オセロー Othello

《あらすじ》

 16世紀、ヴェニス。肌の黒いムーア人の将軍オセローは、元老院の娘デズデモーナと結婚、キプロス島に赴く。部下のイアーゴは、オセローが副官に自分ではなくキャシオーを選んだことから上官オセローを憎み、オセロー失墜を謀る。まずは酒に弱いキャシオーを酔わせ不祥事を起こさせる。そしてオセローによりキャシオーは解任されるが、デズデモーナを通して復職を願い出ろと入れ知恵する。一方、オセローにはデズデモーナとキャシオーの仲が怪しいと耳打ちする。オセローはキャシオーの復職を願うデズデモーナに次第に「緑色の目をした怪物」こと嫉妬のとりことなる。愛妻に贈ったハンカチをキャシオーが持っていることで、オセローの嫉妬心は極点に達し、デズデモーナをベッドで絞殺してしまう。・・・実は、すべてがイアーゴの謀であったことが直後に明らかになるが、すべてはあとの祭り。オセローは自らを刺し「思慮は足りなかったが、実に深く妻を愛した男」として死を遂げていく。


《ポイント》

 この作品は、四大悲劇のひとつで、「ハムレット」のあと、「リア王」の前に書かれた、シェイクスピアの最も脂ののり切ったころの作品と言われています。
 「嫉妬の悲劇」とも言われ、嫉妬で妻を殺してしまうお話しはソープドラマのようでもありますが、シエイクスピアは嫉妬を「緑色の目をした怪物」と表現し、人間心理の危うい一面をあぶり出します。
 オセローは肌の黒いムーア人。ムーア人とは、北アフリカ大陸のモロッコから来た人々で、デズデモーナの父親が結婚に反対したように蔑視された存在でした。この悲劇をそうした人種問題に焦点をあてて演出される場合もみられます。
 この作品に重要な役割をする小物が、ハンカチ。オセローの嫉妬を決定的にしてしまうイチゴ模様のハンカチですが、松岡和子氏は、「世界で一番有名なハンカチ」と言っています。

《名せりふ》

第V幕第3場
イアーゴー
閣下、嫉妬は恐ろしゅうございますよ。
こいつはいやな色の目をした怪物で、
人の心を食い物にする前に
さんざん楽しむという奴です。
O beware, my lord, of jealousy!
It is the green-ey'd monster,
which doth mock
The meat it feeds on.
第X幕第2場
オセロー
思慮は足りなかったが、実に深く妻を愛した男だった。 Of one that loved not wisely, but too well.
(木下順二訳)

観た読んだ歴
play

2004年5月15日
ロイヤル・シェイクスピア・カンパニー
さいたま芸術劇場
グレゴリー・ドーラン演出
★RSCの来日公演を観ました。オセロー役は、南アフリカ出身のカ・ヌクーベという黒人が演じている。イアーゴーは、名優と言われるサー・アントニー・シャー。舞台を50年代の占領地に設定し、軍事的な雰囲気の中で演じられています。RSCの舞台は素朴で、舞台装置やアクションよりもシェイクスピアの言葉を大事にするようです。これが本場のシェイクスピアなのでしょうね。

2007年10月7日
彩の国シェイクスピア・シリーズ第18弾
さいたま芸術劇場
蜷川幸雄演出
★蜷川幸雄演出のシリーズ第18弾を観ました。オセロー役は,蜷川シェイクピアでは常連の吉岡鋼太郎。デズデモーナは、今人気の蒼井優。翻訳の松岡和子氏は少女のようなデズデモーナと中年のオセローの組み合わせが最適と話していますので、そういう意味ではこの配役は最適ですね。劇場最前列での鑑賞でしたので、見上げるような舞台で、迫真の演技を観ることができました。ただ、吉岡さんに迫られまくる蒼井さんは、やや気の毒ようではありましたが。・・・舞台は、モダンな鉄パイプの構造物造りで、縦横無尽に役者が動き回るアクティヴなものでした。

観た読んだ歴
opera

ヴェルディ作曲 歌劇「オテロ」
1973年録音 カラヤン指揮
オテロ(ジョン・ヴィッカース)
デズデモナ(ミレッラ・フレーニ)
★ヴェルディが作曲した歌劇「オテロ」をカラヤンが指揮した古いレコードが手元にあります。だいぶ昔に購入し聴いていました。ヴェルディの劇的音楽がドラマチックです。デズデモナの「柳の歌」も印象的です。かつて実際にオペラ鑑賞もしたような気がしますが、記憶が曖昧です。

観た読んだ歴
book

2004年5月  木下順二訳  講談社版
2004年5月  "OTHELLO" The Arden Shakespeare   
★夏目漱石の「「オセロー」評釈」という本が手元にあります。1906年頃の漱石の東京帝国大学でのシェイクスピア講義録らしいです。この本を将来読む機会が来るかどうかは分かりません。