この作品は ポプラ社主催”作品市場.com” に 公開していました。

(2005年2月のアワードに於いて総合の銅賞及びジャンル別金賞を 受賞しました♪)


 

ーターパンウェンデ ィ

 

星降る夜の Fairy Tales Vol.2 by Linda

 

 

 

* * *

 

 

 

 

ーター☆パンとウェンディ

 

開け放した窓から入ってきて目の前に降り立ったのは、

緑色の服を着た男の子だった。

「やぁ、ウェンディ!迎えに来たよ!

君が毎晩窓を開けて僕を呼んでる声が聞こえてきたんだ。

そうさ、君を受け入れてくれない世界になんかいなくたっていいさ。

君はネバーランドで、永遠に子どもでいればいいんだ。

さぁ、今から僕と一緒に飛び立とう!」

「ああ、ピーター、ありがとう!

あなたが来てくれるのを、私ずっと待っていたわ。

この窓辺で、白いドレスを着て、あなたが通りかかったらすぐに見つけてくれるように。

でもね、、、ほら、見て、今日の私のドレス!

これは一生に一度だけ着られる純白のウェディングドレス。

見つかったのよ、私が私でいられるところ。

私が勝手に夢見ていても、たとえ他の誰から相手にされなくっても、

そしてねピーター、あなたのことを話してみても、彼は全部聞いてくれた。

私が夢見ることを受け入れてくれた。

そのままで良いよ、二つの世界を行ったり来たりすればいいよって。

だから私、彼と一緒にこちらの世界に残ることにしたの。

だから・・・ごめんね、ピーター、私、あなたと一緒に飛び立てない」

「そうなんだ、ウェンディ。でも残念だな。

今夜は月も明るいし、二人で飛んでいくのは楽しいと思ったんだけどな。

君が無理して大人ぶっているのでないのなら、君が本当に君のままでいられるのなら・・・」

「ええ、そうよピーター!私は私のままで変わらずにいられるの!」

「わかったよウェンディ。君は自分の居場所を見つけたんだね。

だけど、君は僕にとって永遠の少女。

もしもまたネバーランドに行きたくなったら、僕を呼んでくれたらいい。

僕はいつでも君を迎えに飛んでくるよ!」

緑色の服を着た男の子は笑顔でそう告げると、すっと空中に浮き上がり、

軽やかに、月の光の満ちた窓から外へと飛び去っていった。

ありがとう、ピーターパン。今までずっと壊れそうな心を支えていてくれて。

きっとあなたは来てくれる、そう信じることでどんなに私は勇気づけられたことでしょう。

もうあなたを呼ぶことはないかもしれないけれど、私は絶対、あなたのことを忘れない。

 

 

 

* * *

 

 

 

 ントウムシ・ナイト

 

「あれ?今飛んでいったのは何だろう?」

周りよりもすこし高いところにある小さな葉の上でぼんやりしていたテントウムシは、

目をこらして空の彼方を見てみたけれど、そこにはもう何もみつからなかった。

今夜はきれいな星月夜。いつもなら葉の裏側でうとうとしている時間。

けれども彼は今、あることのために葉の表へと出てきたところだった。

「月の光を浴びるとね、美しい羽根を持った妖精になれるんだって」

昼間掃除をしてあげた花々の一つが彼にそう教えてくれたのだ。

「妖精、いいな。なりたいな。そしたら透明な羽根を思い切り広げて、

蝶々みたいに、ひらひら優雅に花たちの上を飛び回るんだ」

テントウムシは待った。自分の固い二枚の羽を広げ、

その下にある薄い儚げな羽根にも光がたくさんあたるようにして、

じっと妖精の羽根に変わる時を待った。

「まだかな。まだ妖精の羽根にはならないかな」

いつしか辺りには夜露がおり、そして真上にあった月は山の向こう側へ沈み、

東の空がバラ色に染まって新しい朝がやってきた。

「僕は妖精になれたんだろうか」

まだ身体が動かないテントウムシは、一番近くに見えた花のつぼみに

おそるおそる聞いてみた。

「妖精? なぜ? ねぇ、君は妖精になんかなっちゃイヤよ。

君が君でなくなっちゃったら、誰が私たちを困らせるアブラムシを退治してくれるの?

安心して花を咲かせることができなくなっちゃうわ。

それに私、あなたのその赤と黒のお洋服、とっても好きよ」

「そうなの? ほんとに?」

テントウムシはそれだけでもう嬉しくなって、妖精になるのは止めることにした。

「そうか、僕のこの格好、ださくてイヤだと思ってたけど、

好きだと思ってくれる花もあったんだ」

太陽がしっかり空の高みに上った頃、つぼみはかわいらしいピンクのバラの花となり、

そのそばではさっきのテントウムシが、一生懸命彼女を守るナイトの役目を

果たしていた。

 

 

 

* * *

 

 

 

 ずきんちゃんのおつかい

 

「こんなところで寝ていてはダメよ。」

赤ずきんちゃんは耳の近くでささやく声にふと目を開けた。

「きゃ!」

そこにいたのはなんと大きなオオカミ!

けれどもオオカミはやさしげな声でこういった。

「こわがらないで。私たちオオカミはやたらに人を襲ったりしないわ。

それよりこんな野原の真ん中で、たったひとりでどうしたの?」

そこで赤ずきんちゃんは、彼女のお母さんに頼まれて、おばあちゃんの所へ

お誕生日のケーキを届けに行くのだとオオカミに話した。

「そしてここまで来たら、きれいなお花がいっぱい咲いてたから、

おばあちゃんにも見せてあげたくて摘んでいたの。

だけどおうちを出たのは朝早かったし、

野原はお日様ぽかぽかで気持ちよかったから、、、」

「そうなの。えらいのね、赤ずきんちゃんは。だけどきっとおばあちゃんはね、

何よりも赤ずきんちゃんに会うことを楽しみにしているはずよ。

お花はいま手に持っているだけで十分。早く行って、元気な顔をみせてあげましょうね」

「はい、オオカミさん!」

赤ずきんちゃんは元気に返事をすると、眠っていても放さなかった花たちを

大事そうにバスケットにしまうと、勢いよく歩き出した。

するとオオカミは、赤ずきんちゃんに気付かれないようにそっと後を付け始めた。

そして、彼女がおばあちゃんのうちへ無事にたどり着いたのを確かめてから、

安心したように回れ右をすると、自分の子ども達が待つ森の中へと帰って行った。

 

 

 

* * *

 

 

(リンダ作 ピーター☆パンとウェンディ/星降る夜のフェアリーテイルズ その2 おわり)

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