このところ「たれぱんだ」のブーム(関西ではそれほどでもないが)を筆頭に、巷では「癒し」で持ちきり。だがそこには、社会や時代の「閉塞感」といわれる風潮を、安易に「疲れ」で括ってしまう傾向が強く現れているような気がする。「癒し系」でヒットし
た坂本龍一のピアノ曲をCMに流す製薬会社も、ほんの10年ほど前のバブル期には「24時間戦えますか?」と歌っていたではないか。
果たして何のための癒しなのか。そこに「疲れ」だけでない、病んでいたり、傷ついていたりすることへの癒しという意味合いは、あまり見られない。社会のゆきづまった状況を「みんな疲れているから」という理由にすりかえてしまうことは、深刻な問題の先送りになるだけのように思えてならない今日この頃である。
1999年9月20日 『よいこの今ドキ語』 毎日新聞東京本社版朝刊4面
岡田朋之 おかだともゆき
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