「テンパる」

 怒りの感情が極限にまで達する直前の状態を指す言葉である。もともとは、麻雀用語で、あと一枚のめざす牌が入ればあがれる状態を意味する「聴牌(テンパイ)」からきている。
 「最近の若者はキレやすい(=怒りの感情を爆発させやすい)」という論調は珍しくない。これは現代の若者が自分自身で感情のコントロールができない、もしくは認知できないという認識を基盤にもっている。しかし、若者がこの言葉を頻繁に使用するところをみると、自身の感情の推移を自分ではわかっているのだろう。
 感情爆発を防ぐためには、この「テンパった」感情の処理にかかっている。が、今のところ有効な処方箋は見あたらない。それは社会全体が余裕のない「テンパった」状態であるからともいえる。

2000年1月10日  『よいこの今ドキ語』  毎日新聞東京本社版朝刊4面

羽渕一代 はぶちいちよ  

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