3. つかの間のひととき
「あのように手を取り合う未来もありえましょう」
バッシュの声に、アーシェは彼が見つめる先を眺める。
ヴァンとパンネロ、そして帝国の皇子ラーサーが屈託無く笑い会う姿がそこにあった。
話の内容は聞こえなかったが、何がそんなに可笑しいのか
三人ともお腹を抱えるようにして笑い続けている。
あまりに平和な図。
今から何が待っているのか分からないゴルモア大森林に入るというのに、
まるで緊張感のない声が辺りにこだましていた。
彼らを見ていると、一人‘帝国の人間なんて’とピリピリしていた自分が何だか滑稽に思えて、アーシェも思わず表情を崩す。
「殿下・・・」
ほっとしたようなバッシュの顔。
そんなに恐い顔をしていたのかしら、私は。
くすくすと笑いながら再び暢気な三人組に目を向けると、
バッシュが今しがた呟いた言葉そのままに彼らが仲良く手を繋いでいる。
右にヴァン、左にラーサー、真ん中がパンネロだ。
「本当に・・・仲が良いのね」
あんな風に、アルケイディアとダルマスカ、そしてロザリアが手を繋ぎあえたら
・・・嘘でも素敵かもしれない。
「いーや、そう見えるだけで火花が散っているぜ?あれは」
隣からぬっと現れたバルフレアに目を瞬く。
「そう・・・なの?」
「王女様には見えないか?お嬢ちゃんを挟んでこう・・・」
にこやかに笑いあうラーサーとヴァン、そして少しだけ困ったようなパンネロの顔をそこに見た気がした。
■ モドル ■
前2つのお題と同じく他キャラ視点で
ほのぼのとしながらも攻防があるといいかな、と