「節分の頃にはねぇ、必ず雪が降るのよ」
母さんがそう言っていた。
「なぜ?」って私がたずねたら、
「お庭にまかれたお豆がね、冷たい雪に護られて長く保つように」
天の神様がそうなさるんですって。
「ほら、冬になると、虫たちは隠れてしまうし、
草や木も枯れてしまうものが多くて、
小鳥たちのエサが少なくなってしまうでしょう?」
節分にまかれる豆は、小鳥たちにとって、
春を迎えるための大切な食料になるんですって。
「『鬼は〜外!』って豆をまくときにね、
この家では、いつまでも雪が残っていそうな庭木の間に、
たくさんまくようにしているのよ」
私の母さんは、そのことを、母さんの母さんから教えられて、
その母さんも、そのまた母さんから聞いて・・・
だから私もね、私の子どもたちに、このことを話してあげようと思っているの。
――ああ、雪って、どんなものかしら。わくわくするわ!
早くこの手の平に受けてみたいなぁ。
まだまだ蕾の水仙娘は、薄緑色の小首をかしげながら、
雪の降るその日を心待ちにするのだった。