恋の骨折り損 Love's Labour's Lost

《あらすじ》

 ナヴァール王国の王ファーディナンドは、友人の貴族3人を集め、学芸に打ち込むため3年間女人禁制の禁欲生活をおくると誓い合う。そこへフランス国王の使者として、フランス王女が3人の侍女を従えて、借金の返済を機に領土の返還を求めてやってくる。男の誓いがあるため宮廷外の野営地で接見するが、王は王女に、3人の貴族は3人の侍女にそれぞれ一目惚れしてしまう。
 こうなれば誓いはあって無きがごとし。違反のラヴレターの発覚や、求愛のドタバタが、奇妙なスペイン人や学校教師、道化たちを巻き込んで展開される。
 クライマックスは男たちがロシア人に変装してそれぞれ意中の女性にアタックし、みごと4組のカップル誕生と思いきや王女の父君フランス国王の訃報が届く。恋の成就は1年の喪に服してから、とおあずけとなる。


《ポイント》

 舞台は、フランスとスペインの間にあるナヴァール王国。時代は16世紀。王ファーディナンドのモデルは16世紀のアンリ4世で、プロテスタントからカトリックに改宗して、やがてフランス王になる史実が背景にあると言われる。
 この芝居は、シェイクスピアの初期の喜劇(37本の9番目)だが、熱に冒されたような言葉遊びの連続で、本を読んでも、芝居を観ても、ただただ圧倒されるばかりです。題名の"Love's Lobour's Lost"からして頭韻を踏んだ遊び心があります。
 終幕は、ハッピーエンドではなく結婚の延期で終わるという渋い結末だが、その後の展開を想像できることも含めて、そこがこの芝居の魅力という人もいる。

《名せりふ》

第T幕第1場〜ビローン(誓いの科白)
学問とは天空に燦然と輝く太陽のようなもの、
人の目で見極めようとしても見えはしません。
Study is like the heaven's glorious sun,
That will not be deep search'd with saucy looks.
第W幕第3場〜ビローン(誓い破りの科白)
これは私が女の目から学びとった教えだが、女の目こそ
あらゆる学説の論拠であり、教科書であり、学園であり、
人にいのちを吹き込むプロメテウスの火の源なのだ。
第X幕第2場〜ビローン(求愛の科白)
あなたの知恵が賢いものまでばかに見せてしまうのだ、
われわれ人間が、いくらいい目をしていても、
天の目である太陽をみると、その光によって光を失うように。
(小田島雄志訳)

観た読んだ歴
play

2007年3月21日
彩の国シェイクスピア・シリーズ第17弾
さいたま術劇場
蜷川幸雄演出

★蜷川シェイクスピア第17弾を観ました。
今回は出演者全員が男性”オールメール”の第3弾だそうですが、もともとシェイクスピア時代は
すべての役が男で演じられていた訳ですし、お気楽な喜劇という内容からもぴったりでした。
”オールメール”も、すっかり定着したようです。
★舞台には緑の大きな柳の木というシンプルなものでしたが、役者たちが客席を縦横無尽に
動き回っていました。
★奇妙なスペイン人アーマードーが面白い味を出していました。(役者が福島出身で言葉の
抑揚に親近感があるせいかな?)

観た読んだ歴
film

2007年3月
1999年英米映画、ケネス・ブラナー主演・監督・脚色
★時代設定を1930年代に設定し、ミュージカル仕立てにした楽しい映画です。
原作の言葉遊びの冗長さを馴染みの音楽も入れて簡潔に仕上げたのはさすがブラナーです。

観た読んだ歴
book

2007年3月
小田島雄志訳
白水Uブックス
★言葉遊びにかけては、小田島氏が最適任と感じます。