夏の夜の夢 A Midsummer Night's Dream |
《あらすじ》
アテネの貴族が娘を結婚させようとするが、肝心の娘(ハーミア)は別の男(ライサンダー)を愛しているため、これを拒んでいる。娘はその男と森の中へ逃げ込むが、親の決めた婚約者(ディミートリアス)と、彼に夢中な友人(ヘレナ)に追いかけられる。森の中で、彼らは妖精の世界の王(オーベロン)と王女(タイテーニア)のいざこざ巻き込まれ、一時は妖精(パック)の魔法にかけらられる。様々ないたずらがなされ、人違いも多々起こるが、やがてすべてが解決していく。
物語は、アテネ公爵の結婚式や奇妙な職人連中の劇中劇が織り交ぜられて、ファンタジックな恋の大騒動が展開される。
《ポイント》
1 登場人物の関係は複雑で、入り組んでいるが、作品全体を観客の見ている夢という風に考えることができると、河合隼雄氏は言っている。すなわち作品全体が、アテネ公爵と婚約者、四人の若い恋人たち、芝居をしようとする職人たち、妖精の世界という四つの層からできており、これは意識構造がだんだん深まっていく夢の構造のようなものであると。 2 この芝居は、シェイクスピアが、さる貴族の結婚式の余興として依頼されて書いた祝婚劇と言われている。そのシチュエーションを頭に描いて観ると、馬鹿げたどたばたファンタジーも妙に納得できる。 3 この作品かつては、「真夏の夜の夢」と言われたが、原題のMidsummer Night は、夏至祭(6月24日)のことで、今は「夏の夜の夢」が定着している。
《名せりふ》
第X幕第1場(フィナーレ) パック(観客に向かって) ここでご覧になったのは
うたた寝の一場のまぼろし。
たわいない物語は
根も葉もない束の間の夢。That you have but slumber'd here
While these visions did appear.
And this weak and idle theme,
Gentles, do not reprehend〜 〜 では、どちらさまも、おやすみなさい。
ご贔屓のしるし、お手を頂戴できるなら
パックも励み、必ずお返しいたします。So, goodnight unto you all.
Give me your hands, if we be friends,
And Robin shall restore amends.(松岡和子訳)
《観た読んだ歴》
play
2005年12月11日
ロイヤル・シェイクスピア・カンパニー
東京芸術劇場
グレゴリー・ドーラン演出
★RSCの東京公演を観ました。イギリスで好評のもので、楽しめる舞台でした。
随所に意味の込められた幻想的な舞台空間の中で夢物語がコミカルに展開
されていました。
特筆されるべきは、演出のドーランが日本で学んだ文楽の手法を、妖精の
王と王女が取り合う子供の人形に使っていたことだ。蜷川演出でとられている
日本の様式美の活用がRSCにも採用されてとても面白かった。
公演後、劇場から出てきたRSCの方に声をかけることができました。
《観た読んだ歴》
film
2005年11月
1996年イギリス映画、エイドリアン・ノーブル監督
RSCが製作したファンタジックな映画★RSCの役者たちが、現代風のカラフルでポップ映像世界で舞台でのように演技
している映画です。
人間と妖精たちが繰り広げる騒動を「少年の夢」という設定で描いている。
《観た読んだ歴》
book
2005年11月
福田恆存訳
新潮文庫★福田氏の訳は、いつも格調高く古典的な安心感がある。