一緒に遊んでいる友人に電話がかかってきた時、寂しいような取り残されたような気持ちを感じたことがある人は多いだろう。また、電話を受ける時、異空間に飛び込むような感覚をもったことのある人も少なくはないはずである。
「今ここ」の身体がある場所とは違う場所に気持ちだけ離れていってしまうことを解離という。もともとは化学用語であり、この意味は分子が原子や他の分子に分解していくことを指すが、同時にいつでも条件が整えば原子(分子)が結合し、もとの分子の状態になることが可能なことも意味する。
携帯電話のマナー問題からわかることは、目の前の人に甘えて少しだけ電話相手との異空間にゆき、また戻ることが、親密な相手にだけ許される暴挙だということだ。
2000年2月7日 『よいこの今ドキ語』 毎日新聞東京本社版朝刊4面
羽渕一代 はぶちいちよ
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