塩析(硫安分画)

 通常、タンパク質の水に対する溶解度は、低い濃度の塩が共存すると増加しますが、反対に塩濃度が高いと減少します。この原理を用い、物質を析出する方法を「塩析」と言います。つまり、液体に溶けているものが、塩を大量に溶かすことで解けきれなくなって沈殿するのです。
 一般的に、タンパク質の塩析には、溶解度が高く、タンパク質の変性を起こしにくい硫酸アンモニウム(硫安)が用いられます。この、硫安を用いた塩析を「硫安分画」又は「硫安沈殿」と言います。

 この方法は、タンパク質の精製段階の初期段階で用いられることが多く、特に大量の試料の前処理に適しています。ただし、タンパク質の濃度が極端に低いと塩析できたいため、注意が必要です。
 硫安分画をする場合、塩析させたい目的のタンパク質がどれくらいの硫安濃度で塩析するのか、あらかじめ調べなければなりません。参考文献には、おそらく○%飽和、とか、○%硫安分画とかいう様式で記載されていると思いますので、下表を参考にして下さい。

 硫安を加える際、飽和溶液を加える方法と結晶を加える方法とありますが、体積をあまり増やしたくないのであれば結晶をお勧めします。飽和溶液を作る手間も省けますからね。結晶を用いる場合、あらかじめ乳鉢で砕いて結晶を細かくする場合もありますが、水分で固まったりしていない限り、そのまま使用していいと思います。心配な方は、あらかじめ細かくしておいてください。


 方法としては、試料溶液をスターラーで撹拌しながら、硫安を加えていくだけです。硫安を全て加え終わった後は、数時間から一晩放置した後遠心し、目的のフラクションを得ます。硫安の飽和度が高いほど、長く撹拌した方がよいです。通常は一晩放置することが多いです。


*注意点*
  1. 一度に硫安を大量に加えると局所的に塩濃度が高くなり、予想外のタンパクまで塩析されてしまうので、ゆっくり少しずつ加えましょう。
  2. 硫安は弱酸性なので、その条件下で失活しやすいタンパクの場合は、バッファー(緩衝液)を加えて塩析しましょう。



Table. 硫酸アンモニウムの添加量と%飽和

硫安の最終濃度(%飽和)
硫安の初濃度(%飽和)
10 20 25 30 33 35 40 45 50 55 60 65 70 75 80 90 100
1L中に加えるべき硫安の量(g)
0 56 114 144 176 196 209 243 277 313 351 390 430 472 516 561 662 767
10 57 86 118 137 150 183 216 251 288 326 365 406 449 494 592 694
20 29 59 78 91 123 155 189 225 262 300 340 382 424 520 619
25 30 49 61 93 125 158 193 230 267 307 348 390 485 583
30 19 30 62 94 127 162 198 235 273 314 356 449 546
33 12 43 74 107 142 177 214 252 292 333 426 522
35 31 63 94 129 164 200 238 278 319 411 506
40 31 63 97 132 168 205 245 285 375 469
45 32 65 99 134 171 210 250 339 431
50 33 66 101 137 176 214 302 392
55 33 67 103 141 179 264 353
60 34 69 105 143 227 314
65 34 70 107 190 275
70 35 72 153 237
75 36 115 198
80 77 157
90 79
           参考:S.P.Colonick, N.O.Kaplan, ed., "Methods in Enzymology", Vol.1. p.67, Academic Press (1995)



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