4. 親愛なるあなたへ



甘い花の香りが微かに香る紙に綴られた字を、何度目で追っただろうか。
執務の合間に、デスクの引き出しに大事に仕舞ってある封筒を開けては
同じ事を繰り返す。
手紙の一番最後に目を落として、ラーサーは微笑んだ。

‘親愛なるあなたへ’

その言葉に含まれた距離感に、胸が甘く締め付けられる。
何度注意しても‘様’付けをやめてくれない彼女が唯一、
それとは違う呼び方をここでしてくれる。

真っ白な羊皮紙を取り出して、ペンを走らせた。
お決まりの挨拶にどうという事の無い日常生活の報告。
最後はこう締めくくる。

‘親愛なるあなたへ’

僕の心はいつだってあなたの隣に。


■ モドル ■





やっとラーサー視点
ED後の手紙やり取りのワンシーン、ってところで