『赤い風船』
テーマパークの入り口で、女の子は赤い風船をもらいました。
女の子は嬉しくて、風船を手にしたまま、お父さんとお母さんの前をかけていきます。
けれど、突然吹いた強い風が、女の子の手から風船を奪ってしまいました。
赤い風船は糸を付けたまま飛んでいき、イチョウの高い梢に引っかかりました。
風船が飛んでいってしまったことが悲しくて、女の子は顔を真っ赤にして泣きじゃくります。
お父さんが、もう一度パークの入り口までもどって、別の風船をもらってきても、
あの風船じゃなくちゃいやだと言って泣きやみません。
梢の上の風船は、女の子のようすを見て心を痛めました。
なんとかしてそこから離れようと、一生懸命からだを動かしましたが、
かえって糸が絡まってしまいます。
そこへ悪魔がやってきて、
「君を自由にしてあげようか」
と、声を掛けました。
「ありがとう。お願いできますか」
風船の言葉を聞いて、悪魔は、その鋭い尻尾の先で、風船をひと突きしました――
ぱちん!
弾けた風船から何かが飛び出し、女の子のところまで飛んでいって、
困り果てているお父さんの持っている風船に体当たりをしました。
あっという間に二倍の大きさになった風船!
お父さんもお母さんも驚きましたが、それを見た女の子がにっこり笑顔になったので、
二人はようやく安心しました。
そして、もう飛んでいかないように、手首にしっかりと風船の糸を結びつけてから、
お父さんは女の子を抱き上げ、
お母さんと並んで、仲良くハロウィン・パレードの列に吸い込まれていきました。
(おわり)