カ    ギ

6月2日は、朝から小雨が降っていた。今日はまたまたお引越しの日。
朝食の後、Joy のねこちゃんと遊んでいると、Mercia がレインコート姿でやってきた。何だかちょっと プリプリしている。
「地下の私たちのワードローブに雨漏りがしたの」
だそうで、かなりたくさんの冬のウールのコートや絨毯が濡れてしまったらしい。
Joy に、前にも雨漏りしたでしょ、イヤになるわ、なんて話しているのを聞いて、私としてはどういう 顔をすればいいのか、困ってしまった。
Mercia はそれに気づいて、笑顔を作った。Joy にさよならをする。

 Enjoy your stay with Mercia here in London!!
It was really happy to meet you Joy. Have a nice vacance in Italy!!

 私が英語で、好きなフレーズは、この Enjoy 〜〜〜 。
Enjoy your lunch.
Enjoy your trip.
Enjoy yourself.  そうだよ、楽しまなくて何の人生ぞ。

   いいよね、こういう言い方。

   Mercia は私を車に乗せて帰る間 「大丈夫よ、あなたのお部屋は」 今日はどこへ?とか、カギは昨日、 娘が持ってきてくれたから、あとでお渡しするわ、とか、気を使ってくれているのがわかった。
 ご親切に、どうお礼を言っていいか・・・

彼女の家に着いた。車は左に寄せて路上駐車。整然とずらり。道幅が広いのでこれでも、OK なのだろう。
まず歩道に面したフラットの入り口のドアは、2つのカギで開けるのだが、これは、わかる。 ひとつ差し込んでガチャン、で次のに移る。
 (昨日来たときにはぼんやりしていた。Mercia が中から開けてくれたし Joy の後について、うろうろ していればよかったので)
 入るとそこはこのフラットに住む住人のパブリックゾーン、絨毯を敷き詰めた広い廊下。 郵便物が落ちている。
二階に1家族。三階にも1家族と、この大きなフラットには4家族だけが住んでいるそう。
 そして Mercia のうちに入るのに、また別の2つのカギを使うのだ。

 「ハイ、うちのカギよ」と手渡されたのは、ジャラジャラと重々しい、都合4つもの、カギだった!!  これを無くしては大変。私はバックパックの内側についた紐に、しっかりと結びつけた。

 このカギには、ここにいる6日間ずっと、ドキドキさせらた。
どれとどれが外のカギで、どれとどれが中のカギか。必死で覚えた。ノートにメモして、2つずつ をまとめて輪ゴムでくくった。
おまけに合っていても、開けるのに、かなりの「コツ」もいる、ときた。
スムーズに開くこともあれば、なぜかどうしてもうまく開かないこともあった。ある時など、聞きつけた Colin が口をもごもごさせて何かを食べながら、開けに来てくれたこともあったっけ。
 「僕でも時々うまく開かないこともあるんだよ」  ウ〜ム。

 さて、Mercia のご主人、歯科医の Colin が私の荷物を部屋まで運びおろしてくれた。
部屋の右手のベッドの上に、重いスーツケースを置いてくれたので、滞在中、荷物の開閉が楽で大助かり だった。でなければ、いちいち床にしゃがんで、入れたり出したりしなくてはならなかったからだ。

 部屋で、荷物をほどいて、Merciaに渡そうと、£30×6(日間)=£180を用意した。
カメラにガイドブックにメモノート。折り畳み傘も持って、と。なにしろ、ロンドンは雨がよく降る。 朝、晴れているか、と思えば雨になる。で、すぐに止む。
 でも何故か、少々の雨では傘をさしている人はあまりみかけなかった。コートの襟を立てて、 濡れながら歩いていく人が多い。どうせ、すぐに止むのだしって感じ。
 私はだめ。雨には溶けちゃうヒトだから。
 今日の予定。
 『St Paul's Cathedral (セント・ポールズ大聖堂)』
をやっつけてから、午後は、テムズ川の遊覧船 に乗るつもり。

 上に行くと、 Mercia がキチンを見せてくれて、自由にお使いなさいな、と言った。
「これはあなたの tea だから(と、紅茶のティーバッグが入った密閉容器を指して)、いつでもどうぞ。 お湯はこれで、沸かせるから」
 マグカップは、戸棚の中から出した5個の中から、どれがいい?と選ばせてくれた。
((ああ、この人は第一印象ほど無愛想ではないわ。))
Joy のお友達だけど、ずいぶん、性格の違うタイプの人だわとか、思った。
なんとかうまく過ごせそうで、ほっとする。
 いろいろな木の実のマグカップだった。迷ったけど、イチゴ模様のにした。 何か使うものを選ぶ時は、私は必ず、明るい色、赤いもの、きれいな色、元気になれそうな色を選ぶ。
 これがステイの間、私専用のマグになった。(これと同じ模様のマグを、帰りの空港の売店で見つけて 2つ買った。1つだけ買って割れたら泣けちゃうもの)

             出かける前に Mercia が言った。

          「夕方、一緒にお茶でも飲みましょうか。」

                            「ハイ、喜んで。」