「モード」

   もともと、様式、形式、流行といった意味がある。これに加え、最近では自己の状態や気分を意味するようになっている。例えば、「今、私は恋愛モードなの」というようにである。気分や感情が自分自身と一体のものとして表現されず、対象化され客観視されているのである。先頃、流行った「マイ・ブーム」という語も自己の関心を第三者的に観察している人間像を思い起こさせる。
 こういった言葉の使用は冷めた目で自分自身をモニターし、熱い感情をコントロールしようとする意志のあらわれなのだろうか?反対に感情をコントロールできない「キレ」やすい若者が論じられる向きもあるが、どちらも喜怒哀楽を自身のものとして適度に表出できないという点では共通しているかもしれない。

1999年8月15日  『よいこの今ドキ語』  毎日新聞東京本社版朝刊6面

羽渕一代 はぶちいちよ  

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