いたくてUSJ

 

週末の天気予報は雨だった。

「雨らしいよ。どうする?」

と、友達からメール。

「もちろん行くわ」

ハートマークをたくさん付けて、私は彼女に返信した。

 

USJの開園五周年を記念したアトラクションに、ピーターパンが出る。

そのニュースを知ったとき、すぐに逢いに行こう!と思った。

永遠の少年、ピーターパン。
私をネバーランドへ連れて行ってくれた、ピーターパン・・・。

最近の私は、夢見る力を失いかけているような気がしていた。

 

 

大阪駅からユニバーサルシティ行きの電車に乗り、USJへ向かう。

頭の上は白っぽい曇り空。ときおり薄日も射し込む。

低気圧が近づいてきているようだけれど、このくらいの風ならば、まだ大丈夫のはず。

USJのシンボル、巨大な地球のオブジェを右に見ながらチケットを買い、

スヌーピー帽を被った笑顔のお姉さんに提示してゲートをくぐると、

子ども達に取り巻かれたシュレックの着ぐるみが私たちを出迎えてくれた。

「写真、撮る?」

「う〜ん。。」

シュレック・・・一緒に撮ったら美人に写るかな。

そう思いついて一人で笑う。

 

結局、そのままアーケードを通り抜けてアメリカンテイストの街にとけ込み、

ガイド役”綾小路麗華”が面白いと評判の、「ターミネーター」のアトラクションへ。

 

・・・”綾小路麗華”は、青木さやかのようだった。。

 

その後、ブルース・ブラザースのストリートパフォーマンスでノリノリに踊り、

スパイダーマンの世界でビルの屋上から真っ逆さまに落とされ、蜘蛛の巣に助けられた。

 

夕食のレストランでは、五周年記念の二種類のオムライス

(デミグラスソースと春野菜のクリームソース)を、友達と半分こして食べ合い、

アメリカンコーヒーを飲みきれずに残して、

ピーターパンのショーを観るべく、パーク中央の”ラグーン”を目指した――

 

午後八時。

時刻ちょうどにショーが始まり、大勢の観客が見守る中、ピーターパンが空を飛んだ!

それが偽物だとわかっていても、私の胸は高鳴った。

ピーターパンに手を引かれ、私もまたあの時のように空を飛びたいと思った。

 

――終了後。

”ラグーン”の周りに座り込んでいた人達がいっせいに立ち上がり、出口に向かって歩き出す。

友達と私は、すぐに帰る気にはなれず、

人のいなくなったパークに残って、電飾美しい建物達をカメラに納めた。

  

閉園ぎりぎりまで粘り、ようやく帰ることにした私達。

その頭上を、一瞬、強い風が吹き抜けた。

「来てくれてありがとう!」

 

「え? 今、何か言った?」

「ううん、何も。あ〜楽しかったね〜!」

「うん、楽しかった!」

 

私は、今の声はきっとピーターパンだと思った。

「逢えて良かった。今まで雨を待たせてくれて、どうもありがとう!」

 

降り出した雨の中、友達と私は、満ち足りた思いで駅までの道を走った。

(おわり)