれの細胞は、しだいに役割分担を決め、さまざまな器官を作ってゆく。だが、その過程を示す生物の化石はほとんど残されていない。最初の多細胞動物がどのような生き物だったかは、謎に包まれたままなのである。

カンブリア爆発と呼ばれるほどの生物の急激な多様化が、なぜこの時期に起こったのか。その理由に関しては定説はない。この時期に大気中の酸素濃度が急速に高まったためという説、海中のリンやイオウなどの濃度が変わったためという説などがある。しかし、原因は一つではなく、さまざまな要因が複雑に絡み合っていたのに違いない。

第3章:肉食という禁断の木の実

カンブリア紀最大最強の動物アノマロカリスの登場。

カンブリア紀の生物たちは、シドネユイアや大きな三葉虫などが十数pの大きさだった他は、ほとんどが数p以下の大きさしかなかった。それに比べると、大きさ60pのアノマロカリスが非常に巨大な生物だったことが分かる。

アノマロカリスは当時にほとんどの生物を餌にすることが出来たと考えられる。恐れるべき敵もなく、海の王者だった。

第4章:たった一度の選択

カンブリア紀の生物の中には、現時のほとんど全ての生物の基本型がすでに秘められていた。これらの生物たちの子孫と言われる生物は、その後の進化によって形は変わってゆくが、外見上いかに形が変わるとも、元になっている基本構造は、驚くほど変わっていない。そういう意味では、これ以後の進化はマイナーチェンジでしかなかった。

ある構造をいったん選んでしまったら、もう選び直すことは出来ない。これほど根本的な選択の機会は、生物の進化の歴史の中で二度となかった。

生命:40億年はるかな旅2(NHK出版)