2. お守り



ぼうっとした表情のパンネロが視界に入って、フランは彼女の隣にそっと近寄る。
「熱心に見ているのね。何か見えるのかしら」
「わ!ふ、フランさんっ!」
「フラン、よ」
「ふ、フラン・・・え・・・っと」
パンネロの手には手の平に丁度収まる大きさの青い石が一つ。
「随分大事にしているのね」
肌身離さず持っているだけでなく、時折取り出してぼうっと眺めている姿を
これまでにも幾度か目にしている。
「お守り―――ですから」
人口破魔石。
魔力を吸収するという不思議な鉱石を人工的に作った物だ。
自然界に存在するミストを吸収し、制御する目的で作られたというのならば、
それは人間には過ぎた代物ではないだろうか。
危険なものではないか、と密かに危惧しているのだけれど、
あまりにパンネロが大事にしているからそう忠告するのが躊躇われた。
「お守りというより、宝物みたいに扱うのね。触られたくもない?」
フランに触らせない、とでも言うように青い石はパンネロが後ろ手に隠してしまっている。
「え!あ・・・その・・・」
無意識なのか。
咄嗟に自分の影に石を隠したその行為に、本人が驚いた顔をしている。
少し意地悪をして手を差し出すと、パンネロがおずおずと石を差し出した。
触れるか触れないかギリギリの所でピタリと手を止めて、彼女の表情を伺う。
傷に触れられるのを拒むかのような、苦い顔。
フランは思わず苦笑する。
今のところ、その石からは何も感じ取れない。
持ち主の使い方次第でどうにでもなるようなものだとすれば、
無欲なパンネロが保管するのはうってつけであるかもしれない。
そう思う事にして。
結局石には触れずに、フランは踵を返す。
「失くさないように大事にしてあげなさい。その石も、込められた想いも」
「え?」
パンネロがその石を見つめる度に思い出しているであろう人物が、
どんな気持ちでこれを彼女に手渡したか。
『パンネロさん、これ・・・お守り代わりに』
自覚しているのか、いないのか。
とても情熱的な瞳で彼はパンネロを見つめていたように思う。

少なからずパンネロは彼の事を思い出しているようだ。
彼が石に込めた願いどおりに。


■ モドル ■





これまた他キャラ視点で。破魔石についてパンネロからの視点は
時系列の「夢見る石」で書いていますのでフラン姉さんにでしゃばってもらいました