べつに核の脅威に対する避難施設のことではない。もっと身近な脅威からの避難所のことである。最近のドラマのテーマ、雑誌の記事としても取り扱われる家庭内暴力(ドメスティックバイオレンス)。精神科医の斎藤学さんに「暴力をふるう側の方が悪いのだから、暴力をやめさせること、つまりふるう側を治療する方法はないのか?」と尋ねたことがある。答えは「今のところはない」であった。現在できることは、虐待されている者をできる限り逃がしてやること、力づけてやること。
かならずしも家庭が安全な場所であるわけではない。家庭も社会のバリエーションにすぎない。つまり、一般社会のように危険なことが起こりうる。家庭がそうした場所と認識されてくるにつれ、シェルターも増えていくだろう。
(奈良女子大学大学院博士課程)
1999年4月27日 『よいこの今ドキ語』 毎日新聞東京本社版朝刊15面
羽渕一代 はぶちいちよ
『よいこの今ドキ語』に戻る 表紙に戻る