ピーター☆パンとウェンディ -2-
(その後のピータ☆ーパン)
ネバーランドに帰ってきたピーター☆パンは、明らかに不機嫌だった。
「ねぇねぇ、ウェンディかあさんはいつ来るの?」
という、”秘密の隠れ家”に住むこどもたちの熱心な問いかけにも、
「あらピーター☆パン、今日はウェンディと一緒じゃないのね?」
とからかう、”魅惑の泉”の美しい人魚達にも、何も答えず、
ぐるぐるとネバーランドの上を飛び回ったり、
わざと海賊船まで出かけて行ってフック船長に戦いを挑んでみたり、
そうかと思うと誰にも見つからない高い木の上で、
一日中、じっと膝を抱えてうずくまっていたりした。
そんな彼のようすを、遠くからじっと見守っていたのはティンカーベル。
「ピーター☆パンったら! またウェンディを失ってしまったのね。
一体これで何人目かしら。
あなたは新しいウェンディを見つけるたびに、私のことなんかすっかり忘れて、
あちらの世界へひとりで飛んでいってしまう。
いつもそばにいて、あなたのことを想っているのは、この私なのに。
でもいいわ!
あなたがいくら新しいウェンディを見つけても、きっとまたこうなる。
だって人間はいつかは大人になってしまうもの。
でも、だからってネバーランドのことを忘れる訳じゃない。
夢は大切に持ち続けるし、自分のこども達にもたくさん夢を見て欲しいと願い、
それを私たちに託してくれるんだわ」
ティンカーベルは、ピーター☆パンを気遣いながらも、彼をそっとひとりにしておいた。
そんな状態が一週間ほども続いただろうか。
ある日、ピーター☆パンはティンカーベルを捜しに、”妖精の花園”へとやってきた。
そして薄紫のスミレに埋もれ、どの花を髪に挿そうかと迷っている彼女を見つけると、
いたずらっ子そうな目をきらっと輝かせてこう言った。
「ティンク! そろそろロンドン塔を見たくないかい?」
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