自らの行動がもたらす帰結が良いものであれ悪いものであれ、「自分の責任」として受け止める態度。近年、「自己決定権」とセットで広まっている。
確かに、自分の行動に責任を持つのは「当たり前」だ。しかし、桜井哲夫氏の挙げる例を借りれば「経営に参与し得ない一般社員であっても、会社の倒産による失業はその会社を選んだ自分の責任」と考えるのは果たして適当なのか。自身の選択は実は社会制度の中で「選択させられていただけ」と批判するつもりはない。だが、専門家を含め誰もが予想しえない事態まですべてを、「自己責任」に帰すことには無理がある。
「無責任」を礼賛するわけではない。しかし、過剰な「自己責任」は、その概念を形骸化させるだけであるように思うのだ。
1999年12月20日 『よいこの今ドキ語』 毎日新聞東京本社版朝刊4面
松田美佐 まつだみさ
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