学校における動物飼養の問題点を指摘することは容易ですが,単に指摘し,非難するだけでは問題の解決にはなりません。動物が健康に暮らすことができるよう,獣医師などの専門家や愛玩動物飼養管理士の指導のもとに,動物飼養に教員や子どもたちが共に関わり,動物の幸せや飼う楽しさを感じ取ることが,本当の教育活動になると考えます。 |
@動物飼養に関する教員の研修 |
学校での動物飼養は,動物園やふれあい施設の利用のようにいろいろな動物を子どもに見せるために飼うのではなく,子どもに飼養を通して,命と愛情を教え,人としての基礎(土台)を養うためにあると考えられています。しかし,教員養成において動物飼養の課程(履修コース)はなく,専門外として捉えられています。そこで,教育の現場では教育センターで研修をしたり,学校独自で研修の機会を設けたりしています。 |
A飼養を敬遠する教員(動物に触れない教員) |
子どもの心を情愛豊かに育てるには,教員が動物を可愛がり,愛情を教え,伝えなければなりません。しかし,「動物をかわいがろうね」と指導する先生が実は動物にさわれない,動物を飼った体験を持たない先生もいます。また,動物飼育や動物と人の関係を学ぶ場や体験がない,飼養の知識のないまま飼育に関わらざるを得ない状況もあります。教員が自信がもてるよう専門家に協力してもらい,学校の飼養環境即した具体的で実技的な研修を実施することが必要だと考えます。 |
B飼養動物が病気やけが(事故)をした場合の対処・相談 |
学校で生き物を飼っていると病気やけがは当然起こります。しかし,ほとんどの学校では飼育動物が病気やけがをした時,治療する予算はありません。そのため,世話をしている子どもたちが心を痛め,悲しい思いをしたり,子どもたちが動物の死に鈍感になったりしてしまいます。飼養している動物が病気やけが,死んだ時の対応を明らかにし,動物に対する教育的な配慮を正しく行えば子どもたちへの教育効果(命を実感する教育)があるはずです。そこで,医療費の予算措置や動物病院の獣医師,専門医との連携が急がれます。また,飼育動物に関する疑問や悩みを動物病院,獣医師に気軽相談できる体制を整え,学校教育ではできにくいところを補ってもらうようにすることも一つの策として考えられます。 |
C飼養動物の休日の世話と協力体制づくり |
生き物である動物の飼養は,週休2日の学校の勤務体制にはなじみません。学校が土曜日や日曜日,長期の休みになると安全管理の問題から,子どもが世話をしなくて,先生たちが当番制で世話をする学校がみられ,教師主導で飼養が行われているのが現状です。これでは,教員の負担が大きく,子どもたちの責任感を養うことは難しい思われます。そこで,休日の管理の方法については,地域の人たちによるボランティアとして学校外の人の手助けや協力を求めていくことも考えていかなければならないと考えます。 |
D教師の負担への配慮 |
動物を管理する教員からは,動物飼養は生き物だから精神的な負担が大きいという声が聞かれます。学校での日常的な飼養管理は,子どもたちが飼育委員会(生き物係)を組織し,当番を決めて常時活動として給餌や飼育舎の清掃を行っています。それを担当する教師の現状をみると,日々多様な仕事をこなし,子どもたちへの適切な飼養指導や管理に十分な時間がとれにくく,難しい問題となっています。動物の飼養は非常に手のかかることでもあり,獣医師の指導や教職員の努力が必要不可欠です。 |
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Eアレルギーのある子どもの配慮と安全指導 |
動物アレルギーが原因で直接動物の世話ができない子どもたちには教育的な配慮が必要です。例えば,生き物の名前の募集やポスターづくり,アンケートなど,工夫をすれば,動物との関わりがつくれると思います。また,学校全体の保健・安全指導も必要になります。鳥インフルエンザのウイルスは渡り鳥が運ぶもので,学校で飼われている鳥が感染する確率や人に感染する確率は非常に低く,その他の動物が由来する感染症についても,飼育小屋をいつも清潔に保つよう飼養管理者が点検し,動物に触れた後は手洗いやうがいをすること,エサの口移しなどの接触はしないことを子どもたちに正しく指導徹底をすれば防ぐことができます。子どもは,大人の動物の扱いを見て物事を学びます。教職員全体で常日頃から動物に対する意識を磨いておかなければならないと考えます。 |