のぼり

 

「なぁ、桜餅は葉っぱごと食べるのに、柏餅は葉っぱを取って食べるやん?

どうしてやと思う?」

 

「そやなぁ。。

桜餅の葉っぱは、最初から塩漬けにして一緒に食べるように作ってあるからやろ? 

柏の葉っぱは餅同士がひっつかんようにくるんであるだけやし、第一固うて食べられへん」

 

「残念でした!

桜餅はな、寒がりやから葉っぱごと、柏餅は暑がりやから葉っぱをのけて食べてあげるんよ」

 

「なんや、それ。どこで仕入れた知識?」

「へへ、さっき遊びに来とったあんたんとこの子がな、

柏餅を葉っぱごと食べそうになったときに、ここのお母さんがそう教えてあげてたん。

桜餅は葉っぱごと食べる、っていうんを覚えたばかりらしくて、

柏餅もそのまま食べるんやと思ったみたい。

うふふ、可愛いね」

 

「へぇ〜! お母さん、うまいこと教えはったねぇ。私もよそで使わしてもらお。

あ、そやけど、桜餅って関東風と関西風があって、関東のんは、

お餅って言うよりクレープみたいっていうやん。

それも葉っぱごと食べるん?」

 

「う〜ん……。桜餅にも、暑がりと寒がりがおるんやろ」

 

――外は気持ちの良い五月晴れ。

家の者達が皆くるまででかけてしまったすきに、二匹のこいのぼりは、

尾っぽでうまくバランスを取りながら、テーブルの上の柏餅を美味しそうにぱくつくのだった。

 

(おわり)