この作品は ポプラ社主催”作品市場.com” に公開していました。

(2005年3月の金曜コラム『ごめんなさいね!勝手に装丁デザインしちゃいました!』にて紹介されました♪)
(2005/4/6『編集者のトビトビ日記』に掲載されました♪)
(2005年3月のアワードに於いてジャンル別銀賞を受賞しました♪)

 

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                       .:*:・'゜☆。
       .:*:・'゜★
                  ☆。.


勉強疲れの頭を冷やそうと窓を開けたら、甘い香りが漂ってきた。

あれ? 桜、かな? 今年はやけに早いような・・・。


  ☆。:'・.


私が生まれた年に両親が植えたという彼岸桜は、

何年経っても葉ばかりが繁り、今年も花をつけなかったらもう切ってしまおうか、

なんて話が出た年に、慌てて、いや、ようやくいくつか花を咲かせて見せてくれた。

そして翌年から、春のお彼岸が近づくのを待ちかねては枝一杯に花を溢れさせ、

そのむせるような甘い香りを庭中にまき散らして、我が世の春を謳歌している。

けれど、今はまだ2月。

春一番もまだ吹いていないというのに、ちょっと早過ぎない?


            .。.:*:・'゜☆


私は部屋の灯りを消し、星明かりを頼りに桜の木の観察を始めた。

花・・・咲いてるようには見えないけど・・・

でも何だがくすくすと小さな笑い声が聞こえてくる。

誰? 誰か木の影に隠れてるの?

あ、今、何かが、枝のところで確かに動いた! それも二つ!

暗さにだんだん慣れてきた目に見えたのは、

なんと小鳥くらいの大きさの小さな小さな女の子がふたり、

桜の木の枝から枝へ移っては並んで座り、

楽しそうにひそひそと話をしている姿だった。


                  ゜'・:*:.。.:*:・'゜☆★゜'・:*:.。


私は固まった。目を擦った。そして必死で頭を巡らした。

こんなことあるわけないよね。妖精なんか今まで一度も見えたことないもん。

私、勉強しすぎて目がおかしくなっちゃったのかな?

ここのところ毎晩2時頃まで頑張ってたもんね。

ああ、こんなことなら去年のうちに推薦入試で決めておくんだった。。もう寝よ!

くすくす笑いはまだ耳に聞こえていたけれど、私は急いで窓を閉め、

するりとベッドに潜り込んだ。


      .:*:・'゜☆。:'・..:*:・'゜★゜'・:*


次の日の朝。

私は久しぶりに鳥の鳴く声で目を覚ました。

耳を澄ますと、林の方から、

他の鳥のさえずりに混じってホーホケキョーという声も聞こえてくる。

春を告げるうぐいすの初音だ。

昨夜のことを思い出した私は、桜の木の所まで行ってみた。

もちろんそこに女の子なんかいなかった。

けれども蕾はふっくらとふくらんで、今にも咲きそうな気配。


              ☆゜'・:*゜'・:*       
     

それからまもなく、私は本命校を受験した。

その日の午前中に春一番の強い南風が吹いた。

私の桜の花が、咲いた。


                           .。.:*:・'゜☆゜